子どもと考える「貯蓄や資産」の課題 「家族マネー会議」を人気「家計再生コンサルタント」が大公開!
6人の子どもを育てながら、家計再生コンサルタントとして多くの家庭の相談に応じる横山光昭さんは、「子どもは大切なパートナー」という考えのもと、月1回の家族マネー会議を実践しているといいます。そこで横山さんに、子どもとお金とのかかわり方についてお聞きしました。全2回の後編。
子どもが成人のころ定年パパの家庭の教育費 人気家計再生コンサルタントが解説6人の子どもを育てながら、家計再生コンサルタントとして多くの家庭の相談に応じる横山光昭さんは、「子どもは大切なパートナー」という考えのもと、月1回の家族マネー会議を実践しているといいます。そこで今回は横山さんに、子どもとお金とのかかわり方についてお聞きしました。
(全2回の後編。前編を読む)
子どもにかかる費用を数字だけで見ない
──前回は45歳以降でパパになった家庭の家計の見直しや、貯蓄の方法について伺いました。しかし実際に子育てをしていると、子どもの成長とともに教育方針が変わり、当初は考えていなかった中学受験や留学など、想定外の出費が必要という場面が多くあります。
横山光昭さん(以下、横山さん):はい。典型的なのは中学受験ではないでしょうか。「うちの子は公立でいい」と思っていたのに、子どもの成長につれて「やっぱり受験をさせたい!」と考えが変わることがあります。すると塾代が必要になってきます。あるいは、子どもが予想もしていなかった分野に興味を持ち始めて、習い事を始めたいと言い出すこともあります。
とはいえ、そういった変化はよくある自然なこと。ただ、気をつけなければいけないのは、子どもにかかる費用を数字だけで見てしまわないことです。
「教育費は最低でも1000万円かかる。さらにすべて私立だと2200万円はかかる!」と考えてしまうと、「3人は無理だな」「2人も厳しいかも」と、子育てをコストとして数字だけで見てしまうことになります。
確かに、費用を意識することは大切ですが、それだけで人生の選択を判断するのは違うと思うんです。
写真:beauty_box/イメージマート
予期せぬ出費は子どもを交えた話し合いを
──では、予期せぬ変化に備えてどのように対応すればよいのでしょうか?
横山さん:子どもの成長に合わせて段階を踏んでいくことが大切です。まず子どもが小さいうちは、親が教育費を含めた準備をしっかりと進めておく。そして、子どもが自分の意思や希望を持てるようになったら、一緒に考えていくようにしましょう。
教育費は親が出すものですが、それはあくまでも子どものためのお金です。だからこそ、本来は「子どもがどうしたいのか」という気持ちを大切にしてあげたい。そして、予期せぬ出費が必要になった場合も、親だけで悩まず、子どもを交えた家族全員で「どうしようか」と話し合っていくべきではないでしょうか。
オンライン取材中の家計再生コンサルタント・横山光昭さん。
横山さん:もちろん、親が一生懸命に貯蓄をしていても、子どもの夢をすべて叶えられないこともあります。そうした場合、賛否両論あるかもしれませんが、奨学金や教育ローンの利用も含めて、子どもと一緒に可能性を探っていくことは、私はありだと考えています。
もちろん、「借りられるから借りてしまおう」という安易な考えは避けるべきですが、子どもの将来のためにさまざまな選択肢を視野に入れて考えてみてはいかがでしょうか。
──横山さんのご家庭では、月に1回「家族マネー会議」が実施されているとお聞きしました。
横山さん:はい。長女が小学校低学年のころです。私と妻が生命保険の話をしているときに、たまたまリビングにいた長女が「保険って何?」と聞いてきたのが始まりでした。
横山さん:私が「何かあったときのために備えるお金だよ」と説明したところ、「そのためにお金を払っているんだ~」と、彼女なりに考えた答えが返ってきたんです。そうした反応がとても良いな、と。
我が家には6人の子どもがいますが、うち1人が結婚して家を出ており、現在は残る5人、社会人の3人に加え、高校1年生と中学1年生の子どもたちと私たち夫婦で、月に1回お金について話す機会を設けています。
ちなみに、家族マネー会議では、現金の貯金額だけでなく、投資でどれくらい資産があるのかもすべてオープンにしています。また、買いたいものがある場合は、家族内でプレゼンテーションを行い、みんなから許可を得られたら買うということにしています。家族の旅行先などもそうやって計画的に決めていますね。
写真:maroke/イメージマート
子どもに貯蓄額までオープンに話す
──貯蓄額までオープンにされているのには驚きです。
横山さん:日本の家庭ではお金の話をタブー視する傾向にありますが、子どもたちが家計の流れを知ることはとても大切なことだと私は思っています。実際の生活の中でお金がどう使われ、どう管理されているのかを知ることは将来の自立にもつながる。
例えば、水道代や携帯電話代など、普段子どもたちには見えづらい支出についても、「家族8人で水道を使うとこんなにかかるんだ」「携帯代って全員分払うとかなりの負担になるんだな」など、具体的な金額を知るとお金の大切さを実感できますよね。
ですから、我が家は子どもの大学の授業料の支払いも、子ども本人に現金を渡して自分で振り込みに行かせています。親がネットバンキングで簡単に払い込むのではなく、子どもが大金を持って、ドキドキしながら実際に銀行で手続きをすることで、「自分の授業料ってこれだけかかるんだ!」という実感が湧いてくるんですよ!
