世界に広がれ、ABE CUPの環~ 阿部一二三さん
ファッションデザイナー:コシノジュンコが、それぞれのジャンルのトップランナーをゲストに迎え、人と人の繋がりや、出会いと共感を発見する番組。
阿部一二三さん(Part 2)
1997年、兵庫県神戸市生まれ。パーク24所属の男子66kg級柔道家。2018年の世界選手権で妹の阿部詩選手とともに世界王者に輝き、東京2020オリンピックでも兄妹W金メダル。昨年行われたパリ・オリンピックでは見事2連覇を達成しました。
出水:6歳から柔道を始めたそうですが、きっかけは?
阿部:僕はTVを見て面白そうだなと思って始めた、と言ってるんですけど、もともと両親は身長そんなに高くなくて、階級の競技がいいんじゃないかと思った父親が「柔道どう?面白そうだろ」と煽って、それに僕も乗せられたというか。
JK:でも柔道着を着るとその気になるじゃないですか。近くに習いに行ったの? それとも学校で?
阿部:近くの警察に習いに行ったんですけど、行ったはいいんですけど、小学生でも6年生とかはすっごい大きいんですよ。それが怖くて、道場に行ってもずっと泣いてて。それで父が兄に「お前も一緒に行ってやれ」って。
JK:ふつうだったらお兄ちゃんがやってて弟がついていくのに、逆ですね。いくつ違うんですか?
阿部:ふたつです。お兄ちゃんもセンスがあって。でもお兄ちゃんはいまいち柔道が好きになれず。道着って固いし、肌が擦れるんですよ。それが嫌だったらしくて小学校6年生で辞めちゃいました。
JK:でもそれがずーっと続いてオリンピックまでまっすぐ行ったわけだから、お兄ちゃんも嬉しいでしょうね。
出水:柔道では早いうちから頭角を現したんですか?
阿部:いやいや、小学校のころは強くなくて、女の子にも負けて悔しくて。強くなりたくてトレーニングしました。でも結局その女の子には1回も勝ててないんです。最高引き分けですね。でも負けてばっかりだったので、引き分けでも喜んでました(笑)
JK:今はその子のほうが悔しいですよ! 妹さんはすんなりと?
阿部:妹はずっと強かったですね。3歳違いで、どこにいっても「センスは詩のほうがあるな」ってみんなに言われて・・・なんでそんなことばっかり言うんだろう、俺のおる前で言わなくてもいいのに、って(^^;)
JK:それは悔しいわね。でも最終的に金メダルとったら全部帳消しですね! 悔しいのが全部溜まって金メダル!
阿部:はい! 溜まってましたね(笑)
JK:まだ若いんだけど、ご自分の人生のマサカは?
阿部:あんまり言ったことないんですけど、大学4年生で海外で試合してるとき、準決勝の試合で左手の親指になんか違和感を感じて。ぱって見たら、親指が90°反対を向いてて・・・
出水:ひぇぇぇぇぇ!
JK:痛くなかったの?!
阿部:痛くなかったんですよ。 なんかブラブラ違和感するなぁと思って、ぱっと見たら90度曲がってて。とりあえず自分で戻したんです。戻った大丈夫、と思ったら全然ぐらぐらで、襟をつかみに行くと当たるじゃないですか。その試合は15回ぐらい親指ぱかぱかしてました。試合はなんとか無事勝って、決勝進出。
JK:山下選手もそういうのありましたよね。
阿部:柔道家はみんなあります。でも僕は大きいケガがあまりなくて初めてぐらいだったので、ビックリしちゃって。結局脱臼して靭帯が切れてた。試合中のケガはそのぐらい。僕の中では一番びっくりしたケガでした。
出水:それだけ試合中はアドレナリンが出てるってことですね(@w@)この番組で一番痛いマサカでしたね(^^;)
JK:ケガすると精神的にマイナスですよね。一番の敵ですね。
阿部:トレーニングも練習もできない。気持ちも下がってしまうし・・・オリンピック前はまさにそうでしたね。ケガさえなければ大丈夫、って。
出水:一二三選手は詩選手と一緒に、小学生を対象にした「ABE CUP」を主宰してますが、どんな大会ですか?
阿部:今は小学生の柔道の大会自体がけっこう減っていて、全国大会もなくなってしまって。それに僕たちの時もそうでしたけど、現役の選手と会う機会がなかなかない。そういう大きな夢とか目標があってこそだと思うので、そういう場所を作ってあげたいなと。全国から募集しているので、全国の選手と戦える。ABE CUPを目標にしてくれる子がいたらうれしいです。
JK:子どもたちにしてみれば、金メダルを獲った選手を目指そう!となりますよね。小学生からやらないと目指せないものね。何人ぐらいでやるんですか?
阿部:今回は6年生だけで300人でした。
JK:6年生だけで300人も?! その中で強い子はやっぱり目立つの?
阿部:目立ちますね。みんな頑張ってるし、頑張ることが大切だと思うんですけど、強い子はもう出来上がってる。
出水:エキシビションもやったそうですが、お子さんたちの反応はいかがでした?
阿部:やっぱり小学生に技を見せるのが一番反応いいですよね! ずっとニコニコして「ワ~ッ!スゴイ!」みたいな。子どもに夢を与えられたらいいなと。自分自身の夢でもあるんですが、今後はABE CUPを海外でも開催したい。ABE CUPで予選をして、優勝した子を招待して、フランスでもABE CUPをするとか。
出水:一二三選手は神戸出身ですよね。
阿部:震災の時は生まれてないです。生まれる2~3年前。でも映像とか写真だったりとか残ったり、父親が消防士なので、すごい大変だったとは聞いてます。もう30年、そんなにも時間が経つのかと思いますね。
出水:地元の人々も神戸出身の阿部選手が活躍しているのは力強いと思います。
阿部:もう復興はしたと思うんですけど、僕たちが柔道で神戸の街を盛り上げていけたらいいなと思いますね。神戸に帰って、神戸でも何かやりたいなと思っています。
JK:ぜひ武道とファッションで何かやりましょう! 神戸エキゾチックですもんね。個人的に、柔道以外にやってみたい夢はありますか?
阿部:柔道以外だと、経験として、海外に2~3年行きたいなと思ったり・・・ヨーロッパ、イギリスとか。柔道とか教えられたらプラスになるし、向こうでもABE CUPしたいです。正直どこか1つじゃなくて、いろんな国を1か月ずつ転々としてもいいのかなって。
JK:やってみたらいいじゃない! 動けばそうなりますよ! 世界各国で次の阿部選手を育ててください!
(TBSラジオ『コシノジュンコ MASACA』より抜粋)