そらる、「みんなと一緒に新しいなにかを見つけたい」という思いで巡った全国ホールツアーで得た気づき ソロでは初となる日本武道館公演をレポート
SORARU LIVE TOUR 2024 -telescope-
2024.6.29 日本武道館
歌い手でシンガー・ソングライターのそらるが、2024年5月から6月にかけて全国6都市を巡るホールツアー『SORARU LIVE TOUR 2024 -telescope-』を開催。ここでは、ツアー最終日である6月29日(土)に行われた、東京・日本武道館初ワンマン公演の模様をお伝えする。
のぞいた望遠鏡レンズの先に、どんな景色が広がっているのだろう。ファンタジックなオープニング映像と牧歌的なSEにそんな期待を膨らませていると、草花の装飾が施されたステージ中央の扉が開き、遊牧民を想起させる衣装をまとったそらるが登場。客席から大歓声が上がり、そらるのイメージカラーであるブルーのペンライトが大きく揺れる。
混じりけのない聖なる美声に心をつかまれた1曲目は、そらるとまふまふによるユニット・After the Rainの「テレストリアル」だ。「今日は最高の1日にしよう!」と言ってそらるが見せた笑顔からは、2022年7月に開催された『SORARU LIVE TOUR 2022 -青空とメルヒェン讃歌-』以来、約2年ぶりとなるバンド編成のツアーを存分に楽しんでいることがうかがえる。
一転、ロックなモードに切り替わったのは「幻日」。赤が映える派手なライティングの下、そらるがステージを左右に移動したり拳を振り上げたりしながらエモーショナルな歌声を響かせれば、高まらないはずがない。
「ソロでは初めてなんですけど、After the Rainで一度立たせてもらって以来、7年ぶりに武道館に帰ってきました! 今回は『telescope』というタイトルを掲げて、みんなと一緒に新しいなにかを見つけたいな、という想いを込めてここまでツアーをまわってきました。その集大成となる今日、みんなになにか伝えられたらいいなと思っています」
<早く引き金を引いてよ>でドキっとさせて、ハイトーンで圧倒した「アイフェイクミー」。その歌声でよりいっそうの痛みと哀しみをまとわせた「ひともどき」。歌詞に合わせ衣装の裾をヒラヒラさせ、客席にマイクを向けたりもした「バレリーコ」。叙情的な歌声、ささやいた<ごめんな>が忘れがたいものとなった「悋気な惑星」。そらるのライブは、どうしたって感情が忙しい。
「去年は15周年でオーケストラと一緒にライブをやらせていただきまして、今回は16年目のライブツアーとなります。節目の次の年、ツアーが始まる前は不安もあったんですけど、励まして盛り上げてくれるみなさんのおかげで楽しめています。ありがとうございます」
そう感謝すると、どんな苛烈な運命にも抗うという凛とした強さをたたえた「銀の祈誓」へ。久々のライブ歌唱となった「ドリームレス・ドリームス」。ステージ上段の椅子に腰かけあまりに優しい愛をあふれさせた「花と君と」。アンニュイな中に艶っぽさもしのばせた「ダーリン」。そらるは本当に表現の引き出しが多いとあらためて思う。
ツアー途中から始まったという“ご当地メニューを食べる”企画で東京名物⁉の和風ハンバーグ、鶏のトマト煮、から揚げを一口ずつ食べて和ませたかと思えば、「きみも悪い人でよかった」をきっかけにファルセットも美しい「ナイティナイト」、圧巻の生歌に瞬きを忘れた「ノンブレス・オブリージュ」と、まだまだ心を揺さぶってくるそらる。
さらに、バンド陣のインストゥルメンタルからドラマティックにつなげた「海中の月を掬う」。観客とのコール&レスポンスも幸せに満ちていた「愛言葉III」。変拍子もロングトーンも耳に心地よい「Good Morning Polar Night」。着替えた着物テイストの衣装もよく似合う。
「次の「オーロラ」が最後の曲になります。見たことがないもの、見てみたいものって人によってさまざまで、自分が見てみたいものはなにかと考えたら、それはオーロラでした。普段、オーロラは極点に近い地域まで3〜4日かけて移動して、それでも見られる確証はないもの。なのに、5月には数十年ぶりに日本各地で低緯度オーロラが観測されたりもしました。「オーロラ」を投稿した直後に、そんな偶然があったわけです。みんなも、すごく会いたいけど会えない人、見てみたいけど見られないもの、手に入れたいのに手が届かないもの、きっとあったりすると思うけど、いつもは遠くにあるものが急に近づいてきてくれるようなことって、人生で時々起こるんですよ。こうして武道館でライブができて、これだけたくさんの人が観に来てくれることなんかもなかなかないすごいことだと思うし、そういうことに気づけたっていうのが、今回のツアーの一番の収穫です。いやー、そらる選手もMCがうまくなりましたね(笑)」
何度も頷いてしまう説得力ある言葉が導いた本編最後のナンバーは、壮大なロックナンバー「オーロラ」。そらる自身が書いた歌詞に描かれているのは、自問自答の末に追い求めていたものはずっと隣にあったことに気づき、<君>と共に<次>へと力強く歩みだす姿。そらるとオーディエンスの強い想いが織りなすオーロラは、息をのむほど美しかった。
「ユーリカ」で華やかにスタートしたアンコールでは、オーディエンスと一緒に写真撮影も。東京公演限定の「地球をあげる」で観客の魂を浄化したかと思うと、「昨日(武道館で開催した前夜祭にて)やった曲の中で、どうしても後悔している曲がある」と言い出し、リコーダーを手にしたそらる。「リコーダーってどこから音が出てるのかわからない」と不安(?)をのぞかせつつ、「ミュージックスタート!」の掛け声で「強風オールバック」へ。歌い終わったそらる自らの採点は、前日より10点高い50点。しかし、脱力気味な歌もリコーダー演奏もクラップも、ファン的には満点だったに違いない。
そして、オーディエンスの一体感あるコールを浴びながら最後に届けたのは、「ワンダー」。リスナーにとってそらるの歌声は、やはり救いであり希望だ。なお、この日「次のライブは「ワンダー」を歌わずにいろいろな曲を届けられたらいいなと思っています」と明かしたそらる。あれこれ想像しながら、期待を膨らませながら続報を待とう。
文=杉江優花
撮影=笠原 千聖、加藤 千絵