<2025年もサンマは豊漁じゃない>水族館でも展示が難しいサンマ養殖に成功 未来はどうなる?
かつて大衆魚として親しまれていたサンマ。しかし、近年は不漁の影響で価格が上がり、食卓に並ぶ機会も減っています。
2025年シーズンの出始めは、サンマの水揚げが近年に比べて多くなりました。こうした状況を受け、「豊漁」とする報道も多数流れましたが、最盛期に比べると漁獲量が回復したとは言えません。
そのような中、「サンマの養殖に成功した」という嬉しいニュースがありました。サンマといえば食用魚のイメージが強く、水槽を泳ぐ姿を想像する人は少ないのではないでしょうか。
近年における不漁の理由、そして水族館で生きたサンマを見かけない理由についてまとめます。
近年漁獲量が安定しないサンマ、その理由は?
北太平洋における日本のサンマ漁獲量は1990年代で年間およそ30万トン前後。当時、サンマは100円前後で買える「庶民の魚」でした。
しかし、その後は漁獲量が減少傾向にあり、2010年頃に生息地が沖合に移動したのを境に、2021年には2万トンまで数を減らしています。
さらに、身も大ぶりなものが少なくなり、小柄なサンマが増加。脂のりや味も落ちてしまい、手軽な価格で美味しいサンマに出会うのが難しくなっているのです。
潮の流れの変化や海の環境の変化が大きい
サンマの分布が沖合に移動した理由のひとつとして、親潮の弱まりとそれに伴う水温上昇が挙げられています。
沖合はサンマのエサとなるプランクトンの量が少なく、産卵や生育にも適した場所ではありません。そのため、個体数が減ったり身が小さくなったりと様々な影響を及ぼしているのです。
さらに、プランクトンそのものの総量の減少やマイワシ・サバなど他の魚の競合も、サンマの減少に拍車をかけているとされています。
2025年は豊漁? 短期的に獲れすぎて漁獲制限も
近年不漁が続くサンマですが、2025年シーズンの出始めはサンマの水揚げが近年に比べて多くなりました。水揚げ漁が急激に増えたため、漁港などで受け入れが間に合わないこともあり、北海道の花咲港では休漁を実施しています。
しかし、最盛期に比べると漁獲量が回復したとは到底言えません。今後も安定した資源管理に向けた取り組みが必要です。
水族館でサンマの展示を見かけないワケ
では、水族館で飼育することはできるのでしょうか。
実はサンマは非常に神経質な魚なので、水族館での飼育はとても難しいとされています。ちょっとした刺激で水槽にぶつかってケガをするだけでなく、寿命も2年ほどと短いです。
さらに、胃袋を持たない魚のため、エサやりにも工夫が必要です。
そのため、成体の捕獲や長期の展示が難しく、ほとんどの水族館でサンマの展示を見ることはできません。現在、日本でサンマを見られるのは、福島県いわき市の水族館「アクアマリンふくしま」だけです。
同館では研究の結果、世界ではじめてサンマの水槽内養殖に成功し、展示を行うという成果を上げています。それでも安定して育てるのは難しく、食用として養殖するには至っていませんでした。
マルハニチロがサンマの養殖に成功
そうした中、2025年9月にマルハニチロ株式会社が驚きの発表をしました。
なんとサンマの試験養殖に成功したというのです。同社はアクアマリンふくしまから卵の提供を受け、自社が持つ養殖技術の知見を活用。その結果、出荷目安である重量100グラムを超え、事業化レベルに到達したといいます。
さらに、同社では人工授精も成功しているとのこと。大量生産に向けての開発や人工ふ化などがうまくいけば、事業化もそう遠くはないかもしれません。
サンマ安定供給の道
天然のサンマの漁獲量の回復を待つのも重要ですが、自然に負担をかけないよう、養殖という新たな道を探るのも必要です。
安定してサンマを育てられるようになれば、価格が安定するだけでなく、全国の水族館でも生きたサンマが泳ぐ姿を見られるかもしれません。
これからの進展が楽しみですね。
(サカナトライター:秋津)
参考文献
水産研究・教育機構-サンマの不漁要因解明について(調査・研究の進捗)
MARUHA NICHIRO-~ふくしま海洋科学館との共創によるサステナブルなサンマ養殖に挑戦~マルハニチロ サンマの事業化レベルの試験養殖に成功