【青春18きっぷおすすめ旅】札幌発2泊3日、いまへと続く北海道1万年の縄文文化を辿る(函館本線・室蘭本線ほか)
およそ1万5000年前から2000年前。森や海、川などで食料を確保し、1万年以上も定住生活を続けた日本の縄文時代は、世界的に見てもユニークな文化。「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、そんな縄文人の生活と精神文化が伝わる貴重な遺跡として、2021年に世界文化遺産に登録された。その一部の遺跡をめぐってきた。
「札幌発2泊3日、いまへと続く北海道1万年の縄文文化を辿る」のルートはこちら!
【1日目】
札幌駅→千歳線・室蘭本線・函館本線→落部(おとしべ)駅(泊)
【2日目】
落部駅→函館本線→森駅(泊)
【3日目】
森駅→函館本線→札幌駅
【1日目】札幌駅→落部駅 縄文文化にふれる旅へ
縄文時代と聞くと、原始的で不便でつらい生活を想像してしまうが、遺跡を見て回るほどに、もしかして豊かで幸せだったのでは?と思えてくる。
祭祀をとおした高い精神性や広範囲で交易を行っていた跡、漆やヒスイ製品の製作技術の高さ……。世界遺産にも登録されたこれらの文化を、ただ原始的というのは安直すぎる。そんな縄文時代の痕跡にふれられる旅を案内しよう。
高台に広がる「北黄金(きたこがね)貝塚」の集落跡では、貝塚や竪穴住居の復元展示が見られる。こちらの貝塚は、単なるゴミ捨て場としてではなく、役目を終えた道具をあの世に送る役割も果たしていたと考えられている。
「消費、廃棄ではなく看取る文化。自然に感謝して無駄使いをしない、いまでいうSDGsの実践がなされていたようです」と学芸員の永谷幸人(ながやゆきひと)さん。「遺跡からは、縄文人がいきいきと暮らしていたことが伝わってくるんですよ」と笑顔。思わず、わかります!と強く同意してしまった。
「高砂(たかさご)貝塚」の貝塚も同様に使われていたようだが、北黄金にはない土偶や副葬品も出土している。なかでも配石遺構の上で見つかった亀のような土偶は、さらにその下に3つの土器が埋まっていたそうで、副葬品ではないようだがいったいどういう意味があるのか……。
気になって学芸員の澤野慶子さんに尋ねると、「葬送儀礼が複雑化したと考えられていますが、遺跡には正解がないんですよね。なので自由に想像して楽しんでほしいですね」。
【東室蘭駅】「イタンキ浜」キュッと鳴く絶景の砂浜
歩くとキュッキュッと音が鳴る鳴砂の砂浜。砂に石英が含まれているなどいくつかの条件を満たすと鳴るといわれている。地球岬や断崖絶壁を見渡す絶景スポットで、晴れた日は波が引いたあとの砂浜に景色が映り美しい。
☎0143-23-0102(室蘭観光協会)
見学自由
北海道室蘭市東町3
JR室蘭本線東室蘭駅から車10分
【黄金駅】「北黄金貝塚」かつて祭祀の場だった北海道最大級の貝塚
海を見下ろす“一等地”に広がる集落跡。貝塚のそばに立つ『北黄金貝塚センター』では、祭祀の場としての役割も果たしていた約7000~5500年前の貝塚の復元展示を見ることができる。世界史や日本史との比較もでき、気温の変化も記された永谷さん手作りの縄文1万年年表が楽しい!
