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90年代を席巻した【8センチCD】が復活!きっかけはゴールデンボンバーとサカナクション?

Re:minder

2019年08月21日 サカナクションのシングル「忘れられないの / モス」発売日

そもそも短冊CDって何?


1990年代に大流行した、直径8センチのCD&長方形のパッケージで知られるCDシングルを覚えているだろうか? 2025年で誕生から37年。七夕飾りの短冊のような見た目であることから “短冊CD" とも呼ばれ、最近テレビや新聞など様々なメディアで取り上げられて流行の兆しを見せている。なぜに? どうして? 今回はその人気復活の秘密を紐解き、2025年現在の短冊CDがどうなっているかを掘り進めていきたい。

日本では1988年2月21日に日本で初めてリリースされた8センチCD。バブル真っただ中の当時、菊池桃子「青春のいじわる」や桑田佳祐「悲しい気持ち」をはじめ、約70タイトルがリリースされた。6月には早くもCDシングルはレコードのシェアを上回り、1989年の後半にはほとんどがCDシングルのみのリリースに切り替わっていく。

ちなみに、日本に先駆け世界で最初にCDシングルを発表したのは “音のフロンティア”、フランク・ザッパ御大だ。1987年に海外で3インチCDと呼ばれる「ピーチズ・エン・レガリア」をリリース。当時のCDプレーヤーにはもちろん8センチ用のアダプターは装着されておらず(国際規格統一前なので)、発売元のライコディスクが作ったとされる独自のアダプターが付属として売られたそうだ。

J-POPの時代!1990年代はCDシングル隆盛期


初期のCDシングルは、CDトレイが真ん中からパキッと割れるようになっており、さらにコンパクトな形になったものだが、その後、折らずに縦の形状を活かしたデザインが主流となっていく。1990年代に入るとアナログ7インチレコードの発売は終焉を迎え、CDシングルが爆発的に売れ始め、J-POPという総称が市民権を得ていく。そしていよいよミリオンセラーが頻発する黄金時代がやってくるのだった。

いわゆる長戸大幸プロデュースによるビーイング系(B'z、ZARD、大黒摩季など)や、小室哲哉ファミリー(trf、globe、華原朋美など)、沖縄アクターズスクール系(安室奈美恵、SPEEDなど)らが、ヒットチャートを席巻。その後、テレビ東京系バラエティ番組『浅草橋ヤング洋品店』が輩出したモーニング娘。やジャニーズ系(SMAP、KinKi Kidsなど)が追随した。

CDシングル衰退期~その後時代はマキシシングルへ


だが、絶頂期は長くは続かなかった。CDシングルの売り上げには陰りが見え始め、1998年を過ぎるとミリオンセラーが減っていく。奇しくも1998年は宇多田ヒカルのデビュー年。彼女のデビューシングル「Automatic」は8センチとマキシシングルの両方でリリースされており、ここから時代が移っていくのが読み取れる。

結果、短冊CD仕様での最後のミリオンヒットは1999年3月発売の「だんご3兄弟」となった。そんな風に8センチCDシングルの黄金時代もまた終わっていった。栄枯盛衰。その後、2000年代前半まで短冊はリリースされたものの、半ば以降は急速にアイテム数が減少し、2005年〜2022年までのリリース数はほぼ1ケタ。いつの間にか廃れていったのだった。

2010年代にゴールデンボンバーとサカナクションが短冊リリース!


そんな無風状態の中で短冊CD愛を発信するアーティストがいた。ゴールデンボンバーとサカナクションだ。

▶ ゴールデンボンバー「Dance My Generation」
発売日:2013年1月1日
誰もがすっかり8センチCDを忘れていた時期に、あえて新曲「Dance My Generation」(初回限定盤)を短冊型シングルで発表して話題を呼び、オリコン週間ランキング1位を獲得。フロントマンの鬼龍院翔氏は “90年代のディスコユーロビートがコンセプトでアレンジも浅倉大介氏に依頼した。出せたら面白いし、自分が短冊CDが好きだったので” と語っている。

▶ サカナクション「忘れられないの / モス」
発売日:2019年8月21日
両A面シングル。アルバム『834.194』から先行リード楽曲となった「忘れられないの」とドラマ主題歌となった「モス」を両A面シングルとして急遽リカット。80年代の音楽・カルチャーに影響を大きく受けた2曲ということで、あえて80年代当時普及し始めていた8センチCDシングル、パッケージも当時同様短冊型を選択。山口一郎氏はSNSに “8cmシングルは僕等の青春だから" と投稿している。

2023年には “短冊CDの日” が誕生!


