潔世一役は「彼以外の最適解はない」、舞台『ブルーロック』4th STAGE 主演・竹中凌平×脚本・演出&伊勢直弘が明かす、新作のプラン
舞台『ブルーロック』4th STAGEが、2025年5月15日(木)~25日(日)に東京・THEATRE MILANO-Za、5月30日(金)~6月1日(日)に大阪・東大阪市文化創造館 Dream House 大ホールにて上演される。去る4月某日、都内にて合同取材会が行われ、潔世一役の竹中凌平、蜂楽廻役の佐藤信長、脚本・演出の伊勢直弘が登壇した。SPICEでは、竹中と伊勢の対談取材も併せて実施。第4弾となる今作への展望をたっぷりと語ってもらった。
原作は『週刊少年マガジン』(講談社)にて連載中の『ブルーロック』。世界一のストライカーを育成する“青い監獄”プロジェクトで熾烈な戦いを繰り広げてきた高校生たちが、今作では猪野広樹演じる糸師 冴をはじめとしたU-20日本代表との大一番に挑む。
合同取材会では、今作への意気込みについて竹中は「今までは閉鎖された空間で戦っていたが、今回はピッチの上。今まで積み上げたものを全部出しきって、集大成に近い作品にできたら」と熱を込めた。すでに稽古がスタートしているといい、佐藤は「蜂楽くんと一緒でワクワクが止まらない。初日の時点ですでに『俺、カッケーだろ』って本番みたいに思えるくらい、スッと(役に)入れた」と手応えを明らかにした。
今作での名場面を問われると「アニメを観ていて、凪のゴールシーンは鳥肌が立った。『初めまして日本…俺が凪誠士郎だ!!!』は言ってみたいセリフですし、あのシーンは(凪役の佐藤)たかみちに頑張ってほしい」(竹中)、「今までクールを貫いてきた糸師凛が兄の冴と対峙するところ。原作やアニメではすごいことになっているので、舞台ではどうなるのか楽しみ」(佐藤)とそれぞれ語った。
現時点での演出プランについて、伊勢から「これまでは日常シーンでかわいらしさを、試合ではカッコよさをそれぞれ描いてふり幅を出していたが、今回は1試合のみ。とにかくカッコよさを突き詰めて、試合への熱量を最大限に引き出すために彼らと作っていけたら」との言葉も。合同取材会終了後、シリーズ1作目から主演と脚本・演出として駆け抜けてきた竹中と伊勢に詳しく話を聞いた。
――この取材時点で、稽古が始まって2日目とのこと。進捗はいかがでしょうか?
伊勢:2日目とは思えないほどのスピード感でやっております! どんどんミザンス(立ち位置)をつけていって。
竹中:いつもこんな感じですよね?
伊勢:そうですね。だいたい3日目くらいで「じゃあ、通してみましょうか」という段階になります。
竹中:さすがに、まだ台本は手放せない状態です(笑)。
――実際にサッカーボールを使用したり、マイムを取り入れたりと多彩な表現方法で作られている舞台。稽古はどのように進められているのでしょうか?
伊勢:普段はアクション舞台に近いのかもしれません。まず全体の流れを作ってからアクションシーンを作るのと同じで、全体の流れを作ってから試合のシーンを作っていきます。ただ、今作は試合シーンを抜いたらほとんどすることがないので、最初から順を追って試合シーンを作っていっています。そういう意味では、よりストレートプレイに近い稽古になっているかもしれないですね。
――かなりハードな作品というイメージがありますが、役者側としてはどんな準備を?
竹中:もう、生身で挑んでいます!(笑)。
伊勢:あははは(笑)!
竹中:特別な体力づくりはしてないんですよ。そこはもう自分を信じることにしています(笑)。しいて言うなら、プライベートはなるべく省エネで過ごしていることくらいですかね。
伊勢:今までもそれで全員やり切ってくれているので、大丈夫なんだと思います。信頼していますよ。
――稽古のなかでも、最もやりがいのある段階は?
伊勢:圧倒的にミザンスです。今が一番、しんどいですね。2時間くらい経つとヒーヒー言っています(笑)。どんなに考えてきても、実際に動いてもらうと足りなかったりうまくいかなかったりしますから。そういうときは本当に、役者の皆さんの空気感にすごく助けられています。空気が澱んでくると焦ってしまうし、できることもできなくなってくる。この座組は男子校ノリでわちゃわちゃやってくれていますし、皆で盛り上げてくれていますね。そんななかで、竹中さんは背中で見せてくれるタイプの座長。あれだけの情報量とセリフ量と運動量ですから。
――潔は今作も膨大なセリフ量かと。どのようにインプットされているのでしょうか?
竹中:特別なことはしてないですよ。毎日、ちょっとずつ。自分で読んで、ずっと反復している感じです。ほかの作品と手段を変えているわけではなく……でも、たしかに他の人の覚え方ってどうなんだろう? (絵心甚八役の)よっこい(横井翔二郎)さんとか気になりますね。
伊勢:絵心は一回あたりの行数が非常に多いですからね。
竹中:……でも、もうすでにセリフ全部入ってましたよね?
伊勢:入ってましたね!
竹中:まだミザンスなのに、よっこいさんはもう台本を持っていないんですよ。いつもそう。持っている姿を見たことないかも。プレッシャーですね(笑)。
――今作で描かれるのは、U-20日本代表戦。台本を読まれていかがでしたか?
竹中:あの試合を2時間ほどの台本にまとめるのは、本当に大変だったのだろうと……。
伊勢:大変でしたね(笑)。
竹中:そうですよね。U-20日本代表戦における面白い部分を、原作通りに全部拾ってくださっていて。この作品を見てくださったお客さんは、絶対に楽しんでくれるんだって。画まで浮かびました。
――執筆にあたり、最も外せないポイントは?
