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多摩で多くの作品を生み出した「太宰治」特集

TBSラジオ

東京の多摩地域にお住まいの方、出身の方もそれ以外の方にも一緒に番組を楽しんで欲しいという番組。
MCは土屋礼央さん(国分寺市出身)&林家つる子さん(八王子市の大学出身)。

今週は、「多摩と文学」ということで三鷹市で数々の作品を発表した作家・太宰治を特集。「太宰治文学サロン」の学芸員・吉永麻美さんに、太宰の作品と三鷹、太宰の誕生日である「桜桃忌」(6月19日)、「太宰治文学サロン」について伺いました。

多摩で多くの作品を生み出した「太宰治」特集

土屋:さっそくゲストの方をご紹介です。「太宰治文学サロン」の学芸員、吉永麻美さんです。お願い致します!

太宰治文学サロン吉永さん:初めまして。

土屋:まず、吉永さんのプロフィールのご紹介をお願いします。

つる子:はい! 吉永さんは広島のご出身。大学卒業後、会社勤めをしながら学芸員の資格を取得。その後、三鷹市スポーツと文化財団の学芸員にとなり、太宰治文学サロンなどを担当されています。

土屋:「太宰治さん」がいることで多摩地域は文学の地域と、われわれは決めましたので。多摩の方が誇りになれる話を伺えたらと思います。まずは、「太宰治文学サロン」がどんな所なのか、教えてください。

太宰治文学サロン吉永さん:はい。2008年に「三鷹市」が開設した「太宰治」と「三鷹市」についての情報・交流の場所です。2022年にリニューアルして、現在は「太宰治」に特化したブックカフェに生まれ変わっています。ボランティアガイドがここでしか知ることのできない「太宰治」の暮らしぶりなどを案内してくれます。

土屋:実は僕は、「太宰治文学サロン」にはJ-WAVEのロケで行かせてもらって、中からレポートしたことがあるんですよ。とても落ち着いた佇まいで。僕は「太宰治」のことをあまり知らなかったんですけど、ここでいろんなことが知ることができて、すごく興味が湧きました。

太宰治文学サロン吉永さん:ありがとうございます。あの頃とは様変わりしているので、ぜひまたお越しいただければと思います。

太宰治と三鷹

土屋:まず、そもそも「太宰治」さんが「三鷹市」とどういう関係だったのか、聞かせてください。

太宰治文学サロン吉永さん:「太宰治」は生まれは、現在の青森県五所川原市なんですが、作家生活のほとんどを「三鷹市」で過ごしているんです。そのため、「三鷹市」は“太宰が亡くなった地”ではありますが、逆に太宰が生きてそこで作品を残したということで、“太宰の生きたまち・三鷹”というスローガンのようなものを掲げています。

土屋:“太宰の生きたまち”、その通りですよね。「太宰治」さんはいつくらいから「三鷹市」に来られたんですか?

太宰治文学サロン吉永さん:昭和14年9月1日に「三鷹村」の住人となりまして、“下連雀113”の借家にずっと住み続けるんですね。亡くなる昭和23年6月まで9年間、『斜陽』『走れメロス』『人間失格』『ヴィヨンの妻』など、皆さんがご存知の代表作のほとんどは「三鷹」で書かれています。

つる子:へえ! 9年間の中にぎゅっと詰められているんですね!

土屋:僕は「太宰治」と一緒だなと思っちゃいました。

つる子:え!?

土屋:僕の誕生日は9月1日なんですよ。太宰治さんが「三鷹村」に転居したのが9月1日ですよ! ほぼ生まれ変わりです!

つる子:(笑)。

太宰の「女性独白体」

土屋:そもそも吉永さんがなぜ「太宰治文学サロン」の学芸員になられたんですか? きっかけはあったんですか?

太宰治文学サロン吉永さん:私は本当は作って見てもらう芸術家を目指していたのですが、才能が無いなということに早めに気付いて。ロバート・キャパという写真家の写真展に入った時に、芸術家のお仕事を紹介する仕事がしたいとで会社を辞めて学芸員の道へ進むことに決めました。偶然、新宿の博物館に採用して頂いて、そこで特別展をさせて頂いたのが林忠彦という写真家の写真展で。林忠彦は太宰治の有名な銀座のバー「ルパン」で撮影された写真を撮影した写真家で。写真に何が映り込んでいるのかということで作品を読んでみようと改めて読んでみると、どっぷりハマってしまって。そんな最中に「三鷹市」の「太宰治文学サロン」の学芸員の募集が出ていて、受けてみたら受かったという。

土屋:太宰作品の好きなところは?

