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640年の歴史の新たな始まりに立ち会う ― 東京藝術大学大学美術館「相国寺展」(読者レポート)

アイエム[インターネットミュージアム]

相国寺の承天閣美術館が開館し40周年。それを記念する「相国寺展」が東京芸術大学大学美術館で開催中です。相国寺から何を思い浮かべますか? 2016年、東京都美術館で若冲展が開催され、相国寺の高僧、大典顕常が若冲の才能を見いだしたことが紹介され「若冲ゆかりの寺」として広く知られるようになりました。


相国寺 会場パネルより


相国寺は各時代を通じて芸術家を育て、数々の名作の誕生を導いています。寺院ゆかりの若冲が描いた鹿苑寺の障壁画を紹介します。


鹿苑寺金閣の若冲壁画

京都で有名な金閣寺ですが、大本山である相国寺の塔頭であることは歴史や美術の愛好家にはおなじみです。鹿苑寺(金閣寺)の大書院に、若冲が50面の障壁画を描きました。40歳で家督をゆずり画業を本格的に始めた4年後、44歳のことです。写真は大書院の一番奥、格式が高いといわれる一之間の《葡萄小禽図》です。


《鹿苑寺大書院障壁画 一之間襖絵 葡萄小禽図》 伊藤若冲筆 江戸時代 宝暦 9年(1759) 鹿苑寺蔵


この障壁画の裏側は二之間で、障壁の裏面には《松鶴図》が描かれています。ガラスケースに入った状態で部屋の様子が再現されており、表裏を同時に見ることができる貴重な機会です。


《鹿苑寺大書院障壁画 二之間 松鶴図》伊藤若冲筆 江戸時代 宝暦9年(1759年) 鹿苑寺蔵


大書院の位置関係はCGによる配置復元で示されています。内部を散策するような動画が上映され、大書院を歩きながら鑑賞しているかのようです。赤い矢印の方向に移動しながら立体的に体感ができます。


鹿苑寺大書院障壁画50面 CGによる配置の復元


四之間の《双鶏図》も出品されています。無名だった若冲の力を見抜き、相国寺が所蔵する中国絵画の模写の機会を与えた大典顕常、その期待に見事に答えた若冲。今の若冲ブームは相国寺にあるといえるかもしれません。


《鹿苑寺大書院障壁画 四之間 双鶏図》伊藤若冲筆 江戸時代 宝暦9年(1759年) 鹿苑寺蔵


鹿苑寺 百鳥図

相国寺は禅が連綿と受け継がれ、什物とともに継承されてきました。貴重な品々が今に伝わります。鹿苑寺の百鳥図は、中央に優美な鳳凰の姿が描かれ、その周囲を数々の鳥たちが囲みます。鳳凰は百鳥の王とされ皆が従ってきました。


《百鳥図》伝辺文進筆 中国・明時代 15世紀 鹿苑寺


鳥だけでなく桐や牡丹など、生きとし生けるものが幸せに暮らす楽園のようです。そこには未来永劫、見る者が幸せに導かれるようにという願いが込められています。

鹿苑寺の屋根の上にも鳳凰が掲げられ、永遠の命と権力の象徴、 戦乱のない京の平和を祈るシンボルとされていました。副題の「鳳凰がみつめた美の歴史」が心に染み入ります。これまで受け継がれた相国寺の文化をこの先、200年、500年と長きわたり引き継いでいくための知恵や力を授けてくれているようにも感じました。


令和の詩画軸

室町時代、詩と画が競演する詩画軸が多く制作されました。2025年、相国寺の新たな美の歴史が始まります。相国寺管長有馬賴底師による賛、東京藝術大学学長日比野克彦の画による詩軸画の合作が制作されました。


令和の詩画軸 賛 相国寺派管長有馬賴底師、画 東京藝術大学学長 日比野克彦


過去から現在、そして未来への橋渡しとして、この展覧会の意義を後世に伝えるプロジェクトです。文化、伝統の継承は守るだけでなく常に革新していくことだと言われます。相国寺640年の歴史の新たな始まりに立ち会える瞬間でもあります。歴史の生き証人として立ち会ってみませんか?

[ 取材・撮影・文:コロコロ / 2025年3月27日 ]


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