9:00~17:00、12月1日~3月31日休。無料
北海道伊達市北黄金町
JR室蘭本線黄金駅から車3分
北黄金貝塚情報センター
☎0142-24-2122
9:00~17:00、12月1日~3月31日休。無料
北海道伊達市北黄金町75
【洞爺(とうや)駅】「入江・高砂貝塚」時代が違う2つの遺跡を同時に楽しんで
貝塚館を狭んだ両脇にある約3800年前の入江貝塚と約2800年前の高砂貝塚。海を望む低い丘の上に位置している。貝塚館ではイノシシの牙や土偶など小さな5つの出土品の展示が見どころ。いずれも両史跡を特徴づける貴重なものだ。
入江貝塚
貝塚展示は9:00~17:00、12月1日~3月31日休。無料
北海道洞爺湖町入江
高砂貝塚
見学自由、12月1日~3月31日休。無料
北海道洞爺湖町高砂町
入江・高砂貝塚館
☎0142-76-5802
9:00~17:00、月(祝の場合は翌日)休。無料
北海道洞爺湖町高砂町44
JR室蘭本線洞爺駅から徒歩15分
【落部駅】『パシフィック温泉ホテル 清龍園』地下深くから自噴する自家源泉
落部駅から落部川沿いの道道を10kmほど走った先にある木々に囲まれた温泉宿。地下120mから自噴する98度の自家源泉を惜しみなくかけ流している。夕食は卓上で炊き上げる釜飯ほか、季節の味覚が味わえる内容。
☎0137-67-2011
1泊2食1万1700円~
日帰り入浴は11:00~20:00、無休(繁忙期は変動あり)。600円
部屋数:12室
泉質:ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉
北海道八雲町上の湯162-1
JR函館本線落部駅から車13分
【2・3日目】落部駅→森駅、森駅→札幌駅 縄文時代の人々の高い精神性を学ぶ
想像、それはスマートフォン検索でなんでもわかる時代だからこその醍醐味!
次に訪問した『函館市縄文文化交流センター』の学芸員の前田正憲さんも、「大胆な仮説ですが」と、シャチ形土製品についてこう語ってくれた。「ディテールがあまりにも正確なので、縄文人がシャチの子殺しによって浜に上がった子のシャチを模したのでは?」。その熱く語る様子が楽しそうで、こちらまでワクワクした。
同センターには夭逝(ようせい)した子の足形を保管した足形付土版が展示されており、縄文人の心の温かさや来世を信じる死生観を知ることができた。また土器など、道具に施された模様からは美意識が感じられる。こうした精神性の高さは、文明として成熟していることの証なのでは。
現代の便利さを否定する気は微塵(みじん)もないけれど、その豊かな心は見習いたい。みなさんも私たち人類の大先輩・縄文人にふれ、何かを感じ学び取る旅を!
【函館駅】「垣ノ島(かきのしま)遺跡・大船(おおふね)遺跡」遺構や出土品から想像力を働かせて!
盛土遺構が見られる約9000~3000年前の垣ノ島遺跡と、深さのある竪穴住居跡が展示された約5500~4000年前の大船遺跡。垣ノ島遺跡に隣接の『函館市縄文文化交流センター』では、ほの暗くスタイリッシュな演出で地域の出土品を展示している。
垣ノ島遺跡
9:00~17:00(11~3月は~16:00)、無休。無料
北海道函館市臼尻町416-4
函館市縄文文化交流センター
☎0138-25-2030
9:00~17:00(11~3月は~16:30)、月(祝の場合は翌平日)と毎月最終金休。300円
北海道函館市臼尻町551-1
JR函館本線函館駅からバス1時間30分の垣ノ島遺跡下下車、徒歩7分
大船遺跡
9:00~17:00(11~3月は~16:00)、無休。無料
北海道函館市大船町575-1
JR函館本線函館駅からバス1時間40分の大船遺跡下下車、徒歩10分
【小樽駅】『伊勢鮨 駅中店』小樽駅構内でサクッと蝦夷前(えぞまえ)
サーモンの昆布締めなど本店で取り入れている江戸前の要素も踏襲しながら、新鮮な魚介を生のまま握る“蝦夷前”もしっかり楽しませてくれる。立地柄、できたてをサクッと食べてほしいとイクラとウニは海苔にのせて手渡し。
☎080-2873-3391
11:00~14:30LO・16:30~18:30LO、水と第1・2火休
北海道小樽市稲穂2-22-15
JR函館本線小樽駅構内
【函館駅】函館産にこだわったプリンをお土産に!
取材・文=孫田二規子 撮影=松浦靖宏
『旅の手帖』2024年7月号より