【「2024年しずおか連詩の会」参加詩人から⑤ 広瀬大志さん、豊崎由美さん「カッコよくなきゃ、ポエムじゃない! 萌える現代詩入門」 】 難解な現代詩「ベスト・ワン」とは
静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。「2024年しずおか連詩の会」(11月3日に発表会)の参加詩人の作品を紹介する不定期連載第5回。今回は、初参加の詩人広瀬大志さんが、書評家豊崎由美さんと対談している「カッコよくなきゃ、ポエムじゃない! 萌える現代詩入門」 (思潮社)を題材に。
雑誌「現代詩手帖」で知られる思潮社には珍しい、カラフルな色使いの装丁が目立つ対談集。「モダンホラー」というキーワードで作品が語られる広瀬さんだが、本書ではそのイメージを覆すような気安い口調で豊崎さんと詩について語り合っている。
古今東西の詩を題材に、その構造と深層を読み解いていくが、特筆すべきはポップソングの歌詞も取り上げていること。キリンジ「エイリアンズ」、スピッツ「夢じゃない」といったJ-POP勢に加え、日本語ラップの黎明期から活躍するラッパーRINOの「もうひとつの世界」まで扱っているのには度肝を抜かれた。
「恋愛詩」「リーディング」「詩の賞」など、現代史を構成するあれこれをテーマに語り合っているのだが、かなり挑戦的なテーマも見受けられる。「カッコいいし、難解詩」の章は「難解な詩」の「難解ポイント」を生真面目に一覧化していて、吹き出してしまった。
幾多の「難解詩」とされる実例も、この二人の語りで解きほぐされると、ふに落ちる…わけではないけれど、固い結び目が緩まっていく感覚は確かにある。「意味なんかわからなくてもいいじゃないか」「詩の中で言葉の運動、イメージの運動が続いていることがわかればいい」という豊崎さんのまとめは、これからの読書生活の糧となる。(は)
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■2024年しずおか連詩の会
会場: グランシップ 11階会議ホール・風
住所:静岡市駿河区東静岡2-3-1
入場料:一般1500円、子ども・学生1000円(28歳以下の学生)
日時:11月3日(日・祝)午後2時開演
問い合わせ:054-289-9000(グランシップチケットセンター)