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【8月15日は終戦の日】中高生にも読んでほしい、戦争と平和について考える本3選!

アットエス

静岡の老舗「吉見書店」竜南店の柳下博幸店長が紹介


静岡新聞社出版部、営業担当のアッキーこと秋田です。
8月に入り、暑い日が続きますね。8月15日は「終戦の日」です。終戦から79年が経ち、世界情勢が不安定な中、いま一度「戦争」を考える機会としてこの夏1冊の本を手に取ってみてはいかがでしょうか。

今回の「店長さーん!お薦めの本、教えてください」は、戦争がテーマのお薦め本を静岡市葵区にある老舗、吉見書店竜南店の柳下博幸店長に教えていただきました。恒例の「子育て世代に読んでほしい1冊」も後半に紹介します。
※価格は全て税込

1.「日ソ戦争 帝国日本最後の戦い」 麻田雅文(著) 中央公論新社

新書判、304頁、1078円


【あらすじ】 
日ソ戦争とは、終戦直前の1945年8月8日から終戦後の9月上旬まで、満州、朝鮮半島、南樺太、千島列島の各地で行われた壮絶な戦いのことである。
第二次世界大戦最後の全面戦争であり、玉音放送後に戦闘が始まる地域、武装解除後に襲撃される地域もあり、日ソ両国ともに戦後を見据えた戦争だった。米国のソ連への参戦要請から各地での戦闘の実態、終戦までの全貌を描いている。

【柳下店長のお薦めポイント】
ドキュメンタリー番組で特攻隊を特集していました。敗色濃厚なフィリピン戦線の打開策として、のちの軍神「関行男」大尉率いる神風特攻隊一番機が米護衛空母セント・ローに体当たりし撃沈。戦果を上げたことから非人道的作戦が常態化していきました。その後4千人近い人命と引き換えに特攻作戦が得たものは、正規空母撃沈0という現実。特攻=必ず死ぬ命令の非情さ。

日ソ戦争は、一度は終戦で途切れた気持ちを祖国が蹂躙(じゅうりん)されるのを防ぐために奮い立たせた闘いでした。戦争の理不尽さを最後に思い知る1冊です。日ソ戦争を題材にした本では「緑十字機決死の飛行」(岡部英一著、静岡新聞社発売)も終戦史として必読です。
 

2.「それでも日本人は『戦争』を選んだ」 加藤陽子(著) 新潮社

文庫判、512頁、990円

【あらすじ】 
日清戦争、日露戦争、日中戦争、太平洋戦争を通して指導者、軍人、官僚、さらには一般市民までもが国家を思い参戦することになった経緯を現代の中高生への講義から新たに見つめ直した日本近現代史。

【柳下店長のお薦めポイント】 
「なぜ戦争に負けたのか」について、これまで多くの書籍で言及されています。本書は見過ごされてきた「どうして戦争を選んだか」についてを、点ではなく線で捉えています。日中戦争から終戦までの8年間で日本の戦死者は230万人弱といわれています。死者の9割が1944年以降の死者であり、その半数が病死。その半数を餓死が占めたそうです。我々できることはあったのか?学生との質疑応答で分かりやすく「なぜ戦争に負けたのか」を考えられる良書です。

3.「卵をめぐる祖父の戦争」デイヴィッド・ベニオフ(著)、田口俊樹(訳) 早川書房

文庫版、360頁、990円

【あらすじ】 
「ナイフの使い手だった私の祖父は十八歳になるまえにドイツ人をふたり殺している」。作家のデイヴィッドは、祖父レフの戦時体験を取材していました。ナチス包囲下のレニングラードで生き延びた祖父の奇妙でスリリングな1週間が本人の口から語られる歴史エンターテインメント。

【柳下店長のお薦めポイント】
ドイツ軍包囲下のレニングラードで飢餓状態の中、大佐の娘の結婚式のために卵を探すことになったレフと口達者な美青年コーリャの冒険譚。苛烈な独ソ戦の中、卵を求めて逆境に抗う彼らの行く道はユーモアと希望に満ちています。食べたくないが非常に気になるのが作中に登場する、飢餓状態で生み出された食べ物。本の表紙を引きはがして製本のりだけを取り出し、煮詰めて棒状にして作る「図書館キャンディ」。厳しい状況に順応し前へ進む若者の過程が胸を打ちます。ラストが秀逸な傑作です。

今月の「子育て世代にお薦めの本」は?

続いて、恒例のおまけコーナー。店長が「子育て世代にぜひ読んでほしい」とお薦めする一冊も教えてくれました。
 

「へいわとせんそう」 たにかわしゅんたろう(文) Noritake(絵) ブロンズ新社

185✕185mm (絵本) 32頁 1320円


【あらすじ】
比べてみると、見えてくる。「へいわのボク」と「せんそうのボク」。では、なにが変わるのだろう。同じ人や物や場所を見開きごとに比べると、平和と戦争の違いが見えてくる。

【柳下店長のお薦めポイント】 
TVからは今も戦争をしている国々の映像が流てくる。辛うじて日本は平和を保っていますが、それがいつ崩れるかは誰も分かりません。だからこそ戦争の怖さ、平和の大切さを未来の世代に訴えかけていかなければなりません。この本を読み、戦争と平和の対比を見ることで、大人も子供もそのことを感じ取れる作品です。息子に「どうしたらせんそうはおわるの?」と聞かれて上手く答えられなかったあの日に読みたかった本です。

本を紹介してくれた柳下博幸店長

実は、柳下さんが店長を務める吉見書店竜南店は8月31日(土)をもって閉店します。今回、特別に柳下店長から読者の皆さんにメッセージがあります。

「平素より吉見書店をご愛顧いただき誠にありがとうございます。竜南店は1982年の開店以来、皆さんにお引き立ていただきましたが、2024年8月31をもちまして閉店することになりました。42年と半年の長きにわたってのご愛顧に感謝申し上げます。
竜南店閉店後も長田(おさだ)店は継続して営業いたしますので、今後とも吉見書店をよろしくお願いします」

私(秋田)も学生時代からよく通った馴染みの書店です。文具やコミックなど品揃いが豊富で店内にアイスクリーム店もあり、子どもと本を買った後はお決まりのアイスを食べて帰った思い出があります。閉店は寂しいですが、今後は長田店に足を運ぼうと思います。

<DATA>
吉見書店竜南店
住所:静岡市葵区千代田4-3-10
電話:054-246-2653
X: https://twitter.com/yoshimi_ryunan

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