なぜ人は「不安」を感じるのか?【心の不調がみるみるよくなる本】
なぜ人は「不安」を感じるの?
「不安」は常に私たちとともにあり、切り離せない存在です。その中でも「病的な不安」だといえるのは、どのような状態なのでしょうか。
「不安」は「痛み」と似たようなもの
日々の生活において「不安」をまったく感じない人はいません。不安を感じずに生きていくことは相当に困難です。そのような観点から、多くの専門家が、不安を「痛み」に例えて説明することがあります。
手や足を何かにぶつけたときに痛みを感じることで、人間は自分の体の動きをコントロールすることができます。痛みの不快さは記憶に残るので、普段から周囲にぶつかりそうなものはないか、どうやってよけるかという注意をするようになるのです。
不安が人間に与える影響は、痛みと同じようなものです。例えば、多くの人の前でスピーチをしなければならないとき、「失敗したらどうしよう」という不安が心に浮かぶでしょう。経験が少ない幼児なら、大した不安は感じないかもしれません。しかし、過去にスピーチで絶句したことがあったり、他人のそのような場面を見たことがあったりすると、体が感じる痛みと同じように、その不快さが思い起こされます。
こうした場合、多くの人は、不安な気持ちを解消するため、スピーチの練習をしたり、話す内容をメモに書いたりして対処するでしょう。手や足をぶつけないように周囲を確認するのと同じです。
対象や理由が漠然とした「病的不安」
なかには対処が難しい不安もあります。例えば、何かの役員をくじ引きで決める場合です。引き受けられない理由をいろいろ考え、説得を試みることはできますが、くじ引きに対処法はありません。ただし、こうした不安は対象や理由がはっきりしています。結果はどうあれイベントが済めば、不安はいったん解消され、長くは続かないのです。
問題なのは、対象や理由が漠然としており、長く解消されずに続く不安です。あえて前に挙げた例に沿えば、スピーチをしたり、くじを引いたり、ショックで倒れ、もしかしたら死んでしまうかもしれないという不安が考えられます。こうした病的な不安に襲われた場合、スピーチやくじ引きの際に身体的な異常があらわれるかもしれません。あるいは会場に行くことができない場合もあるでしょう。そのとき周囲の人に欠席を非難され、冷静に答えることができるでしょうか。もしも激しい怒りや悲しみで応じてしまえば、人間関係に大きな悪影響を与えかねません。
このように、不安をきっかけにして、身体的反応や行動、感情を自制できず、日常生活に支障をきたすまでになると、「不安障害」を疑わなくてはなりません。本書では周囲の人の協力、専門家の診断や治療を通じて、不安やその障害と上手に付き合っていくためのさまざまな方法をご紹介していきます。
CHECK!
「不安」は生きていくために必要な感情まったく不安がない人はいない
【出典】『心の不調がみるみるよくなる本』ゆうきゆう:監修