清水エスパルス、横浜FC、V・ファーレン長崎の“3強体制”に異変が…サッカーJ1自動昇格争いは佳境へ!清水は“その日”を迎えられるか
【サッカージャーナリスト・河治良幸】J2のレギュラーシーズンは第27節まで消化して、残すところ11試合となっている。2枠の自動昇格を目指す争いは清水エスパルスが勝ち点58で首位、横浜FCが勝ち点57で続く。
前半戦を終えた時点ではV・ファーレン長崎を加えた“3強”と言える状況だったが、ここにきて長崎が、直近3試合で1分2敗と足踏み。勝ち点は52で、上位二つとやや離れてきている。それでもJ1首位のFC町田ゼルビアから加入したDF青木義孝などがフィットすれば、チームのポテンシャルを考えても、終盤まで清水と横浜FCに喰らいついてくる可能性は十分にありそうだ。
4位のベガルタ仙台にも自動昇格の希望は残されているが、2位の横浜FCと勝ち点10差なので、残り11試合で逆転するのは極めて難しい。ただ、第25節で清水に勝利してから3連勝と勢いに乗っており、ここからさらにジェフ千葉やいわきFCなど、昇格プレーオフを争うライバルを競り落とすことができれば、シーズン終盤の自動昇格争いに加わってくるかもしれない。
清水は新戦力の宇野、アジズがフィット
首位を走る清水は6月に愛媛FC、ブラウブリッツ秋田とのWアウェーで連敗したが、その後は上記の仙台戦を除き勝ち点3を積み上げており、この2試合はザスパ群馬に4-0、ヴァンフォーレ甲府に3-0と、ほぼ隙の無い戦いぶりを見せている。
ボランチの主力だった白崎凌兵が町田に移籍したが、代わりに町田から来た20歳の宇野禅斗が早期フィットしており、群馬戦では貴重な2点目のゴールを決めた。
甲府戦はポゼッションでもチャンスの数でも大幅に上回る形で完勝を飾り、6月に加入したガーナ人FWアブドゥル・アジズ・ヤクブも群馬戦に続き、結果を出した。
アウェー藤枝という鬼門
清水にとって、間違いなく難しい局面になりそうなのが9月22日に行われる藤枝MYFCとのアウェーゲームだ。昨年の敗戦は1年でのJ1復帰を目指していた清水にとって、大きな痛手となった。
藤枝は現在12位。須藤大輔監督が目標に掲げる昇格プレーオフ圏内の6位まで、勝ち点8差とギリギリの状況にある。もちろん目の前の試合で一つ一つ勝ち点を積み上げていくしかないが、ホームの清水戦は藤枝にとっても大事な一戦になってくる。
清水としては藤枝戦を前に、4試合で着実に勝ち点を獲得していきたいところ。まずアウェーの鹿児島戦、徳島戦と長距離の遠征があり、そこから3位の長崎、6位のレノファ山口とホームのアイスタで対戦する。そして藤枝戦の次には横浜FCとの決戦が待つ。
もちろんJ2優勝という意味合いでも大事な試合となるが、そこに行くまでに、長崎にある種の引導を渡し、アウェー藤枝という鬼門を打ち破って、より前向きな状況で横浜FCとの大一番に臨めるかは注目だ。
ベンチワークが鍵になる終盤戦へ
現在の清水は4−2−3−1のシステムが攻守のバランスよく機能しており、1トップの北川航也を筆頭に、2列目のルーカス・ブラガ、乾貴士、カルリーニョス・ジュニオが躍動的なプレーを見せている。
彼らを支えるのが新加入の宇野とアカデミー育ちの宮本航汰だ。宮本は長崎や岐阜で武者修行するなど、決して順風満帆だったわけではない。そして清水に復帰してからもスタメンに定着しきれない過去3シーズンを過ごしてきたが、現在は最も欠かせない選手の一人になっている。
中盤でボールを奪えて、安定的に起点のボールを供給できる宇野と宮本のコンビ。彼らの後ろに構えるセンターバックの住吉ジェラニレショーンと高橋祐治という2枚の壁。サイドバックの原輝綺と山原怜音、守護神の権田修一と、試合を重ねる中で良い意味で動かしにくいファーストセットになってきていることも確かだ。
それでも残り11試合で必ず、ベンチワークが勝負の鍵を握ってくるはず。秋葉忠宏監督も、ほぼ例外なく5枚の交替カードを使い切っており、総力戦になってくるはずだ。
ライバルの横浜FCにとっても、9月28日の国立競技場での清水戦というのは大一番として見定めているはずだが、それまでのアウェーのモンテディオ山形戦など、難しそうな試合が控えている。どういう状況で、J2の大一番を迎えることになるのか。