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開発進捗がマズい!「予定通りに進まない」時に有効な手立てとは?【連載Vol.2】

エンジニアtype

開発進捗がマズい!「予定通りに進まない」時に有効な手立てとは?【連載Vol.2】

エンジニア時代に知りたかった「開発現場の難所」突破のコツ

エンジニアとして経験を積んでいくと必ずぶつかる壁、それが「お客さまやメンバーとのトラブル」「業務が予定通りに進まない」の二つではないでしょうか。

この壁を突破しようとするときの悪手が「新たな人材を投入する」ことです。これらの問題は、例え人材が増えたとしても解決できることではありません。

では、どんな手が有効か。それは、既存メンバーがコミュニケーションスキルとドキュメンテーションスキルを向上させること」にあります。これらによって、飛躍的にプロジェクト達成度は向上していくでしょう。

なぜエンジニアにこの二つのスキルが重要で、どうすればスキルを向上させていけるのか。今回は、私のこれまでの経験を踏まえながら、紐解いていきたいと思います。

株式会社office Root(オフィスルート)
代表取締役社長
甲州 潤(こうしゅうじゅん)

国立高専卒業後、ソフトウェア開発企業でSEとして一連の開発業務を経験し、フリーランスに転身。国内大手SI企業の大規模プロジェクトに多数参画し、優秀な人材がいても開発が失敗することに疑問を抱く。PMOとして活動を開始し、多数プロジェクトを成功へ導く。企業との協業も増加し、2020年に法人化。さまざまな企業課題と向き合う日々。著書『DX時代の最強PMOになる方法』(‎ビジネス教育出版社)

目次

コミュニケーションスキルを磨く第1歩は、「他者と自分は違う」と認識することから「他人のフィールドに入っていく」経験を積むことがスキルアップにつながるドキュメンテーションスキルは「情報を正しく伝えること」に意味がある「智に働けば角が立つ情に棹させば流される」バランスを大切に!書籍紹介

コミュニケーションスキルを磨く第1歩は、「他者と自分は違う」と認識することから

とあるプロジェクトのPMOとして業務を行っていた時のことです。

「甲州さん、ちょっと相談いいですか?」と、20代のエンジニアBくんが私の元に訪れました。彼は社内のチームリーダーとして、メンバーたちの業務の進行具合を確認し、まとめる役割を担っています。そのチームには30代~50代と幅広いメンバーが含まれていることを私は知っていました。

「メンバー間のコミュニケーションがどうもうまくいっていない気がしていて。こちらが同じことを伝えても、エンジニアによって理解も返答もバラバラなんです」

彼の話を聞いて、私は「そこまで分かっているのなら、彼自身でこの問題は解決できる」と感じました。なぜならコミュニケーションの齟齬は、「エンジニアならこれくらいわかるだろう、できるだろう」という思い込みから始まっていることが多いからです。

「エンジニアであれば、この作業は1時間でできて当然」
「開発エンジニアなら、これくらいの難易度のプログラムは書けるはず」
「この程度の知識はさすがに持っているだろう」

などなど。

たとえ同じエンジニアでも、知識やスキルには個人差があります。そこに目を向けず、自分の常識で作られた「見えない思い込み」をしたまま業務を指示すると、物事の認識違いや開発上のミスにつながってしまうのです。さらにBくんの場合は、「同じ仕事をする社内のエンジニア」が相手ですから、なおさらその傾向は強くなります。

しかもリーダーという立場に立つ人間は、往々にしてプログラミングのスキルなどに長けている場合が多いもの。そのため例えば「Javaができる」という認識ひとつとっても、チームリーダーには「何も見ないで1000行くらいのプログラミングをすぐ書けるのが当たり前」「それができなければ勉強しておくのが当たり前」といった思い込み、暗黙の了解が培われてしまいやすいのです。「基本的なことはできる」と自分のスキルを捉えているメンバーとは、認識の差異が生じてしまうでしょう。

これはお互いを不幸にするノイズでしかありません。
大切なのは、まずはリーダーがそういった思い込みフィルターを外すこと
私は、新しいプロジェクトに入るたびに、まっさらな気持ちで現場に向かうようにしています。
さらには、必ずエンジニアの方々の経験やスキル、職歴などを拝見したうえで、一人一人に合った対応を行うようにしています。一見、時間がかかるように思いますが、こうした個別対応が結果的に「時短」につながるからです。

「他人のフィールドに入っていく」経験を積むことがスキルアップにつながる

「甲州さん、どうしたらコミュニケーションスキルをアップさせられますか?」と聞くBくんに、私は一つのポイントを伝えました。

「コンフォートゾーンを抜けて、いつもと違うメンバーの話を聞きに行こう」
このときやってしまいがちなのが、「社外で行われている勉強会に参加する」「趣味などのサークルに参加して、新たな人と出会う」ことです。

たしかに、プライベートでの人脈を広げるという意味では、有効な手段でしょう。

しかし、プロジェクト進行に必要なスキルは、やはり「仕事の場」でしか身に付きません。少なくとも私はそう思っています。
とはいえ、そういった機会を求めてあえて社外に目を向ける必要もありません。