太宰治文学サロン吉永さん:特徴は“文体”ですね。細かく「、」で区切ってあって、それを黙読していると語りかけてくるような文体を作っているんですね。

つる子:なるほど。

太宰治文学サロン吉永さん:一番人気なのは“女性の独白体”と言われているもので、女性が1人語りでその日の出来事を語っているんですね。時に、自分が普段抱いている思いなどを太宰がスパッとセリフに込めてくれていたりして。若い方々は、自分の言いたいことを太宰が代弁してくれているということで、どんどん心酔していく方がいるみたいですね。私もそれに近い感じがありました。

土屋:僕は『走れメロス』しか読んだことが無いんだけど、『走れメロス』をパロディにして『走れオロス』という、写真の動画で10分くらいの映画みたいな作品を作ったの。だからちゃんと読んで、一字一句それのパロディを文節で作って。「太宰治」さんは口語体だから読みやすいですよね?

太宰治文学サロン吉永さん:そうですね。あとは、時代の古さを感じないところもありますね。

土屋:そういう色褪せない作品を作った場所が、多摩の「三鷹」だという。多摩じゃなかったらこういう作品も生まれて無かったかもしれない。

太宰治文学サロン吉永さん:おっしゃる通りだと思います。

土屋:おお、ラッキーパンチだ(笑)。

つる子:どういうことですか?

太宰治文学サロン吉永さん:「太宰」は、都心の文壇の中枢から距離を取ることで自分の文学を確立してきているので。すごくしたたかに、“自分は不流行な作家だ”と言ってちょっと自分を下に落としながら書いているようなものがすごく多いので、そこもすごく共感を呼ぶポイントだと思います。

土屋:おお、昭和の前半から多摩は23区に比べて少し厳しい状態だったりするんですねえ。反骨精神でいうと、オレもそこは影響を受けている! この番組がどうしたら23区に対抗できるかという、僕の中の“リトル太宰”が(笑)。

つる子:(笑)。

世界60ヵ国で翻訳されている太宰作品!海外ファンも三鷹へ!

土屋:「太宰治文学サロン」にはいろんな方が来られるんですか?

太宰治文学サロン吉永さん:最近は海外の来館者が必ずいらっしゃいまして。「太宰」は世界60ヵ国で翻訳されているという世界に羽ばたいている作家なんですね。自分の国の母国語で読んだ方が太宰が書いた言語で読みたいということで、日本語を勉強して、そこそこお話ができる状態で「太宰治文学サロン」に来てくださるんです。

つる子:すごい情熱ですね! 

土屋:「太宰治文学サロン」には外国人の方は毎日来られるんですか?

太宰治文学サロン吉永さん:「三鷹の森ジブリ美術館」があるというのも「三鷹市」の魅力の一つで、それと連動して良い効果になっていますね。毎日いらっしゃいます。

つる子:「三鷹市」は「太宰治」さんと関係が深い所がたくさん残っているんですよね? いくつか教えてください!

太宰治文学サロン吉永さん:はい。必ず訪れていただきたいのは「太宰治展示室」。“三鷹の此の小さい家”という「三鷹市」が開設した施設があります。これが「三鷹市美術ギャラリー」の中にあって、太宰の自宅を実寸で再現した展示室です。ここでぜひ、「太宰」の直筆の原稿とか油絵とかをご覧いただいて、そこで「太宰治文学サロン」に来ていただいてブランティアガイドから色々と情報を交換して、太宰の仕事場だった「中鉢家跡」とか、残念ながら撤去はされてしまったのですが「陸橋」もまだ少し面影があるのでその辺りもぜひお楽しみいただいて。そして、「禅林寺」に「太宰治」のお墓があるのでぜひお墓参りに来ていただければと思います。

土屋:これは半日くらいで回れますか?

