「愛らしく愚かな人々がいっぱい登場します(ニッコリ)」日本公開目前『ミッキー17』5つのポイント解説!【ポン・ジュノ最新作】
これだけは押さえておきたい!『ミッキー17』 5つのポイント解説
アカデミー賞®主要部門制覇ほか世界の映画祭を席巻した大ヒット作『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督が贈る集大成作『ミッキー17』が、ついに3月28日(金)より日本全国で公開となる。
全世界に先駆けて公開された韓国では公開からわずか4日間で観客動員数が100万人を突破し、全米でもオープニング1位を記録。そんな『ミッキー17』の日本公開に備え、<これだけは押さえておきたい 5つのポイント>をご紹介。ぜひこの記事をチェックしつつ映画館に行こう!
① アジアが誇る天才監督! アカデミー賞®受賞『パラサイト』のポン・ジュノ最新作
2000年の初監督作『吠える犬は噛まない』で鮮烈デビューを果たしたポン・ジュノ。2003年の『殺人の追憶』では、殺人事件を追う刑事たちの捜査をサスペンスフルに描き韓国で500万人を超える大ヒットを記録。続く『グエムル -漢江の怪物-』(2006年)では、突然現れた怪物に娘を奪われた父と家族の奮闘を描き、初の国際的プロジェクト『スノーピアサー』(2013年)では、氷河期の地球を走り続ける”階級列車”を舞台に、最底辺の扱いを受ける主人公の最後尾からの決死の攻防を描いた。
その後も、巨大生物と少女の交流を通して現代社会の倫理や企業間の争いを浮き彫りにした『Okja/オクジャ』(2017年)、そして予測不能の展開で全世界を驚愕と興奮の渦に叩き込んだ『パラサイト 半地下の家族』(2019年)へと、ポン・ジュノ監督は常に進化を続けてきた。そんなポン・ジュノ史上最大のスケールで描かれる逆襲エンターテイメント『ミッキー17』の原作は、エドワード・アシュトンのベストセラー小説「ミッキー7」(早川文庫SF・刊)。人生失敗だらけでダメダメのミッキーを主人公に、これまで描いてきたエッセンスを凝縮し、さらにその上を行く集大成『ミッキー17』を完成させた。
② 原作「ミッキー7」が映画『ミッキー17』になった理由とは?
人生失敗だらけのミッキーが手に入れたのは、何度でも生まれ変われる夢の仕事、のはずが……それは身勝手な権力者たちの過酷すぎる業務命令で次々と死んでは生き返る任務、まさに究極の“死にゲー”だった!一発逆転のはずが、ブラック企業の“使い捨て”ワーカーとなってしまったミッキーには、地獄のような日々が待っていた。ポン・ジュノ監督はエドワード・アシュトンの「ミッキー7」について、“死んでは生き返る”ミッキーというキャラクターに魅了されたと語る。
小説を読んだだけですぐに魅了され、1ページずつ読んでいくうちに、さらに夢中になりました。なぜなら人間が“死んでは生き返る”という非常にユニークなコンセプトがあったからです。これは人間のクローンとはまったく違います。まるで人間をただの紙切れ、印刷する書類であるかのように、人間をプリントして再生しているようなものです。
またプロデューサーのチェ・ドゥホによると、監督は初期段階で「原作のタイトルは変更すると思う。彼がもっと死ぬところを見たいからね」と、映画化に当たってミッキーにさらなる試練を与えたと明かす。そんなわけで、原作ではタイトル通り“7回”のところ、映画のミッキーは17回もの過酷な任務に晒され“死んでは生き返る”ことになったのだ。
③「もう1人の俺」はどんな奴!? 2人のミッキーを若き名優が大胆に演じ分ける
ブラック企業のどん底で搾取され続け、ついに17号となったミッキー。そんな彼の前に、ある日、手違いで自分のコピーである18号が現れる。一見すると双子のようだが中身はまったくタイプの異なる2人のミッキーを見事に演じ分けたロバート・パティンソンの演技について、監督は「特にミッキー18に関しては、私が想定していた枠をはるかに超え、新たな次元にまで引き上げてくれました。撮影中も、彼は即興で面白いセリフやシーンを生み出し、作品に新しいエネルギーを吹き込んでくれました。本当に感謝しています」とコメントしている。
④ 労働者の“命”まで使い捨て! 現代社会のリアルな搾取構造を投影
『ミッキー17』は人々が別の星に行く映画ですが、たくさんの愚かな人々を描いた映画で、愚かな敗者たちの物語です。この映画には愛らしく愚かな人々がいっぱい登場します。
微笑みつつそう語るポン・ジュノ監督は、“使い捨てワーカー”として搾取され続けるミッキーと信頼できるパートナーのナーシャ(ナオミ・アッキー)、自分の得しか考えないブラック企業のトップ、マーシャル(マーク・ラファロ)と妻のイルファ(トニ・コレット)にイエスマンな取り巻き勢など、現在進行形の社会の状況を投影した人物を登場させる。
人生の《どん底》にいるミッキーの物語についてポン・ジュノは、「これは若者、労働者階級の人々の話です。無力な人が予期せずヒーローになる。普通の人が意図せず突然ヒーローになる話だと言えます。そして、彼がヒーローになる方法もユニークです。私は“現代の観客が見たいのはこういう話だ”と思いました」と語るとおり、今を生きるすべての観客に大いに共感される作品を完成させた。
⑤ 宮崎駿リスペクトが生んだ謎のモンスター「クリーパー」とは!?
もうひとつ『ミッキー17』で決して観逃せない存在が、謎のモンスター“クリーパー”だ。ポン・ジュノは、宮崎駿監督の表現には常に影響を受け続けていると語る。
宮崎駿監督はいつも生態系や自然、環境に対するテーマを描かれていますが、私も大きな関心を持っているテーマですので、動物やクリーチャーを表現する際には、宮崎監督の作品は尽きないインスピレーションの源になっていると思います。
そんなリスペクトの思いから、『風の谷のナウシカ』(1984年)に登場する“王蟲(オ-ム)”を彷彿させるクリーパーを誕生させたポン・ジュノ監督。このクリーパーたちにより、かつてない映像体験となった壮絶なクライマックスシーンには要注目だ。
全世界を驚愕と熱狂の渦に叩き込んだポン・ジュノ監督が史上最大のスケールで贈る逆襲エンターテイメント『ミッキー17』は、3月28日(金)より日本公開。