「俺は、メタルに生きる!」“演歌界のジョージ”山本譲二が語るギター・コンテストと吉幾三・作のメタル新曲
演歌界の巨匠・山本譲二が主催、ヤング・ギター全面協力のもと行なわれた“山本譲二メタル化計画第2弾「みちのく忘れ雪」ギター弾いてみたコンテスト”の。審査結果は既に本WEBでも記事化したが、実は現場ではもうひとつの取材が行なわれていた──。
長時間に渡る審査の後、一切の疲れを見せず、逆にテンションMAX状態の山本譲二。そんな彼を楽屋でキャッチし、今回のコンテストの総評と今後リリースされる予定の「メタル楽曲」について話を聞くことができた。以下、その一部始終である。
山本譲二
激しいギターと演歌の合体は可能性が大いにありますよ
YG:今日の山本さん、カッコいいですね。スーツでバシッと決めてらっしゃって。腕時計もまるでイングヴェイの右腕を彷彿させます。
山本譲二:イングリなんちゃらのことはよくわからないけど、今日、審査会に応募された方が来るとしたら普通のチャラチャラした格好じゃ申し訳ないと思って、一応スーツを着て来たんです。そしたら現場に(コンテスト参加者は)誰もいないわけ(笑)。後からそういう趣旨だとマネージャーから聞かされました。早とちりしちまったよ、まったく。
YG:しかし、これだけ多くのギタリストが山本さんの持ち歌を弾いたのは初めてだと思うのですが。
山本:これまでの歌手人生で初ですね。まさか自分の曲のイントロをこんな風にアレンジしてもらえるとは思わなかった。しかもみんな自分で考えたギター・ソロを乗っけてくれてるわけじゃない? それは嬉しいし、本当にありがたい。参加してくれた人々に貸しができちゃったね。
YG:まずはグランプリを獲得されたTaichi Hasegawa(長谷川太一/Blind Evil)さんのギターはいかがでした?
山本:彼は顔がカワいい。10代に見えますね(※実際は26歳)。でも、めちゃめちゃ上手いわけよ。彼のプレイには…こう、何て言うんだろう? 力強さの中にも品がある。おそらく彼は曲のイントロをいっぱい聴いてくれたと思う。それを自分なりのオリジナルに落とし込んで弾いてくれたのは本当にありがたい。今後、レコーディングで力強さやインスピレーションが欲しい時、彼に連絡しちゃうかもしれない。
YG:ほかの受賞者、参加者で気になった方はいましたか?
山本:やっぱり女性ギタリストのみなさんでしょ! ギターとかトランペットとかサックスとか、昔は男性がやるものだったじゃない? もちろん今は女性も増えてますけど、まさかこんなに激しいメタルを弾いてくれるなんて思いもしなかった。時代は変わったよねぇ。特にずっとカメラ目線の子(ArkRoyalのIllumina)、彼女の視線にはドキッとしました。ずうっとカメラのレンズを見つめていて、それがものすごく冷たい視線でね…。なんか変な想像しちゃった。普段、どんなお仕事をされているのか気になりますね。
YG:キッズの参加も印象的でした。
山本:3人の子どもたちだね。やっぱり子どもは宝だよ。なんか未来が見えて来ちゃったもん。三宅音太郎くん、和氣夏子ちゃん、小2ギタリストそうちゃん、3人とも良かったよ。それぞれ個性があるし。三番目の子(そうちゃん)なんか顔で弾いてたじゃない? あれは最高だったよ。こういう子たちは大事にしなきゃいけないよね。
YG:今回、YG編集部は改めてメタル・ギターと演歌のマッチングの良さを感じたのですが。
山本 この間、マーティ・フリードマンさんと対談させてもらった時(ヤング・ギター2024年5月号掲載)に、彼が「演歌のコブシだか節回しを取り入れて自分のスタイルができた」とおっしゃってました。そういうお話を聞いてすごく嬉しかったんです。演歌とメタルには何か通じるものがあるのかなって。そうやってジャンルの壁が壊れていってるんだから、演歌の世界もいつまでも「♪ウンチャ・ウンチャ…」(アコースティック・ギターをつま弾く真似をしながら)ではいけないと思いますね。もっと激しい要素を入れていってもいいんじゃないか。
俺、「みちのく一人旅」で売れた時、業界では「ニュー演歌」なんて言われたんです。演歌だってどんどん進化していくし、もっと「おニュー」になっていってもいいでしょう。
俺は木梨憲武さんと「浪漫 -ROMAN-」(”憲三郎&ジョージ山本”名義/1996年)って曲を出したこともあるんですけど、これも新しい挑戦でしたからね(註:本曲で木梨憲武は、終始、山本の師匠である北島三郎のモノマネをしながら歌っている)。この時、レコーディングでは二人で笑いながら歌ったんですよ。演歌はしかめっ面して歌わなくたっていいんだって気づかされた瞬間ですね。今日もその時と同じような新鮮な感覚を味わった。激しいギターと演歌の合体は可能性が大いにありますよ。
YG:7月24日にリリースされる活動50周年の記念シングルには、盟友の吉幾三ことIKZOが作詞・作曲したメタル楽曲「言論の自由」が収録予定だそうですね。そこで演歌とメタルが融合した新しいジャンルが誕生するかもしれない?