伊勢:試合の決め所ですね。得点に紐づくゴールシーンは絶対に外せないですし、言ってしまうと全部になってしまうんですが……特にそれぞれのバッグボーンや過去の回想は。「こういった背景があるから、このプレーにつながるんだ」という紐づけは、第1弾からずっと意識してきました。
竹中:伊勢さんって、書くスピードが速いですよね。いつも早い段階で台本をいただける印象があります。
伊勢:そうなのかな? 今作でいうと、じつは今までで一番早く書き上がりました。初稿はかなり早い段階でできていましたね。
――それほど、今作で表現したいものが明確なのかと。そんななかで、竹中さん演じる潔世一はどんな役割を担っているのでしょうか?
竹中:今、何が起きているのかをお客さん目線で解説するところ。それがあるからこそ明快でわかりやすかったりするので、個人的には活舌は気を付けていこうかなと。今作の見どころという点で潔くん自身の得点シーンは、やっぱりカッコよく決めたいですね。
伊勢:終盤のあのシーンは、絶対に想像を超えるような見せ方にしたいなと思っています。
竹中:そうですよね。どうなるんだろう……?
伊勢:想像を超えるものにするためには、ワンプレーワンプレーをしっかり理解できるように作っていかなければと。潔がボールを手にするまでの攻防、その後……と話の展開がすごく丁寧に作られているので、そこは舞台でも作っていかないといけないですね。
――竹中さん演じる潔を筆頭に、『ブルステ』はキャラクターの存在感がとても魅力的な作品。演出として、伊勢さんはどう感じていらっしゃいますか?
伊勢:僕の中ではこれ以外の正解が思いつかない。潔でいうと、竹中さんの良さと潔の良さが混ざり合ってできた化学反応が舞台での潔世一。彼ららしさでやってもらえるのが一番良いと思っています。これはこだわりではなく、舞台を作るにあたっての思いなんですけど、漫画やアニメ原作の作品を舞台化するときは、役者にはキャラクターの喋り方や声に寄せてと言ったことが一度もないんです。キャラクターを真似るだけではなく、心情を理解して、ちゃんと積み重なっていくストーリーにしたい。だから、彼が潔世一を作るにあたって、再現するではなく変換するというやり方をしてくれることが、おそらく僕のやりたいことにハマってくれているんだと思います。彼以外の最適解はないと思いますよ。自分ではどう思う?
竹中:うーん……潔を演じるときは割と素に近いんですよ。
伊勢:そうだよね。
竹中:他のキャラクターだったらテンションを1つ上げることがあるんですけど、潔くんの場合は一切それがなくて。割と素のテンションが近いからなのかなって、自分では勝手に解釈しているんですけど。
伊勢:そう。稽古場でも役を演じているときと、休憩しているときの感じにあまり違いはないんだよね。今、こうしてインタビューを受けている姿も「この人があのキャラクターを演じているんだ……!」っていう驚きはそんなに感じない。
竹中:髪型も割と近いですし(笑)。
伊勢:うん。頭に双葉をつければ、もう潔になる。
――竹中さんは初期から一貫して「潔は演じやすい」と仰っているのが印象に残っています。
竹中:本当に言い方が難しいんですけど……無理をしなくていいキャラクターなんです。それがどうしてかっていうのは、自分でもよくわからなくて。
伊勢:たぶん、潔の言動に違和感がないからじゃないかな?
竹中:あぁ、たしかに! そうかもしれないです。
伊勢:ぶっ飛んだり癖が強かったりするキャラなら、セリフを出すためのセットアップが必要になるでしょ? 潔の場合は、その部分がないから演じやすいんだと思う。「無理をしない」っていうと一見楽をしているように聞こえてしまうかもしれないけど、決して竹中さんが役作りにおいて楽をしているわけではないんだよ。
竹中:ありがとうございます……!
――今作において、現時点での演技や演出プランは?
伊勢:やっぱり、試合展開ですね。原作を知っている方でも「このプレーをこういう風に見せるんだ!」と思っていただけるかと。いわゆる変換ですね。まったく同じことをやろうとすると、サッカーコートを劇場の中に作らなきゃいけなくなる。あの狭い空間の中でどれだけ広さを出せるか、お客さんが何も考えずにすんなりイメージできるようにするのが演出としての腕の見せ所かと。セットもスタジアム感を出すために若干のマイナーチェンジをしています。
竹中:僕の中にはもう引き出しはないんで(笑)。伊勢さんはじめ、ステージングの船木(政秀)さんや照明、音響さんの力を借りて、とんでもなくかっこよく仕上げてほしいです!
伊勢:試合自体も一進一退の攻防ですし、精神的にも一進一退している。そこをしっかり見せて、立ちはだかる壁のデカさを描いていきたいですね。
――最後に、お客様へメッセージをお願いいたします。
伊勢:観に来ていただくお客さんが「観戦した」という気分を持ち帰っていただく作品にしたいです。これは言霊を宿していきたく、色んなところで口にしている今作への想いです。初日には堂々と「スタジアムへようこそ!」と言えるような作品にします。
竹中:『ブルステ』は本当にたくさんの人に愛してもらっている作品。皆さんからの言葉をよくSNSで目にしたり、イベントなどでファンの人とお話をできる場で直接耳にしたりしています。その方たちの期待を超えられるような作品になると思う……というよりは、必ずなるので。ぜひ期待して劇場にお越しください。
取材・文=潮田茗 撮影=大橋祐希