このサカナクションのCDシングルに触発されたのが『こだわりのCDプレス プレスミー』代表の木田亮介氏だった。“いつか出してみたかった” という山口一郎氏のSNS投稿を読み一念発起。2022年7月からCDシングルを作れるサービスを発表し、小ロットで受注生産をスタートさせた。するとそこから輪が広がり、多くの8センチ愛好家がいることや、8センチシングルオンリーDJイベントが開催されていることが分かってきたという。同好の士は日本中にたくさん散らばっていたのだった。

そして2023年には、七夕の7月7日を “短冊CDの日” と銘打ち、“CDシングル文化の継承と発展を目的に、令和の世の中で活動するアーティストの音楽を短冊CDでリリースし、そのアーティストの活動と、CDショップを盛り上げていこう” をコンセプトに国内レーベルやCDショップと一緒に販売イベントを初開催した。

2023年には大滝詠一の「幸せな結末」(1996年)の復刻など61作品をリリース。また翌2024年には1995年の大ヒットシングル、H Jungle with t「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント~」の復刻や、初短冊CDとなる大瀧詠一プロデュース「ナイアガラ音頭 EP」を筆頭に、ジャンルレスの新譜作品を発表した。俄然ファンだけでなくメディアの注目度も一気に高まっていく。

“短冊CD37周年勝手に応援委員会” とは?


また、“短冊CDの日" に先駆けてアンダーグラウンドなインディーレーベルからも8センチシングルに応援の矢が放たれる。2023年2月21日、8センチCDシングルがリリース35周年を迎えるにあたり、それを勝手にお祝いしようと有志が集まって4タイトルを発表したのだ。それが “短冊CD周年イベント” だ。今年は37周年目、もちろん2月21日に全10タイトルの発売が決まっており、リリースをニッチなファンが手ぐすね引いて待っている。今回はその中から個人的激推しの5作品をご紹介しよう!

▶︎ TAMAYURAM(まゆたん × ルカタマ)「She’ll -あの子が世界を赦すまで-」(なりすレコード)

郷拓郎がプロデュースを手掛けた女性ツインボーカルユニット。ちなみにまゆたんとはあの “マサ子さん" のボーカリスト。表題曲はグランジっぽい曲調で、イントロは某ハッピーマンデーズを彷彿させる90’s感満点のギターサウンド。透明感あふれる2人のコーラスがクセになりそうだ。

▶︎ ルカタマ「女優志願」(なりすレコード)

2020年よりソロで活動し、昨年はイタリアで7インチレコードを発表した強者アイドルが、加藤和彦のソロアルバム『あの頃、マリー・ローランサン』から名曲をカバー。バカンス風味のゆるゆるスカに弾むボーカルが流れゆく。カップリングはまさかの飯島真理「愛・おぼえていますか」(1984年)の直球カバー。これもトノバン作品か!

▶︎ 3776「17歳はパーフェクトエイジ」(なりすレコード)

富士山ご当地アイドル3776(井出ちよの*ミナナロ)のアルバム『The Birth and Death of the Universe through Mount Fuji』からのシングルカット第2弾。幻想的なアヴァンポップとプログレッシブなサウンドが絡み合う、ロックなのになんだか太陽みたいにポジティブな不良少女白書。

▶︎ ニャー♡ウェイヴ「レーダーマン」(レベレベレーベル)

令和のニューウェーブパンクの真打ちが、1987年の戸川純バージョンで知られる「レーダーマン」をカバー!(オリジナルはハルメンズ)。イヴにゃんローラーコースターのアイドルちっくなKAWAII&パワフルボーカルで超戸川純的エキセントリックシャウトを展開する。いや、これはすごい!

▶︎ 能ある鷹は爪を隠す「まよいまよまよ牛久大仏」(dapple)

令和版 “武田鉄矢 & 芦川よしみ” の爆誕か?! 鷺ノ宮史郎 & 小日向由衣による奇跡のユニットがぶちかますネオデュエット歌謡がここに。ピコピコテクノをバックに牛久大仏というご当地ソングを哀切豊かに披露する。ホイッスルが効いてます。

2025年、果たして短冊CDの快進撃はどこまで燃え広がるか! 乞うご期待!

【短冊CD37周年記念企画10作品が2/21同時発売!】

短冊CD勝手に応援委員会(インディーレーベル有志)が贈るシティポップからプログレまでが揃った全10作品。アーティストが表現するパッケージ作品のひとつとして短冊CDを一緒に楽しみましょう!

▶ 3776「17歳はパーフェクトエイジ」
▶ MCあんにゅ「らなうぇいしんぎんにゅ」
▶ TAMAYURAM「She’ll -あの子が世界を赦すまで-」
▶ ルカタマ「女優志願」
▶ ニャー♡ウェイヴ「レーダーマン」
▶ 能ある鷹は爪を隠す「まよいまよまよ牛久大仏」
▶ Tnaka「満点ガール」
▶ 杉本清隆「春風 FREEDOM」
▶ V.A.「BLUE TENTION」
▶ 叶芽フウカ「young/adult のスラッシュを外せるか?」


参考文献:ディスク百合おん監修「短冊CDディスクガイド」(DU BOOKS)


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