定年後に、夢の“ファーストクラスで世界一周”を実現!松永さんに聞いた「前向きに生きる秘訣」とは
60歳からの夢実現、私のT活
「定年後」について考えたことがありますか? 様々な役割を求められる忙しい50代、日々に追われ、定年後のことを考える余裕などないかもしれません。しかし、人生100年時代と言われる現代、定年後の時間は新たな可能性に満ち溢れています。
そこで、50代から定年後の生き方を考える活動を「T活(ティーかつ。定年活動)」と名付けました。このコラムでは、SBSラジオ「鉄崎幹人のWASABI」と連動し、T活を通してユニークな定年後を謳歌している方々を紹介します。諸先輩方の生き方を知り、定年後の夢を膨らませてみませんか?
第2回のラジオインタビューではT活を実践されている松永敦子(62歳)にお話を伺いました。京都大学を卒業後、リクルートでの勤務を経て、結婚を機に契約ディレクターやフリーライターとして活動されてきた松永さん。広島、東京、そして静岡へと移り住み、2人の息子さんを育て上げられました。そんな松永さんが、どのように定年後の時間を彩り豊かなものにしているのか、その「やりたいこと」への情熱に迫ります。
夢はファーストクラス世界一周
松永さんの最初のT活とも言えるのが、ご主人のリタイア後に掲げた夢、「一緒にファーストクラスで世界一周する」ことでした。昔は夢のまた夢だと思っていたそうですが、56歳の時に偶然見つけた関連書籍を読んで「これならいける」と現実的な目標に変わったといいます。
本やインターネットで情報を集め、最終的には世界一周専門の旅行会社とルートを組みました。そしてとうとう、ご主人は67歳、松永さんは61歳の2023年3月にその夢は実現しました。
84日間かけて14カ国30カ所を巡る旅は、まさに「夢のような日々」だったそうです。感動の連続で、ご主人と「これって夢じゃないよね」と何度も言い合ったことが印象に残っているといいます。ルートは日本から東回り、北米、南米、ヨーロッパ、中東、アジアを回り一旦帰国し、後半は季節の違うオーストラリアを訪れました。
この旅で一番印象に残ったのは、なんと言っても「ファーストクラス」。チェックインカウンター、ラウンジ、機内設備、食事、そしておもてなし全てが格別。キャビアが瓶のまま出てきたり、、サプライズで「ハッピーリタイアメンツ」と書かれたデザートや記念品を用意してくれたりしたそうです。
場所としては、南米ボリビアのウユニ塩湖が特に心に残ったといいます。世界一周を決めた時から絶対に行きたいと思っていた場所で、その「想像をはるかに上回る絶景」は、まるで「この世のものとは思えないほどの景色」だったそうです。鏡のように空がそのまま映り、朝焼け、夕焼け、星空と一日中楽しむことができ、ここでも感動して涙がこぼれたといいます。
気になる費用については、コロナ禍を経て旅行代金が高騰し、さらに円安も進んでいたため、正直なところ予定よりかなりかかったそうです。しかし、「もう行くしか今しかない」「お金っていうのはね、もうこういう時のために使うんだ」とご主人と腹をくくって決行しました。
資金は老後資金とは別に確保していたものに加え、幸いにもお子さんの教育資金があまりかからなかった分を捻出できたといいます。若い頃から旅行資金を計画的に貯めていたわけではなく、関連書籍を読んで夢が現実になってから少しずつ準備を始めたそうです。いつ何があるかわからないから、やりたいことはやるという松永さんの生き方が、この旅を実現させたのです。
新たな挑戦と学び
松永さんは、好奇心や挑戦心を常に持ち続けています。53歳の時には、息子さんに誘われてダイビングの資格を取得しました。オープンウォーターからアドバンスまで取得し、「誰でも、年取ってでも簡単に取れる」と話してくれました。元々泳ぎは全然ダメだったそうですが、スポーツジムに通い、一通り泳げるようになったという努力家な一面も見せています。
好きなことのためなら努力を惜しまないタイプ。八丈島、石垣島、宮古島といった国内や、ハワイ、セブといった海外、そして世界一周旅行中には念願だったオーストラリアのグレートバリアリーフで息子さんと一緒に潜ることができたそうです。一面に広がるサンゴ礁は最高だったと語ります。
また、ご自身やご主人のご両親の介護を考え、42歳でヘルパー2級を取得。ケアマネジャーとのやり取りも知識があることでスムーズに進んだそうです。この資格を使って仕事はされていませんが、介護職の求人は多く、「持っていればいつになっても働ける」と話していました。
私にとっての「定年」そして夫婦の自由な時間
フリーランスとして活動してきた松永さんには、会社員のような仕事上の「定年」はありません。しかし、今思うと、お子さんが社会人になって家を出た時が、ご自身にとっての「定年」の区切りだったのではないかと振り返っていました。子育てに全力を投じてきたため、お子さんの独立は一つの役目を終えた達成感があり、「子供を持つ女性にとっての定年の区切りは、仕事ではなく子供が独立した時ではないか」と感じていました。
また定年後の夫婦生活については、「無理に二人だけの時間を作ろうとは思っていない」。お互いに依存せず、それぞれがやりたいことをやるのが松永さん夫婦のスタイル。長年働いてきてくれたご主人に感謝し、それ以上は求めず、「あとは好きにしていいよ」というスタンス。お互いを尊重し、束縛しない関係性が一番なのかもしれません。
前向きに生きる秘訣 50代からのT活
松永さんが日頃から心がけていることは、「人生いつ何があるかわからないので、やりたいことは何でもやる」ということ。これは、過去については反省しても後悔せず、今の決断を信じ、失敗も次に生かすという考え方。また、何事にも感謝の気持ちを忘れない ことも大切にしています。
最後にT活を始める人々へのアドバイスを頂きました。「何でもやってみる」に加えて、「やりたくないことはやらない」 。人間関係においてもこれからの人生で付き合いたいと思う人だけを大切にする こと。 そうすることによって、新しい縁や出会いが生まれ、「思わぬ展開」が待っている可能性があるんです!
松永さんのような前向きな姿勢は、定年後の生き方を考える上で、私たちに一歩踏み出す勇気を与えてくれるヒントになればと思います。