太宰治文学サロン吉永さん:じっくり回りますと、だいたい3時間半くらいかかります。

太宰は三鷹暮らしが居心地良かった

土屋:「太宰治」さんは「三鷹」に来てずっと作品を書いたということは、居心地が良かったと言えそうですね? 「太宰治」さんにとって「三鷹」はどんな町だったんですか?

太宰治文学サロン吉永さん:借家暮らしだったので、気に入らなければいつでも引っ越せるわけなんですけど、戦後も「三鷹」に戻ってきて、流行作家になってからも亡くなるまで一度転居していないんです。一男二女を授かって、おうちは6畳、4畳半、3畳の間取りですごく狭いんですね。それで駅前に仕事部屋を構えながら作品を書き上げていくんですけど、「太宰」の味方になって仕事部屋を提供してくれるような人たちもいたので、応援してくれる人もいまして。あと、戦中なので「太宰」にとっても辛いこともたくさんあったんですね。その中で牧歌的な風景の残る郊外の「三鷹」はすごく過ごしやすかったというのもあると思います。

つる子:「三鷹市」の人たちにとって「太宰治」さんはどのような人なんですか?

太宰治文学サロン吉永さん:「太宰治文学サロン」が開設された当時は、生活用水である「玉川上水」に入水した、しかも愛人と一緒にということで、地元の人で良いイメージを持っていない方もいらっしゃいました。ただ、「三鷹駅」前に「太宰治文学サロン」が開設されて、「太宰治展示室」も出来て、毎日若い人たちが「三鷹」を訪れてくれて街に活気が溢れてくると、「太宰治」に対するイメージもすごく変わってきました。この時代の作家の作品を全部読もうと思ったら図書館に行って全集を借りなければいけない。活字も難しい中で、「太宰」は夏目漱石と並んで全作品が今でも文庫化されて書店に並んでいて、気楽に手に取ることができるポピュラーな作家なので、そういった「太宰治」の力を日々感じさせられたのが、私のように勤めている人間であり、町の人たちじゃないかなと思います。

土屋:あと、「太宰治」さんってビジュアルもかっこいいよね!

つる子:そうなんですよ!

土屋:吉永さんはいかがですか?

太宰治文学サロン吉永さん:自分の好みではないですけど、身長が175,6センチと当時にしては長身で、ちょっと物憂げでというのでカッコよかったと思います。

6月の「桜桃忌」には全国の太宰ファンが三鷹へ!

土屋:あと、ここに何かありますが・・・これはなんですか?

太宰治文学サロン吉永さん:「太宰治」の郷里、青森の津軽クッキーです。

つる子:文庫本のパッケージになってますね!

太宰治文学サロン吉永さん:はい、これは「太宰治」の『津軽』という作品の初版本を形どったもので、中はりんごファイバーのクッキーが入っています。普通は左から『津軽』と書くところ、右から『軽津』となっていて初版本に忠実に作ってあるのでとても真面目な商品です(笑)。

土屋:「太宰治文学サロン」に行くとこういうものをあるんですか?

太宰治文学サロン吉永さん:はい。あと「Dazai COFFEE」も自分でドリップしてお好きな濃さでお楽しみいただけます。持ち帰りもありますし、店内でもお召し上がりいただけます。

土屋:そろそろお時間なのですが、お知らせはありますか?

太宰治文学サロン吉永さん:6月は、太宰ファンが全国から「三鷹」に集まってくる月になります。19日は「太宰」の生誕日で「桜桃忌」と呼ばれて、「太宰治文学サロン」にも昨年は1日に400名を超えるお客さまが来てくださいまして。

土屋:あそこはそんなに入る規模ではないですよね?

太宰治文学サロン吉永さん:はい。聖地となっております。あと、6月6日から「太宰治展示室」の方で資料展も始まりまして、「三鷹市」が購入した『雀』という直筆の原稿を全ページ公開とか、太宰の油絵だとか、「三鷹市」が持つ「太宰治」のお宝を一堂に公開しておりますので、ぜひお立ち寄りいただければと思います。

土屋:今週のゲストは、「太宰治文学サロン」の学芸員、吉永麻美さんでした。ありがとうございました。

太宰治文学サロン吉永さん:ありがとうございました。

(TBSラジオ『東京042~多摩もりあげ宣言~』より抜粋)

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