大黒様に供える「お歳夜の御膳」。山形県庄内地方の行事食は、豆と大根づくし
山形県庄内地方をはじめ、東北地方の各地では、毎年12月9日に大黒様のお歳夜(としや)という行事があります。大黒様の歳取りを祝う行事であり、農家では今年の収穫への感謝と来年の豊作を願い、商家では今年の収入への感謝と来年の商売繁盛を願い、豆と大根料理づくしの御膳を作り、ひと晩、家の中の大黒様を祀っているところにお供えします。そして、家の人たちも同じメニューを晩ご飯にいただきます。イラストを拡大してみてください~。
どんな御膳なの?
【ハリハリ漬け】
干し小真木(こまぎ)大根(直径5㎝ほどの細長い大根)を小口切りにし、青豆とあわせた漬物(数の子を入れることも)。日常でもお正月にも食べます。
【納豆汁】
現在は「納豆汁の素」を使う家が多いのでサラッと系の汁。各家で一から作っていた頃はドロッと系の家も多かったとか。モダシ(ナラタケ)というキノコを入れると、最高によい出汁が出るという人多し! 「お酒をドバッと入れると味がよくなる!」と地元の方。
【ハタハタの田楽】
ハタハタは漢字で“鰰”つまり「神の魚」です。大黒様のお歳夜の時期とも重なる11月末~12月は産卵期で、海面近くにあがってきます。だからか、子孫繁栄の願いを込めて供えます。「でも、おいしいのは産卵期で脂が落ちる前の11月中のハタハタなんですよ」と、地元で会う人会う人に言われました。
【黒豆なます】
肌が黒くなるまで日焼けをし、手にマメができるほど働けるようにと食べる一品。ゆでた黒豆を酢と砂糖に漬けておくとピンク色の液になり、それを大根おろしに混ぜます。
【まっか大根】
“まっか”とは、二股に分かれたものを指す方言。大黒様は大の餅好きで、餅を食べすぎて腹痛をおこして歩いていたら、川で大根を洗っている女性に出くわす。「(消化のために)大根1本ください」と大黒様がお願いすると、二股の大根を折って分けてくれたという話に由来します。
12月9日は大黒様がお嫁さんを迎える日ともいわれて、まっか大根は大黒様のお嫁さんだという説も……!
【おこし】
そのまま食べられる炒り米(生米を炒ったモノ)の場合もあります。
ほかに【黒豆おこわ】【黒豆の煮物】【御神酒(おみき)】が入ります。
この日のスーパーは……「大黒様セール」
12月9日に地元のスーパーへ行くと、大黒様のお歳夜の食材セールが絶賛開催中。そのままお供えできる御膳セットまである! 料理は買ってきたものであっても、お供えする文化が今も根づいていること自体がとっても素晴らしい♪
取材・文・イラスト・写真=松鳥むう
松鳥むう
イラストエッセイスト
離島・ゲストハウス・民俗行事・郷土ごはんを巡るコトがライフワーク。著書に『トカラ列島秘境さんぽ』『粕汁の本 はじめました』(ともに西日本出版社)、『むう風土記』(A&F)などがある。