【福岡の繁盛店】フレンチと和食が融合する、旬を凝縮したコースに感嘆
面白い店が集まる六本松エリアの通りから少し入った草香江に、2022年にオープンした「楽味処 暖(らくみどころ だん)」。地元の人だけでなく、わざわざ遠方から訪れる人も増えているという話題の店に行ってきました。
こぢんまりとした店内は、黒や木目を基調とした落ち着いた雰囲気。カウンターとテーブル席が少し離れているので、大人はカウンターでゆっくりと、奥のテーブル席は子ども連れも気兼ねなく過ごせそうです。
穏やかな笑顔で迎えてくれた店主・前山洋一郎さんは、「ホテル日航」のフレンチ「セレブリテ」や高砂の海鮮居酒屋「匠」で腕を磨いた後に独立。こちらでは定番料理のアラカルトと創作系のコースを味わえます。
また店内の生簀にはアジやイカが泳ぎ、注文後に生簀から揚げてさばく刺身も評判。今年からスタートしたランチでは、生簀のアジを楽しめる期間限定の「活きアジづくし定食ランチ」(1600円)や「海鮮とろろ丼定食ランチ」(1900円)などを味わえる、魚好きの心を鷲掴みにするラインナップになっています。
コースは4400円、6600円、11000円があり、値段が上がるほどに創作度が高くなります。11000円は3日前まで、そのほかは前日までの要予約です。
今回お願いした6600円のコースはこんな感じでした。
前菜はクエと筍の酒盗クリーム、椀もの、車海老の活き造り、刺身3種、牛ホホ肉赤ワイン煮込みのパイ包み焼き、焼き魚はサワラの塩焼きのイクラとトマトソースのサラダ仕立て、揚げ物は白えびと菜の花のかき揚げにパルメザンチーズをかけたもの、肉料理は牛モモのローストに香味野菜のソース、鯛だしラーメン、デザート……という超充実の内容です。なかでも印象に残った3品をご紹介します。
まず「タイとホタルイカのあおさあんかけ」は、透き通るようなあおさのあんが風味抜群! しっとりほろりとしたタイ、旨味がつまったホタルイカ、何より昆布とカツオの繊細な味わいの出汁が絶品でした。
刺身3種のひとつで登場した「本マグロの生ハム」は、1週間塩漬けにした本マグロの中トロに季節のお浸しをのせた一品。まずマグロの塩味やオリーブオイルの豊かな風味がふわりと広がり、その後にツルムラサキの力強い土の香りがあらわれ、そして最後はまたマグロの旨味に戻るという、シンプルな見た目を裏切る味わい深さに驚きます。
そして3つ目の「牛ホホ肉赤ワイン煮込みのパイ包み焼き」は、焼きたてのパイをスプーンで割ると、なかから豊かな香りが立ち上がり鼻腔をくすぐります。2日かけて煮込んだ牛肉はとろとろでなめらか。牛肉の旨味が溶け込んだ濃厚な赤ワインソースは、体に染み渡るような味わいです。また菜の花のほろ苦さが、いいアクセントになっていました。
前山さんの経験を生かした和と洋が融合した料理は、一皿ごとに歓声をあげてしまう楽しさに満ちています。さらに11000円コースはお客さんのリクエストを叶えた超創作コースだそう。今度はそちらで予約したいな〜。
アラカルトも「ぶり白子春巻き」(770円)や「ヒラス生ハム」(660円)など、気になるものばかりでした。刺身は生簀の鮮度抜群のものと、熟成したものを両方楽しめるのだそうです。
「一夜干しには、活きがいいものを使いプリップリ食感を楽しんでもらっています。穴子もあえて骨が当たるくらいの大きいものを一夜干しすることで、骨ごとおいしく味わってもらえるようにしているんですよ」と前山さん。海鮮居酒屋時代に市場で買付けをしていた前山さんは魚の目利き。今は信頼する魚屋さんにお願いしていますが、沖縄の白身魚・タマンなどあまり知られていないけどおいしくて珍しい魚が入ってくることもよくあるそう。野菜も嘉穂郡のノガミファームから届く、無農薬の野菜を使うなど素材選びにも余念がありません。
「普通じゃ面白くないですから」と、創意工夫に満ちた料理で着実にファンを増やしている前山さん。静かな場所に佇む「暖」は、季節を楽しみに通いたくなるお店です。
楽味処 暖(らくみどころ だん)
福岡市中央区草香江2−7−20 楽味処 暖
090-9791-3459