Yahoo! JAPAN

秋アニメ『私を喰べたい、ひとでなし』上田麗奈さんが語る、死にたがる比名子の“面倒くさい可愛さ”【インタビュー】

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

海辺の街に独り暮らす八百歳比名子(CV.上田麗奈)と、それを喰べに来た人魚の少女・近江汐莉(CV.石川由依)。比名子の血肉は特別に美味しいと数多の妖怪を惹きつけてしまうのだが、彼女が成熟してから自分が喰べると、汐莉は妖怪たちから比名子を守っている。また、比名子を想う心優しい社 美胡(CV.ファイルーズあい)もいて……。

人と妖怪が織りなす、美しくも切ない、新感覚ガール・ミーツ・ガール、TVアニメ『私を喰べたい、ひとでなし』が、TOKYO MXにて毎週木曜23:30より放送中! 比名子を演じる上田麗奈さんに、作品や自身が演じるキャラクターについて聞いた。

 

 

【写真】秋アニメ『私を喰べたい、ひとでなし』上田麗奈インタビュー|比名子は“死ぬために生きる”少女

比名子は、見ている側が苦しくなるくらい仄暗さをまとっている子

──原作を読まれた印象をお聞かせください。

上田麗奈さん(以下、上田):コミカルなシーンもありつつ、ホラーなシーンもしっかりと怖く描かれているなと思いました。主人公の比名子は、見ているこちらまで苦しくなるような、全体的に仄暗さをまとっている子なんですけど、周りのキャラクターたちとの関係性がどこか歪だったりして、儚さを感じました。それに絵の美しさも印象的でした。

汐莉は人喰い人魚で、比名子を喰べに来たというところで、本来は怖い話なんですけど、比名子は自分の死に対して、怖がるどころか救いを感じているんです。そこが見ていて辛くなるところなんですけど、汐莉に出会って比名子がどう変わっていくのかを見守っていきたいと思わせてくれる作品でした。

 

 

──ホラーであり、ミステリアスな作品でもありますよね。ちなみにホラーは好きですか?

上田:実はホラーはすごく苦手なんです。だから本当に怖いなと思いながら原作を読ませていただきました。ただミステリーは好きなんです。だから汐莉に関しては特に、本心が読み切れない感じが序盤からあって、本当にただ喰べに来ただけなのか、そうじゃないのかが図り切れないところが気になるなと思いながら読んでいました。美胡ちゃんに関しても、何かありそうじゃないですか。なのでミステリー作品としても、面白いと思います。

──女の子たちのやり取りを楽しむだけではない面白さがありますよね。

上田:でも、原作の苗川 采先生は、面倒くさい子が面倒くさい子に振り回されているのがすごく好きで、それを詰め込んだとおっしゃられていたので、そういう視点で見ると、もどかしさとか辛さ含めて、良さがあると思います。でも比名子が前向きになったのかも?と思ったら、実はこうでしたって、真逆の意味だったりしてショックを受けたこともあったので、ドキッとすることが多い作品ではありますね。

──比名子のキャラクターについて、どんな印象を持たれていますか?

上田:比名子は死にたがっているというところが一番インパクトがある子だと思っているんです。心は(亡くなった)家族の元に行きたい。でも生きてほしいという家族の想いもある。そこに板挟みになっていて、結果、家族の元に行きたいという想いはあるが、自分で命を絶つことができないという考えに至り、自分の命を奪ってくれる何かを欲するようになってしまうんです。

 

 
生きたくはないけど、死ぬために生きるしかない。そんな状態からスタートするので、仄暗いイメージが序盤は強いと思います。そこから山あり谷ありなんですけど、表情が豊かになる場面があったりするし、家族以外の他者への想いも見せてくれるので、状況が良くなっているのかな?と思ったりもするんだけど、そっちに気持ちが変化しちゃったんだ……ということもある。そんなキャラクターなので、周りの子を無意識に振り回しちゃうところはあるのかなと思っています。

でも、比名子自身はそんな意識はないし、むしろ周りのことをすごく考えて動いている子なので、本当に優しい子なんだなと感じました。自分の頑固さと優しさのバランスをうまく取れてない感じが、先生がおっしゃった“面倒くさい子”というのにも繋がっていくのかもしれないですね(笑)。

──役を作っていく中で、ディレクションはありましたか?

上田:一番最初に、モノローグの比名子とみんなと会話している比名子の温度感をどうするのかという話があったんです。モノローグのほうは、淡々と、感情の持つエネルギーすらないという状態でやって、「そのままで大丈夫」という判断になったのですが、人と会話しているとき、「暗さを減らしたい」というディレクションをいただきました。明るくまではいかなくとも、比名子なりに周りと馴染んでいる感じになるよう意識して演じていきました。

 

 

先生が笑顔だから私たちも嬉しい! そんな現場でした

──上田さんから見た、汐莉はどんなキャラクターですか?