山本:そうだね。もう間もなく吉とスタジオに入るんで、二人でその辺の話をしようと思っていますよ。
YG:いよいよレコーディングが始まるんですね。すでに吉さんのデモ音源は聴きましたか?
山本:聴いた、聴いた。正直、「こんなの歌えねえよ!」って思った(笑)。実は昨日一昨日も吉幾三と電話で話をしたの。俺は相談のつもりで電話をしてるんだけど、吉は「あとはスタジオで〜」って電話を切ろうとするんだ。ようは当日処理、現場で相談しようっていうね。こっち的には「もう頼むよ…」って感じなんだけど、お互いプロだしね。小1時間集中すれば完成するのは間違いないんで。
YG:さすがです。ところで今回の楽曲アレンジには、アジア唯一のメタリカ公認トリビュート・バンドとして名高いHATTALICAが参加するそうですね。YGもデモ音源を聴かせてもらいましたが、そのNWOBHM的なアレンジに度肝を抜かれる人もいるかもしれません。
山本:NWなんたらのことはよくわからないけど、俺も純粋にカッコいいな、って感じた。HATTALLICAは天才だよ。あんなに腰が低い人たちが演奏してるとは思えないくらいだよ。
YG:メタル新曲については、また音源が完パケた時に改めていろいろと聴かせてください。ということで、メタル楽曲「言論の自由」レコーディングへの意気込みをお願いします。
山本:ついにここまで来ちゃったね! メタル計画の最終章ですよ。完成したら、メタルファンの方々に問いたいですね。「どうよ?」と。俺たち、中途半端でやめてないんです。行くとこまで来ちゃったの。もちろん、コンテストでグランプリを獲ったTaichi Hasegawaさんも参加します。この作品でメタル・ファンの方々が少しでも喜んでくれたら無上の喜びですね。俺は、メタルに生きる!
──そして某月某日、YG取材班はメタル新曲「言論の自由」のレコーディングが行なわれている都内某スタジオを訪問。そこで我々が目にしたものは…!? スタジオ・レコーディングの模様をお伝えするレポート記事は、近日公開予定!
山本譲二デビュー50周年記念曲第1弾 リリース情報
妻よありがとう / 山本譲二
テイチクエンタテインメント | シングルCD | TECA-24 | 2024年7月24日発売
収録内容
1. 妻よ…ありがとう
作詞・作曲:吉 幾三 / 編曲:伊戸のりお
2. 恋しき孫
作詞・作曲:吉 幾三 / 編曲:伊戸のりお
3. 言論の自由
ユニット名:J&J feat. HATTALLICA with 長谷川太一
作詞・作曲:IKZO / 編曲:KIRZ(HATTALLICA)
ボーナス・トラック
4. 妻よ…ありがとう(オリジナル・カラオケ)
5. 妻よ…ありがとう(メロ入りカラオケ)
6. 恋しき孫(オリジナル・カラオケ)
公式インフォメーション
山本譲二 公式ウェブサイト
(インタビュー&文●尾谷幸憲)