例えば、普段は顔をあわせない他部署の社員に、話を聞きに行く。あるいは、部署を横断するプロジェクトがあれば、積極的に参加する。さらには、自社に売り込みに来たセールス担当者や取引先の人と話してみる。

これだけでも、「お互いをよく知らない相手との会話ではどんな話し方をすればいいか」「話す順番はどうすべきか」など、コミュニケーションの視点がかなり変わってくるはずです。

職場の人間関係を広げるというと、「飲み会の席で話す」イメージがあるかもしれませんが、その必要はまったくありません。多くの方が気付いていないだけで、仕事上のやり取りの中に、コミュニケーションスキルをアップするためのノウハウは山ほど眠っています。ぜひ、そこに意識を向けてもらえたらと思います。

ドキュメンテーションスキルは「情報を正しく伝えること」に意味がある

「エンジニアは、他人も自分と同じくらいのスキルレベルだと認識しがち」というお話をしましたが、これはコミュニケーションだけではなく、文章にも如実に現れます。

個人のスキルと同じく、物事の理解度も人それぞれ違うもの。自分だけが分かる言葉を並べた文章では、全ての人には伝わりません。また間違って欲しくないのは、ドキュメントは「ミーティングやヒアリングの文章をただ書いて伝えるもの」ではないということです。

理解度の異なるエンジニアたちに「情報を正しく伝える」こと。そして「正しいことを論理的にまとめる」、さらには「誰が見ても勘違いのないような文章にする」ことこそがドキュメントに必要な要素であり、それができて初めて「ドキュメンテーションスキルがある」と言えるのです。

これはエンジニアの業務である設計書の作成に直結します。このスキルがあれば、言った言わないのトラブル、やるべきことを忘れてしまって作業できない、メンバーの認識している情報がバラバラ……といった問題を未然に防げるでしょう。

こんな風に書くと、ちょっとハードルが高いことのように思ってしまいますよね。しかし、そう思う必要はありません。エンジニアが普段プロジェクトの中で書く文章は、何千人が読むようなものでも、ましてや文芸表現を求められるものでもないからです。

まずは、この三つを抑えてドキュメントを書いてみるようにしましょう。

1、いつ
2、どこで
3、何をすべきか

また、書いたドキュメントは上司や先輩などに適宜見せて、フィードバックをもらいましょう。

自分の文章の癖や悪い点に気付くよい機会になりますし、「もっとこう書いた方がいい」といったアドバイスのもと、自分のドキュメンテーションスキルを向上できます。

そして、チーム内で通じる文章が書けるようになったら、次は部署内で……というようにステップアップしていくことがカギとなります。つまり、ドキュメンテーションスキルもコミュニケーションスキル同様、社内で十分磨くことができるのです。

「智に働けば角が立つ情に棹させば流される」バランスを大切に!

私はドキュメンテーションスキルとコミュニケーションスキルに関して考えるとき、いつも、夏目漱石が書いた『草枕』の冒頭の言葉を思い出します。

”智に働けば角が立つ、情に棹(さお)させば流される”

これは、理屈だけでも人は動かないし、かといって感情だけで動いても物事はうまく進まない、ということを表したものです。まさに、エンジニアがプロジェクトを進めて行く間にも、こうしたことが何度も起こります。

優秀なエンジニアが完璧なプログラミングをしたとしても、コミュニケーションがなければ、プロジェクトは進まないでしょう。逆に、情熱ややる気だけがあって、やるべきことをやらない状態であっても、プロジェクトはうまくいきません。

コミュニケーションスキルと、ドキュメンテーションスキルはこれとよく似ています。片方だけできていても、それは意味をなしません。両者のスキルを身に付け、プロジェクトの進行に応じてバランスを取っていくこと。そして、社内にあるさまざまなスキルアップの「機会」に目を向け、自分をさらに磨き上げる「チャンス」に変えていきましょう。

冒頭にご紹介したBくんは、私のアドバイスをもとに経験を積み、今ではチームのまとまりを感じているといいます。本記事を読んでくださっている皆さんもまた、意識を少し変えただけで劇的に成長できるはず。活躍を期待しています。

書籍紹介

『DX時代の最強PMOになる方法』
著:甲州潤

▼こんなエンジニアはぜひお読みください。
・今の仕事に不満を持っていて、現状を変えたいと思っている
・給料をアップしたい
・エンジニアとしての将来が不安だ
・キャリアアップをしたいが、何をしたらいいかわからない
・PMOに興味がある
・PMOとして仕事をしたい

【目次】
第1章 一番稼げるIT人材は誰か
第2章 これからはPMOが1プロジェクトに1人必要
第3章 SEとPMOの仕事は何が違うか
第4章 稼ぐPMOになる7つのステップ
第5章 優秀なPMOとダメなPMOの見抜き方
第6章 PMOが最低限押さえておきたいシステム知識とスキル
第7章 システムは言われた通りに作ってはいけない
第8章 どんな時代でも生き残れる実力をつけよう

>>>詳細はこちら

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