【ADAM atの新CD「The Creation of ADAM」】 ロックのカタルシスが横溢
静岡新聞論説委員がお届けするアート&カルチャーに関するコラム。今回は、1月29日発売の鍵盤楽器奏者ADAM at(磐田市)のメジャー10周年記念アルバム「The Creation of ADAM」を題材に。
2015年1月21日 に「CLOCK TOWER」でデビューしたADAM atのベスト盤は、インスト曲を集めたDisc1とボーカル入りの楽曲を収録したDisc2の2枚組。10年間にリリースした9枚のスタジオアルバム、2枚の企画盤からファン投票で選ばれた楽曲を中心に全26トラックを収録した。
一聴して感じるのは重心の低さ、低音の圧の強さである。ベスト盤ではあるが、特にDisc1は全体の半分に当たる8曲が新録。「六三四」「MONOLITH 2021」「Echo Night」と続く冒頭3曲はベースのうねりが強く耳に残る。ロックのカタルシスが横溢している。
ADAM atの音楽性を説明する上で欠かせない「ロック」のニュアンスは、Disc2でも強調されている。ツー・バスの高速リズムと流麗なピアノが共存する「Silent World feat.KYONO, Ryu (Ryu Matsuyama)」、「ザ・メロコア」という表現がぴったりの「定時で帰ろう feat.TOTALFAT」、メタルバンドSKINDREDのボーカリストが見事なデス声を聞かせる「ケイヒデオトセ feat.Benji Webbe from SKINDRED」といった、ゴリゴリの楽曲が続く。
そんな楽曲群に差し込まれる「サタデーナイトフルット feat.コヤマシュウ from SCOOBIE DO」は、ワウギターと小粋なピアノが絡む グルーヴィーなソウルナンバーで、耳に心地良い。ラストの「シャイン☆センゲン feat.きのホ。」は京都の5人組アイドルとの共演。ラップを交えた変化球的な楽曲は、ADAM atの「来た球は全て打ち返す」スタンスをよく表している。
ADAM atはライブで得られる「高揚感」を常に工夫し、追求してきたアーティストだ。10年間の音源の集合体である本作は、その実験と成果の軌跡である。
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