人形小路の小さなレストランで、料理とカクテルのペアリングを
那珂川と博多川に挟まれた中洲は、戦後の復興期から高度成長期にかけて多くの飲食店が集まり、九州一の繁華街といわれるまでに発展しました。中洲大通りなどの表通りには飲食ビルが林立していますが、少し裏通りに入ると昔ながらの風情が感じられます。その中洲で、もっとも古い一角といわれているのが"人形小路"です。
那珂川側にあるT字型の狭い路地に、小料理屋、寿司屋、バー、スナックなど30軒ほどの飲食店が軒を連ねる様子は、まさに昭和の風景そのもの。古くから通う常連客に交じって、最近ではSNSなどを頼りに訪れる観光客もチラホラ見かけます。そんな路地裏で、今年の2月にオープンしたレストランが「カトラリー」です。
店内はオープンキッチンに面したカウンター8席のみのこぢんまりとした造り。リーズナブルなコース(4,620円〜)も用意されていますが、今回はアラカルトからオーダーすることにしました。メニューには、前菜から魚、肉を使ったメインまでバランス良く並び、どれにするか迷いながらも自分好みの組み合わせをチョイスする楽しみがあります。
ドリンクは厳選した自然派ワインのほかに、オリジナルのカクテルが6種類も用意されています。どれも食材や調理法に合わせてミックスされたもので、アラカルトから選んだ料理とのペアリングを提案してくれます。
まずは、シェフおすすめの「前菜の盛り合わせ」(1,680円)からスタートしました。マットな質感のお皿に盛られた料理の数々は、「これが1人前?」というボリューム感。内容も真鯛のカルパッチョ、レバーパテ、嬉野ナカシマファームのモッツァレラとフルーツ、フォアグラのテリーヌ、生ハム、牛ハツ、鶏や豚の自家製シャルキュトリ等など、バリエーションも豊富です。スッキリとした自然派の白ワインと合わせつつ、食べ進めるごとに食欲が喚起されるようなアンティパストでした。
二品目には、人気メニューのひとつ「サーモンマリネとサワークリームオニオン」(1,580円)をチョイス。香味野菜と漬け込んだ肉厚のサーモンはねっとりとした口当たりで、添えられたサワークリームの爽やかな酸味が口中をサッパリとしてくれます。ペアリングしたカクテルは「桃と煎茶のマティーニ」(1,200円)。ジンをベースに、白桃、煎茶、ベルモットなどのフレーバーが渾然一体となり、食材の旨さをより引き立ててくれます。
そして、メインに注文した「羊のハンバーグ」(2,200円)は、羊肉と合挽を合わせてつなぎをほとんど使わずに焼きあげた一品。ひと噛みすれば肉汁がジュワッと溢れ出す肉々しい食感はパンチがあり、食べ応えも充分です。シェリーと純米吟醸酒をミックスした独創的なカクテル「UN NATURE」(1,200円)との相性も抜群でした。
料理とワイン、カクテルとのペアリングもさることながら、盛りつける器も有田や波佐見、小石原などの窯元からセレクトしたもの。それぞれの組み合わせによって、シェフ独自の世界観を表現している路地裏の小さなレストランです。
cutlery(カトラリー)
福岡市博多区中洲4-1-19(人形小路)
092-263-0771