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【「原泉アートデイズ!」の松島誠さん演出によるIma Collabのパフォーマンス「Drip,Drop,Fall,Leak」 】 森の中に立ち上る物語。道なき道を巧みに舞台化

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は10月24日に掛川市で開幕した広域アートフェスティバル「原泉アートデイズ!」のプログラム「DripDropFallLeak」から。パフォーマー、演出家、美術家の松島誠さん(沼津市)が、香港のパフォーミングアーツ集団「Ima Collab(イマ・コラボ)」がアーティスト・イン・レジデンスで作り上げた演目。10月26日正午からの上演を観覧した。10月27日は正午、午後3時半の2回公演。上演開始時間の20分前の到着を推奨。

国際的な活躍で知られる松島誠さん(写真上)が、香港からやってきた11人の俳優たちと1カ月間、文字通り寝食を共にして作り上げたパフォーマンスは、森のつくりだす陰影と草の香り、斜面と平場が接近する地形を有効に活用した、見る側の立地点をも問う作品だった。

静寂の中に川のせせらぎや鳥のさえずりが響く場所で、中央アジアの喉歌のような女声の旋律で幕開けした約30分の演目は、演者と演者、あるいは演者と観客の間に言語によるコミュニケーションをあえて存在させていなかった。それなのに、分断と協調の物語がはっきり立ち上って見えたのは、場の空気を吸って出来上がったこの演目ならではだろう。

声のアンサンブルあり、群舞あり、観客を一部巻き込むようなパフォーマンスありで、意外に「エンタメ性」が高いのも特徴。なにより、整然と並ぶ木々はもちろん、斜面ややぶ、道なき道を巧みに「舞台化」していた点に恐れ入った。

森の中に身を置いた「観劇」は、記憶から消し去ることのできない体験となった。パフォーミングアーツの自由さという点で、こちらの先入観を鮮やかに覆す演目だった。(は)

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■原泉アートデイズ!
会場: 掛川市原泉地区全域
受付場所:旧原泉第2製茶工場(掛川市萩間702)、旧田中屋(掛川市黒俣545-1)
入場料:ドネーション(寄付)方式
会期:11月24日(日)までの木、金、土、日。午前10時~午後4時 
問い合わせ:https://haraizumiart.com/artdays/

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