発達が気になる3きょうだいとの帰省は戦略的に!?長距離移動を攻略!わが家流5つの工夫
監修:新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
おもちゃ作戦!一時封印で新鮮さを演出
家族みんなでのお出かけや旅行、帰省は楽しいものですが、発達障害のある子どもにとっては、普段と違う環境や長時間の移動がストレスになることもあります。そこで、わが家ではちょっとした工夫を積み重ねて、できるだけみんなが快適に過ごせるようにしています。今回は、実際に効果的だったわが家流の方法をご紹介します。
まず、おもちゃ作戦からご紹介!
お出かけの約2週間前から、普段よく遊んでいるおもちゃの中でも「最近遊んでいないけどお気に入り」だったものをピックアップ。それらを見えないようにカバンや巾着袋に隠しておきます。こうすることで、お出かけ当日に取り出したとき、「久しぶり!」という感覚が生まれて新鮮に楽しんでくれます。
おもちゃを出すタイミングもポイントです。新幹線などの公共交通機関を利用する場合、子どもの機嫌が悪くなりそうな「ギリギリまで何もしない」が鉄則。少し退屈そうになってきたところで、まるでどこからともなく現れたかのようにおもちゃを渡します。この「サプライズ感」が意外と効果的。
一度にすべてを見せてしまうと「全部出して!」となりがちなので、上手に隠しつつ少しずつ追加していくのがコツです。飽きたら次のおもちゃ、というふうに時間を引き延ばせます。
おやつ作戦!特別感と時間稼ぎの両立
おやつの準備も、一工夫。まず、子どもたちが大好きなおやつを少量用意します。これを最初に少しだけ渡すことで、まずは気分を盛り上げます。その後、「まあまあ好き」なおやつを選びますが、ここでのポイントは、小さくて食べるのに時間がかかるものを選ぶこと。例えば、一口サイズのクッキーやおせんべい、ゆっくりなめたりかんだりできるタイプのチューイングキャンディなどが活躍します。そして最後に登場するのが、普段は買わない特別感のあるおやつです。食玩や、ちょっとしたご褒美感のあるものを準備すると、さらに子どもたちの期待が高まります。
普段は「これ、あまり食べさせたくないな……」と思うようなおやつでも、長時間のお出かけや帰省のときだけは特例。ご機嫌のためなら背に腹は代えられません!(笑)こういう日限定だからこそ、子どもたちも「今日は特別なんだ!」と感じてくれるようです。
おやつを渡すときも、すべてを一度に出さず、少しずつ小出しにするのがコツです。「次は何が出てくるのかな?」とワクワクしながら楽しんでくれるので、意外とこれだけで時間を稼げます。こうした工夫で、おやつタイムを子どもたちにとって楽しいひとときに変えることができました。
デジタル機器は最終兵器
タブレットやスマホは、わが家では「最終兵器」のような存在。いざというときのために、切り札として大事に温存しています。まずお出かけの直前に子ども向けの新しいアプリをダウンロードしておきます。インストール後に、自分で少し触ってチュートリアルや設定を済ませておき、遊び方を少しでも把握しておくのがミソ。現地で「できない!どうやるか分からない!」などのトラブルが起きてもすぐ対応できるように準備します。
でもこの強力な切り札、簡単には使いません。なぜなら、わが家の子どもたちは飽きっぽいところがあるので、使い始めると次の手がなくなってしまうからです。おもちゃ&おやつ作戦が尽きたら満を持して登場させます。
座席選びは戦略的に
実践されてる方も多いかもしれませんが、新幹線などでは、最前列か最後列の座席を取るのが鉄則です(わが家調べ)。理由はシンプル。デッキにすぐ出られること、トイレやゴミ箱が近いこと、これらはとても重要なポイントです。特にデッキに出られるのは、子どもがぐずったときの大きな助けになります。
また、「ちょっとゴミを捨てに行こうか」と、おやつなどで出たゴミ捨てに行くだけで、子どもが気分転換できるうえ、少し時間稼ぎもできます。
ヘルプマークで事情をさりげなく伝える
普段はあまりつけないヘルプマークも、お出かけ時には目立つようにつけています。座席周りの人には「うるさくするかもしれませんが、すみません」と一言声をかけることで、直接の配慮を心がけていますが、当然、話しかけられない距離にいる方や、移動中以外の場所でも、ヘルプマークが「この家族には何か事情があるのかもしれない」と周囲に察してもらう役割を果たしてくれます。これだけでも心に余裕が生まれ、気持ちが少し楽になります。
わが家流の「小さな工夫」が生む大きな安心
これらはあくまでわが家の場合の工夫なので、すべてのご家庭に当てはまるわけではありません。それぞれのお子さんやご家族に合った方法がきっとあると思います!無理をせず、少しずつ試してみながら、ストレスを軽減できるお出かけや旅行を楽しめるといいですね。「みんなで楽しく過ごせたらいいな」という気持ちを大切にしながら、肩の力を抜いて取り組んでみてください。何か一つでもヒントになればうれしいです!
執筆/スパ山
(監修:新美先生より)
お出かけ時の工夫について、具体的にたくさん教えてくださりありがとうございます。個性の強いお子さんを連れて長時間の移動を伴うお出かけは、とっても大変です。さらに公共交通機関を使う場合は、場所の制約、運行時間に合わせた行動、持っていける荷物の制限などもあり難易度は高いですよね。コラムでたくさん教えていただけたように、まずは暇つぶし対策です。長時間じっとしていないといけない状況なので、とにかく気を紛らわす暇つぶしを複数用意しておくことは必須です。お子さんによって、慣れた好きなことに集中するほうがいい、飽きないように手を変え品を変え目新しいもので次々興味をひいたほうがいいなど、さまざまかと思います。また、スケジュールなどが具体的に示されたほうが安心できるお子さんの場合は、スケジュールも示しておくこともおすすめします。座席選びやヘルプマークの使い方までいろいろ聞かせてくださりありがとうございます。皆さんの参考になったのではないでしょうか。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。