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発達障害息子の「周囲の目を気にしない」特性が強みに!?困った行動が長所に変わった瞬間

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発達障害息子の「周囲の目を気にしない」特性が強みに!?困った行動が長所に変わった瞬間

監修:鈴木直光

筑波こどものこころクリニック院長

公共の場での自由すぎる振る舞い……肩身が狭かった幼少期

息子のトールは現在中学1年生。ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)の診断を受けています。トールは小さい頃、公共の場で大きな声を出したり、他人がいるかどうかにかかわらずやりたいように振る舞ったりと、周りの人の迷惑は全く顧みず、自由な行動をとりがちでした。

特に、バスや電車などの公共の乗り物に乗った時には、楽しくなって大きな声でずっとしゃべり続けてしまうことも……。もともと大きめでよく通る声をしていたこともあり、周りの視線に肩身が狭く感じることもありました。

ただ、トール本人は楽しく過ごしているので、ほかのことで気を引いて声を出さないようにすることも難しく、どうすれば良いのかよく頭を悩ませていました。インターネットや本などで世間一般に言われている対策も試していましたが、あまり有効ではなかったことを覚えています。

トールのこのような特性は、幼稚園に入園し集団生活が始まってからも、困りごととして表れました。静かにしなければならない場面で大きな声を出す、その場に関係ない話をする、教室内で立ち歩く……など、自分のやりたいことをやりたいように、好きな時に行動に移してしまう様子が多く見られていました。

わたしはそんなトールを見て「迷惑をかけているな」「時と場合に合った行動がとれるように教えないと」と申し訳なく思っていたのですが……その反面、ひそかに「すごいな」とも思っていました。自分の幼少期には、トールのように自分の好きなように自由に振る舞うことができなかったからです。トールの自由な振る舞いは、今は困った行動として表れているけれど、もっと成長した時には長所になり得るのではないかと考えました。

「周囲の目を気にしない」行動が、強みになった瞬間

それからしばらく経って、そんな私の思いが現実となった出来事がありました。トールが小学生になって初めての参観日の時のことです。保護者の前で、自分のつくった作品を一人ずつ発表するという機会がありました。たくさんの保護者に囲まれている緊張のせいか、小さな声しか出せず、話している内容が聞こえない子がほとんどの中、トールの発表ははっきりと後ろの保護者のところまで聞こえました。

声が大きいことや、知らない人がいてもいつもと同じように振る舞うことは、公共の場ではとても大きな困りごとでした。でも発表という場面においては、それが大変な強みになりました。

堂々と発表を終えたトールの様子を見て、特性を長所として生かせるこのような場面が、これからもたくさんあるといいなと思ったのを覚えています。

中学生になった今も変わらない特性。クラスメイトとの人間関係は?

周囲の目を気にしないということは、他人への興味が薄いという特性から来ているようで、トールはクラスの子の名前を一年経っても全員覚えていません。

相手の子は当然のようにトールを知っているのに、トールは「誰だっけ?」という反応をして、気まずい思いをしたこともありました。
人付き合いの中で相手のことを覚えていないというのは失礼になってしまうので、クラスの子の名前くらいは早々に覚えてほしいなと思うのですが、興味がないものに興味を持てというのも難しく、見守っている状態です。

しかし、授業で実験などのグループ活動をするときには、トールは率先してリーダー役になり、実験を進めていくそうです。班に分かれて話し合いをするようなときも、そのような様子のようです。

先生方にも、「トール君の積極的な姿勢はとても良いですね」と褒めていただき、うれしく思っています。クラスメイトに興味がないゆえに、クラスで浮いていないだろうか、グループ活動に支障があるのではないか……と心配もあったのですが、クラスやグループの中でちゃんと居場所があるのだと分かり、安心しました。

中学生になった今も、小さい頃からの特性は変わっていないトール。しかし成長するにつれて、「人前でも動じない、率先してリーダー役になる」長所と評価されるようになりました。苦手なことももちろんありますが、持って生まれた特性を強みにして、これからもどんどん発揮していってほしいな、と願っています。

執筆/メイ

(監修:鈴木先生より)
短所が長所になることはよくあります。大きな声を逆に武器にしている事例の一つとして、運動会などがあります。体操で1・2・3と大声を出していいのは校長先生の隣にいてみんなの前で号令をかける時です。みんなの中では目立って注意されますが、前へ出てお手本を示すならば大声を出すことが必要になるのです。しかも、声が大きければ大きいほど周りから褒められます。これは多動の子にも同じことが言えます。先生たちがどうすればASD(自閉スペクトラム症)の特性を生かせるか常に考えていれば方法はいくらでもあるように思います。一度いい方法が行えれば次回からも実行し、ほかの学校にも伝えていくようにすれば、大声を出したり、動いていたりして困っている子は減らせるはずです。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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