【2024年度最新版 全国最低賃金ランキング】全国平均51円上昇、1,055円に。3割の都道府県が時給1,000円越え。
厚生労働省は8月29日、令和6年度地域別最低賃金額改定について、答申での全国加重平均額が平均51円引き上げの1055円となったと公表した。これは昭和53年度に目安制度が始まって以来、最高額となっている。2024年度の地域別最低賃金改定の目安は、全国一律で50円だったが、各地方最低賃金審議会では、目安を上回る引き上げ額で答申する例が相次いでいた。最低賃金の引き上げは2024年10月から順次実施される。今回は、2024年度の47都道府県の最低賃金について紹介する。
【2024年度 全国最低賃金ランキング】時給1000円越えは16都道府県に
2024年は新たに8道県が時給1000円を超え、1000円超えは合計16都道府県となった。今回初めて1000円を超えたのは、北海道、茨城県、栃木県、岐阜県、静岡県、三重県、滋賀県、広島県。今回の改定で時給950円以下はなくなり、最下位は秋田県の951円となった。最高額は東京都の1163円で、最低額との差は212円となり、前年の220円(1113円対893円)より縮小した。
引き上げ額1位は「徳島県」の+84円、賃上げ率9.3%。過半数以上が目安額以上の引き上げ
今年度の最低賃金引上げは、春季労使交渉の結果や消費者物価の上昇、企業の賃金支払能力を考慮して議論された。労働者の生計費を重視し、賃上げの維持と拡大を図ることが目的とされている。中央最低賃金審議会の答申によると、2024年度の地域別最低賃金改定の目安は、中央最低賃金審議会が定めるランクに基づき、Aランク(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪)が50円、Bランク(北海道、宮城など28県)が50円、Cランク(青森、岩手など13県)が50円と設定されていた。全国で同額とされた理由は、地域間格差の縮小を図るためで、ランク別目安の引き上げ率は、Cランクが5.6%、Bランクが5.2%、Aランクが4.6%だった。今回の改定により、最高額(東京都の1163円)に対する最低額(秋田県の951円)の比率は81.8%となり、昨年度の80.2%から大幅に改善された。
また、2024年度の最低賃金をフルタイム労働者の月給に換算した場合、以下が目安となる。(※1)
全国平均:17万5130円
東京都:19万3058円
大阪府:18万4924円
(※1)厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」より、年間休日の労働者1人平均は115.6日であることから、年間所定労働日数を249日とする。計算式は以下。
正社員最低賃金=(最低賃金×8時間×249日)÷12ヶ月
【最低賃金の推移】2015年の全国平均は798円。10年で257円増
最低賃金は、過去10年を平均すると約3%のペースで引き上げが続けられており、全国平均は過去10年で257円増加した。2020年は新型コロナウイルス感染症拡大による経済・雇用への影響等を考慮し、引き上げは見送られたが、その後、物価高騰および春闘賃上げ率の上昇により、昨年は4.5%、今年は5.0%と大幅な引き上げが続いた。昨年、全国平均で初めて1000円を超えた。なお、東京都は2019年(1013円)、大阪府は2022年(1023円)にそれぞれ最低賃金1000円を超えている。
【検索時給の推移】仕事探しをする人の希望時給下限、2024年は平均1260円〜
2024年1-3月の期間に求人ボックス上で検索された時給の平均(加重平均値)は1260円で、2023年同期間の1237円から1.8%、2022年同期間の1191円からは5.8%上昇している。
2023年度の全国平均最低賃金1004円を大きく上まわっており、求職者が人手不足や物価高の影響を受け、より高い賃金が求められていることを示している。
検索動向の集計・算出方法:「求人ボックス」利用ユーザーが、2021年7月1日から2024年3月31日の期間に、「求人ボックス」内で仕事探しを行う際に、設定した下限時給の加重平均値。各期間の上位100件を抽出し、下限の設定がない検索を除く。
最低賃金とは
最低賃金とは、使用者(雇用主)が、労働者に支払わなければならない賃金の最低賃金を定めた制度で、「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類ある。
「地域別最低賃金」は各都道府県に1つずつ定められており、各都道府県内の事業場で働く正社員・アルバイト・臨時社員などすべての労働者とその使用者に対して適用される。
「特定(産業別)最低賃金」は、特定の産業について設定されている最低賃金で、産業の労使が、「地域別最低賃金」よりも高い水準で最低賃金を定めることが必要と認めた場合に設定される。地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金の両方が同時に適用される場合は、高い方の最低賃金額が適用される。
最低賃金は、基本給や職務手当など毎月支払われる基本的な賃金が対象となり、残業代やボーナスは含まれない。
【最低賃金の対象とならない賃金】
(1)臨時に支払われる賃金(結婚手当など) (2)1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など) (3)所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など) (4)所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など) (5)午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など) (6)精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
最低賃金を下回る場合、仮にその賃金が労働者、使用者双方の合意の上で定めていたとしても、法律によって無効とされ、自動的に最低賃金額が適用されることから、使用者は労働者に対して、最低賃金との差額を支払わなければならない。さらに、地域別最低賃金を守らない場合は50万円以下の罰金、産業別最低賃金を守らない場合は30万円以下の罰金が科される可能性がある。