岡本太郎の挑戦に迫る企画展「岡本太郎と太陽の塔―万国博に賭けたもの」が4月26日~7月6日、『川崎市 岡本太郎美術館』で開催
1970年に開催された大阪万博のシンボル的存在である「太陽の塔」について紹介するとともに、岡本太郎の万国博への挑戦や込められた思いに焦点を当て、作品世界を捉え直す企画展「岡本太郎と太陽の塔―万国博に賭けたもの」が2025年4月26日(土)~7月6日(日)、神奈川県の『川崎市 岡本太郎美術館』で開催される。TOP画像=岡本太郎と「太陽の塔」原型、1969年。
万国博のテーマに異を唱えた太郎の思索を展示により再現
1970年に開催された大阪万博のシンボルとして語られることも多い、岡本太郎の「太陽の塔」。しかし、当時「人類の進歩と調和」をテーマとした万博において、「太陽の塔」はモダニズムと相容れない外観で賛否を巻き起こし、またテーマに異議を唱える岡本の思想が大いに反映されたものでもあった。
本展は、民族学を源泉とし、国内の取材旅行を通して形成された岡本の思想から「太陽の塔」と地下展示を探るもの。彼が縄文の美を発見した後にフィールドワークで撮影した写真を紹介するほか、「太陽の塔」の制作記録や同時期の作品を通して塔の内外が形作られた過程をたどる。また、国内外の仮面や神像などを展示し、岡本のいう「今日の文明が失ってしまった人間の原点」に迫る。
展覧会担当者は、「岡本太郎が太陽の塔の模型を作る様子や、実際の建設の過程など、当館が所蔵する記録写真をこれまであまりご紹介できなかったものも含めて多数展示します。また世界各国の仮面や神像などの民族資料を展示し、岡本太郎がテーマ展示である『太陽の塔』や地下空間で表現しようとした“人間の原点”に迫ります。1970年当時の地下展示から『太陽の塔』、そして大屋根までの展示を、当時の順路をたどる再現映像で甦らせているのにも注目です」と見どころを語る。
民族学に精通した太郎の世界に対するまなざしとは
1970年の大阪万国博では、テーマ展示の地下空間において「過去・根源の世界」が表現された。その1つ「いのり」の空間では、人類の心の奥深くに通底するものとして、世界各地から収集された仮面や神像などの民族資料が展示された。パリで暮らした20 代にパリ大学で民族学を学び、人類博物館の空間でマルセル・モースの教えを受けた岡本が帰国後も、日本各地の祭礼・神事の取材と執筆活動によって思索を続けた軌跡をたどる。
また、ただの「お祭り」と、人間の誇りと生きる歓びを爆発させる神聖な「祭り」を区別し、万国博は後者であるべきと考えた岡本。「太陽の塔」を万国博の中心に据えることで「祭り」の実現に賭けた岡本の挑戦と、そこに至る道程を、目の当たりにすることができる。
関連イベントも開催
岡本太郎の貴重なプライベートフィルムも!「1970年万博 関連映像上映」
5月17日(土)・18日(日)・31日(土)・6月14日(土)・15日(日)・29日(日)の11時~「岡本旧蔵プライベートフィルム」/13時30分~『公式長編記録映画 日本万国博』(谷口千吉監督、1971年)がガイダンスホールにて上映。無料、定員50名。当日先着順。
担当学芸員によるギャラリートーク
6月1日(日)・28日(土)、14時~企画展示室にて担当学芸員によるギャラリートークが開催。無料(要観覧料)、申込不要。開始5分前に企画展示室に集合。
開催概要
企画展「岡本太郎と太陽の塔―万国博に賭けたもの」
開催期間:2025年4月26日(土)~7月6日(日)
《前期》4月26日(土)~6月1日(日)
《後期》6月3日(火)~7月6日(日)
※前期後期で展示替えあり
開催時間:9:30~17:00(入館は~16:30)
休館日:月(4月28日・5月5日を除く)、5月7日(水)・8日(木)
会場:川崎市 岡本太郎美術館 企画展示室(神奈川県川崎市多摩区枡形7-1-5 生田緑地内)
アクセス:小田急電鉄小田原線向ヶ丘遊園駅から小田急バス「専修大学前」下車5分
入場料:一般900円、高校生・大学生・65歳以上700円、中学生以下無料
【問い合わせ先】
川崎市岡本太郎美術館☏044-900-9898
公式HP https://www.taromuseum.jp/
取材・文=前田真紀 画像提供=川崎市 岡本太郎美術館
前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。