そういった体験を通じて、子どもがお金の価値を体感的に学ぶことはよいことだと、私は思います。
お金の話は小学3~4年生から
──子どもにお金の話を始める時期は、いつごろがよいのでしょうか?
横山さん:小学校3~4年生くらいになると理解できるようになると思います。それ以前でもお金の話はしていいと思いますが、まだ難しくて少しポカンとしてしまうかもしれません。
気を付けたいのは、子どもの前で話をする際は、雰囲気づくりを意識してほしいですね。これは聞いた話ですが、ある家庭では「家計について話し合いたいから集まって」と暗い表情で切り出したところ、子どもが「うちの家計はやばいのかなと」不安に思ってしまったそうです。
その結果、それまで何気なく行っていた回転寿司での外食でも、子どもが親に遠慮して食べなくなってしまったとのこと。お金の話は「明るく話をする」というのが、実は大切なんです。
私たちの家庭では「今月の収支報告をするよ」「これだけ貯まったぞ!」など、前向きな話題として家計を共有することを心がけています。そうすることで、子どもたちも不安を感じることなく自然とお金について考えられるようになると思います。
写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート
子どもも家計を共に考える大切なパートナー
──一方で、「子どもが外で他人に家計の話をしてしまうのではないか」という懸念もありそうですが。
横山さん:私たちの家庭では子どもたちも「大事なパートナー」として信頼しています。会社で言えば、大事な社員のような存在です。
たとえ子どもでも「立派な大人」として接して、信頼を前提に家計の状況を共有しているため、外で「うちにはこれくらいの資産がある」などと、軽率に話すことはないと考えています。むしろ、そのような行為は「ダサイ」「おかしい」と自然に感じているのではないでしょうか。
そして、こういったかかわりを通じて、子どもたちは自然と金銭感覚を身につけていると感じます。
決して無駄遣いしないというわけではありませんが、「かけたいところに、お金をかける」「同じものなら安いところで買おう」といった意識が育ち、お金の使い方を自然と考えられるようになっていると思います。
冒頭でお話をしたとおり、子育ての中ではさまざまな想定外の出費が必要になることがあります。
しかし、それは決して親だけで抱え込む必要はないと私は考えています。子どもを交えて家族でお金について話し合える関係を築いていく。そうすることで、お金の問題も家族で乗り越えていけるのではないかと思います。
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人生は計画どおりにはいかない──。
だからといって何も準備をしないわけにはいきません。想定外の出来事に備え、柔軟に対応できる基盤を整えておくこと。
そして、選択肢を広げるために、日本ではタブー視されがちなお金の話も家族全員で話し合い、協力し合える環境づくりがこれからの家計のあり方だと感じました。
取材・文/山田優子
(全2回の後編。前編を読む)
『月3000円からはじめる新NISA超入門』著:横山光昭(アスコム)
『50代でも間に合う新NISAとiDeCo』著:横山光昭(ワン・パブリッシング)
『収入減でも家計がラクになる貯蓄術 貯金は「夫婦の会話」で9割決まる!』著:横山光昭(東京ニュース通信社)