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コロナ禍で増加「強迫性障害」とは?元モー娘。道重さゆみさんも公表し引退へ。専門機関に相談を

アットエス

繰り返す不安と確認。日常生活や人間関係への影響も

先日、モーニング娘。の元メンバー道重さゆみさんが夏に開催予定のコンサートツアーをもって芸能活動を終了し、引退することを発表しました。2023年末に「強迫性障害」と診断を受け、この病気とアイドルとしての活動の間で悩みや限界を感じていたそうです。

SBSアナウンサー影島亜美が、心理カウンセラー・公認心理師のイム・ソネさんに身近な心の病と対応の仕方について聞きました。
<目次>
・コロナ禍で増加…清潔へのこだわりが強迫行為に
・芸能人や公人が抱える「完璧でなければ」という強迫観念
・「否定しないこと」が接し方のポイント
・メンタル疾患は「寛解」がゴール
・パニック障害、解離性障害なども増加傾向

影島:道重さゆみさんが診断された「強迫性障害」とはどのような病気なのでしょうか?

イム・ソネ:不安障害の一つで、特にこの病では、気がかりなこと、強迫観念と呼ばれる不快なイメージや不安が頭から離れず、それを打ち消そうとする「強迫行為」を繰り返します。

例えば、外出時に「家の鍵を閉め忘れたのではないか」と思って引き返して確認し、しばらくするとまた「ベランダの鍵を確認していなかった」と思ってまた家に戻ってしまいます。人影が気になって、「この場所に何かあるのでは」と何度も確認してしまうケースもあります。

自分でも「やりすぎだ」と分かっているのにやめられないんです。何度も確認するから遅刻をしてしまうとか、時間通りに遠くまで行くことができなくて行動範囲がどんどん狭まってしまい、困っている方も大勢いらっしゃいます。

コロナ禍で増加…清潔へのこだわりが強迫行為に

イム・ソネ:コロナ禍で特に増えたのは、手洗いや消毒を徹底するあまり、手が荒れてしまっても「まだちゃんと洗えていないのでは」と石鹸や消毒液を使うのをやめられない方が増えました。頻繁に入浴や着替えをして強迫性障害になってしまった方もいらっしゃいます。

影島:自分で分かっていても、どうしてもやってしまう。やりすぎてしまう。つらいですよね。

芸能人や公人が抱える「完璧でなければ」という強迫観念

影島:タレントやアイドルとして活動していると一般人よりもっと強い強迫観念を抱えてしまうこともあるのでしょうか?

イム・ソネ:そうですね。アイドルや公の場に立つ職業の方は、人からどう見られているかを強く意識されているのではないでしょうか。完璧であろうとする気持ちが強かったり、プロ意識が高いほど、「ダメな自分を許せない」「嫌われてしまう」という不安を常に抱えていると思います。

影島:人の評価を気にしすぎるのはつらいですね。そして、近くにいる家族や友人にも影響を与えてしまいますよね。

イム・ソネ:そうなんです。強迫性障害は特に、家族や身近な人を巻き込んでしまうことが多いです。「確認しなきゃ」「きれいにしなきゃ」という強迫観念を回避するため、家族や身近な人にも一緒に何度も確認してほしいと思ってしまいます。周りが協力しないと不安が怒りに変わり、暴言や暴力につながるケースもあります。

一度協力するとその後は言いなりになりがちで、要求がエスカレートすることもあります。対応しきれなくなると患者さんの怒りが増し、悪循環に陥ってしまうので、「ちょっとこれは」と思ったら、すぐに精神科を受診することをおすすめしています。人間関係のバランスが崩れてうつ病を併発し、生きているのがつらいと感じてしまう人も多いです。不安障害というのはそれ一つで終わらないことが多いので、とても心配です。

影島:神経質な性格だけではないということを理解するのが必要ですね。

「否定しないこと」が接し方のポイント

影島:身近に「強迫性障害かも?」と思う人がいた場合、どのように接していくのがよいでしょうか。

イム・ソネ:「やりすぎだよ」「そこまでする必要ないよ」と言いたくなるのですが、まずは否定的にならないでほしいです。本人も分かっています。行動の抑制よりも、私たちカウンセラーは「そうしないと落ち着かないんだね」「不安なんだね」と気持ちに寄り添っています。

まずは受け止める姿勢が大事で、その上で「あなたが心配で、一緒に寄り添いたいから医療機関を受診してみよう」と伝えるとよいと思います。

影島:周りの人が症状を理解し、寄り添うことが大切なんですね。

メンタル疾患は「寛解」がゴール

影島:強迫性障害は完治する病気なのでしょうか?

イム・ソネ:メンタル疾患はその人の気質が原因になっていることが多く、一度発症すると再発しやすいんです。そのため、完治ではなく、症状が和らいだ状態を指す「寛解(かんかい)」を維持することがゴールとされています。症状が戻ってくる場合もあるので、早い段階でリハビリを行って、日常生活を取り戻していくという考え方です。

パニック障害、解離性障害なども増加傾向

影島:パニック障害やパーソナリティ障害、解離性障害なども最近聞くようになりました。メンタルに不調を抱えている人は増えているんですか。

イム・ソネ:芸能人が病気を公表するケースも多くなりましたよね。パニック障害に関しては、思春期の10代から20代前半、30代でも多くかかりやすくなっています。

社会の複雑化や多忙感、SNSでの誹謗中傷、他人と比べてしまうこと、劣等感や不安感が多くなっていることなどが背景にあると感じています。

影島:メンタルの不調を回復させるためにはどうしたらよいのでしょうか?

イム・ソネ:まず「いつもと違うな」という自分の小さな違和感に気づくことです。まだ我慢できると思わず、早めに誰かに相談することをおすすめします。がんばることを美徳にしてしまいがちですが、誰かを頼ることは決して弱さではないです。

精神科やメンタルクリニックを受診したことがない方は勇気がいるかもしれませんが、特別なことだと感じずに今の自分を客観的に見てもらい、「取扱説明書」という安心材料をもらうぐらいの気持ちで受診することをおすすめします。

影島:いつもと違うなという違和感があったらすぐに受診することが大事ですね。イム・ソネさん、ありがとうございました。

※2025年2月4日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。​

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免責事項今回お話をうかがったのは……イム・ソネさん
心理カウンセラー・公認心理師。9才と6才の子を持つ、二児の母。十数年の教員経験を生かして、延べ2000人の子育て世代の悩み相談を解決へ。アメリカ発祥の感情コントロールメソッド「アンガーマネジメント」を専門とした講座を多数開講中。企業や学校教職員向けのマネジメント研修講師も務める。

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