上田:最初はやっぱり怪しかったので、何を考えているのかわからない、底が知れない人だなと思いました。会話をしていく中で、飄々とした印象もすごくあって、飄々と、強引なことを比名子に言ってくるんですね。でも、その強引の中にも比名子を喰べるだけではない何かがありそうだと思わせる、すごく真っ直ぐなものを持っている感じがするキャラクターです。

 

 

──比名子と汐莉との掛け合いはいかがでしたか?

上田:最初の出会いのシーンはすごく怖いと思ったし、掛け合っているときも、何かを話しているようで話していない、噛み合っているようで噛み合っていないもどかしさがありました。

でも、今お話した通り、一緒にいると、比名子に対して優しいし、真っ直ぐ想いを届けてくれるから、友達になれるんじゃないか?と思わせてはくれるんです。

──石川由依さんは、他作品で演じてきた役柄もそうなのですが、声に優しい成分があると思っていて…。それが、仲良くなれるかもしれないと思わせてくれる要素のひとつだったりするのかなとも感じました。

上田:確かにお声がすごく優しくて柔らかいんですよね。含みがすごくネガティブなものに感じないのは、石川さんのお声や人柄も相まってだったのかもしれません。根っこから悪くて怖くて相容れないものではなく、とっつきやすさと清らかな空気感がある感じがして。それが汐莉の優しさに重なったのかもしれないですね。

──比名子の親友である社 美胡は、どんなキャラクターだと感じていますか?

上田:美胡は、比名子と真逆で、カラッとしていて、太陽みたいな子ですよね。存在感の強さとか、この子がいたら、比名子じゃなくても心強いだろうなと思える存在でした。あとは場の空気をガラッと変えてくれる人であり、対比名子に関して言えば、一番共感を生みやすいキャラクターだと思いました。だから美胡が比名子への想いを語っているシーンも、すごく納得しながら聞いていましたね。

 

 

──こういうホラーだったり、怖さがある作品だと、逆にアフレコは明るかったりするのかな?と想像したのですが、実際はどうでしたか?

上田:明るかったです(笑)。本編は重いんですけど、休憩中はお菓子を食べたりしていました。美胡役のファイルーズあいちゃんが、自分の家からお菓子をいっぱい持ってきてくれて、みんなに配ったりしていたのですが、ある時、かわいいパッケージのハンドクリームを持ってきて、石川さんと私と3人で、それを分けてくれたことがあったんです。「友情の証ね」と言って、ファイちゃんが、「由依さんはこういうイメージだから、このパッケージ」とか、私たちに合わせて見繕ってくれて。キャラクターとしては、この3人の関係性はちょっと歪だったりするけど、休憩時間は仲良しで、とても平和でした(笑)。

──最初に原作の先生の話もありましたが、アフレコに来てくださったのですか?

上田:そうなんです。先生は愛媛に住んでらっしゃるんですけど、度々アフレコにも来てくれて、そのたびに「素晴らしいです」「嬉しいです」「ありがとうございます」と、すごくポジティブな言葉を掛けてくださったんですね。先生が笑顔だから私たちも嬉しい! そんな現場だったと思います。

──愛媛というのは良い舞台ですよね。

上田:私、これまで愛媛には行ったことがなかったのですが、この番組のロケで愛媛に行ったんですよ。その景色を見ながら、比名子は辛かっただろうなと思ったんです。そのくらいめちゃめちゃきれいな空気と景色だったんです。私も田舎育ちなので、田舎ののんびりした感じは知っていたけど、やっぱり北陸と四国は少し違うなと(笑)。瀬戸内海は、穏やかな海と、とても温かい空気感があったので、すごくキラキラして見えたんですね。

これだけ多幸感に溢れた街だと、比名子のようなメンタルで道を歩いたり、景色を眺めたりしたらしんどいだろうなって。自分のしんどさと、周りの世界がすごく幸せに見えるギャップに苦しんだんじゃないかなと思ったんですね。本当に、穏やかに暮らせそうだなと思わせてくれる、すごく良いところでした。

 

 

──では最後に、アニメを楽しみにしている方々へメッセージをお願いします。

上田:苗川先生が面倒くさい子が面倒くさい子に振り回される作品が好きで、それを詰め込んだとおっしゃられていたのに対して、私も「なるほど」と思ったので、その視点で見る楽しさもあると思います。そのくらい比名子と汐莉が本当に噛み合わないんですよ(笑)。ずっと噛み合わなくてもどかしい中、比名子の危うさに、この子どうなっちゃうんだろうという怖さもあるので、それがどう変わるのか、もしくは変わらないのかを見守っていただきたいです。

でも周りの人たちの比名子に対する友情とか愛情は、とても伝わってくると思うから、汐莉や美胡と同じ気持ちで比名子を見てくださるのもいいし、比名子に感情移入すればするほど、汐莉は強引だなと思ったり、美胡に対してはごめんねという気持ちが湧いてきたりするので、誰の視点も大事に、見ていただけたら嬉しいなと思います。

 
[文&写真・塚越淳一]

 

おすすめの記事