幻の給食メニュー「ソフト麺焼きそば」をたどると…意外な真実と挑戦【北海道・苫小牧】
皆さんが抱えている「なぜ?」「どうして?」を調査する、HBC「もんすけ調査隊」。
幻の給食「ソフト麺焼きそば」って知っていますか?
父の思い出を娘が調査依頼。
消えたメニューの裏に隠された真実と高校生たちの挑戦に迫ります。
「お父さんが給食で食べたソフト麺の焼きそばが美味しかったと言っています。私は食べたことがないので、調べてください」
そんな依頼を寄せてくれたのは札幌市在住のドーミンさん(12)。
給食の人気メニューと言えばソフト麺。
ミートソースやカレーをかけるのが一般的ですが、「ソフト麺の焼きそば」なんて聞いたことがありません。
そこで、依頼者の父親、HBC報道部の藤田忠士記者(42)を直撃!
「娘と『美味しいよね』と話したら、『何それ?』と言われ、娘が関心を持った」
どうしても気になった娘さんが、父親には内緒で調査を依頼していたのです。
藤田記者の記憶を30年ほど遡ってもらうと…
ソフト麺の焼きそばは、柔らかくて短い麺。
モチモチとした食感と、甘い味付けが特徴だったといいます。
「クラスの中で、みんな『おかわりしたい!おかわりしたい!』って」
それほどの人気がありながら、なぜ依頼人は食べたことがないのでしょうか。
早速、札幌市教育委員会の学校給食課に聞いてみると…
「ソフト麺を使った焼きそばは、札幌市の給食では提供していない」
なんと、札幌市の給食では20年以上、“ソフト麺の焼きそば”はおろか、通常の焼きそばも提供されていませんでした!
「500食とか1000食とか大量調理をするので、作るのが大変なメニュー」
当時の焼きそばを再現してくれた!
そこで依頼者の父親が生まれ育った北海道苫小牧市を調べてみると、当時の焼きそばを再現してくれるというのです。
その焼きそばはとっても彩り豊か!
海老に豚肉、竹輪、グリンピースと、具沢山の焼きそばです。
しかし、そこには大きな記憶違いがありました。
苫小牧市・学校給食共同調理場の稲葉和宣場長によると「ソフト麺ではなく蒸した麺、蒸し麺です」というのです。
献立表にも『蒸し麺』と書いてあります。
インターネットのレシピサイトには、ソフト麺を使った焼きそばも存在しているのですが、なぜソフト麺だと勘違いしたのでしょうか。
稲葉和宣場長は「おそらく大量に調理する過程で麺が柔らかくなったことが、もちもちという記憶になっているのかと思います」と分析しています。
また、「甘み」についても竹輪や海老などの具材がもたらしたのでは…と推測します。
しかし実は、そんな苫小牧市でも2007年以降、蒸し麵の焼きそばの提供を止めたのだといいます。
一体なぜなのでしょうか。
衛生基準が厳しくなったきっかけが
1996年、大阪・堺市で発生した学校給食を原因とする集団食中毒。
病原性大腸菌O157に9523人が感染し、4人が死亡しました。
再発防止のため、当時の文部省は、翌年(1997年)、給食の衛生管理を強化。
食品の中心温度を75℃で、1分以上加熱することを義務づけました。
ただ、この加熱基準を満たせば、麺はどろどろになってしまうのです。
そのため、多くの学校給食から、焼きそばが姿を消してしまいました。
札幌市も同様の理由で、献立から外しているといいます。
ところが…。
小学生たちが「みそうめぇ」「ホッキ節おいしい」と絶賛の嵐!
実は、いまや幻の給食とも言える”焼きそば”を、復活させた人たちがいたのです。
それが苫小牧総合経済高校のマーケティング部です。
給食には、彼女たちが開発したご当地グルメ『苫小牧やきそば』を提供。
道産小麦「ゆめちから」100%の伸びにくい麺を使用しました。
もちろん、こちらも蒸し麺です。
さらに特産品の”ホッキ節”や地元野菜を使い、味噌味で仕上げています。
森梓部長(17)は「給食に出したことで、子どもたちから親に伝わり、『苫小牧やきそば』のソウルフード化につながると思ったことがきっかけです」
彼女たちは、7年前からお祭りやイベントで”苫小牧やきそば”を販売していて、より多くの人たちに知ってもらうため、給食での提供に挑戦したのです。
それにしても、どうやって基準をクリアしたのでしょうか?
森部長が「苦労した」と話すポイントがありました。
多くの人に「苫小牧焼きそば」を
「スチームコンベクションオーブンを使用して、麺を75℃以上にしてから、野菜と炒めて提供するというところが苦労した点」
10℃以下に保存された麺を、まず、スチームコンベクションオーブンで75℃以上に加熱。
その後、野菜などと炒めることで、加熱の衛生基準をクリア。
給食での提供が可能になったのです。
森梓部長は「多くの方々に『苫小牧やきそば』を食べてもらえるように、日々がんばっていきたい」と話していました。
依頼者によると「思い出の焼きそばはソフト麺ではなかったけど、優しい味で美味しかった」ということです。
実は提供できなくなったものはほかにも…
実は、苫小牧市の学校給食では、一時、こんな物も提供できなくなったそうです。
「フルーツ白玉」や「ヨーグルト和え」、「ゼリー和え」などは、10℃以下に温度管理をする必要があります。
ただ、対応できる冷却設備が苫小牧市には以前なかったため、一時、提供を取り止めたということです。
もちろん、現在は提供を再開しています。
学校の給食も時代ごとに変化しているので、家族で話してみると面白いかもしれません。
文:HBC報道部もんすけ調査隊
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年5月30日)の情報に基づきます。