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アニメ業界の“光と影” 市場は3621億円で過去最高 その裏で6割の制作会社が業績悪化

Shizuoka

写真はイメージ

■アニメ制作市場4%増加 ライセンス事業収益がけん引

アニメ業界の“光と影”が明らかになった。昨年の国内アニメ制作市場は過去最高を更新した。一方、売上が利益に直結していない制作会社の割合が高く、構造的な問題が浮き彫りとなっている。

ラーメン市場も過去最高と好調 課題は”1000円の壁”

民間の調査会社・帝国データバンクによると、昨年の国内アニメ制作市場が前年比4.0%増の3621億4200万円となり、過去最高を更新した。テレビや映画、動画配信サービス向けの需要の好調が続き、特に元請制作会社のライセンス事業収益が市場全体を押し上げた。

しかし、アニメーター不足や人件費・外注費の高騰といった課題が深刻化しており、売上高が伸びても収益性が低下する企業が目立つ。調査によると、元請・グロス請制作会社の6割が「業績悪化」に直面しており、成長の裏で厳しい現実を突きつけられている。

昨年の制作会社1社あたりの平均売上高は12億3200万円で、2000年以降の集計で最高を更新した。大型作品の連続クール放送や劇場版のヒット、配信サービスでの過去作の再配信やリバイバルなどが寄与し、増収傾向が続いている。こうした勢いを受け、今年は初めて4000億円に到達する可能性があると見込まれている。

■外注費やオフィスコスト高騰 制作会社の6割が業績悪化

ただ、売上高の拡大が必ずしも利益に直結しているわけではない。元請・グロス請制作会社では平均売上高が27億4900万円と過去最高を更新した一方、赤字に転落した企業の割合は34.5%に達し、前年より9.5ポイント増加した。「減益」と合わせると業績悪化の割合は60.0%に上り、コロナ禍直後以来の高水準となった。

背景にあるのは、人材不足による制作遅延や外注費の高騰、自社雇用拡大に伴う人件費やオフィスコストの増加だ。売上高の伸びを上回るコスト負担が収益を圧迫している。人気シリーズの劇場版などで版権収入を得た一部の会社は大幅な増収を実現したが、業界全体としては「利益なき繁忙」に陥る傾向が強まっている。

下請として原画や動画、CG制作などを担う専門スタジオも同様の課題を抱えている。昨年の平均売上高は4億3800万円と17年ぶりに4億円台へ回復し、デジタル作画やCGに強みを持つ企業では受注が拡大し、中国や台湾のゲーム産業からの発注も増えるなど好調なケースが目立った。

一方で、従来型の紙ベース作画に依存する会社では業況が悪化するなど、得意分野によって明暗が分かれている。損益面では「増益」となった企業が45.6%にのぼり、過去10年で高水準となったが、「赤字」の割合も33.3%と依然として高い。人材不足による給与水準引き上げや円安に伴う外注費高騰が収益を圧迫し、コスト増を十分に価格転嫁できなかったことが減益や赤字計上につながった。

■制作会社は前年から24社減少 労働条件の改善が急務

帝国データバンクは、こうした市場拡大の裏で「低賃金や長時間労働、不公正な請負関係、クリエーターの知的財産権侵害など、労働環境に関する課題が国内外から厳しく指摘されている」と指摘する。欧米では「労働搾取」によって成り立つサービスを市場から排除する動きが広がっており、改善が進まなければ日本アニメが国際市場から除外されるリスクもあると警鐘を鳴らした。

また、2025年7月時点で国内のアニメ制作会社は293社と前年から24社減少した。小規模事業者を中心に廃業や倒産、経営統合が相次いでいる。アニメ制作市場は世界的な需要拡大に支えられ、規模としては成長を続けている。

だが、その成長がアニメーターやスタジオの収益改善には必ずしも直結していない現状が浮かび上がった。今後は制作環境の適正化と労働条件の改善を進めなければ、世界市場における競争力の低下につながる恐れがある。

(SHIZUOKA Life編集部)

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