富士通 上小田中に量子棟を建設 次世代コンピュータ設置
富士通(株)は、創業の地である川崎市で量子棟の建設に着手した。上小田中で今秋竣工を予定し、2026年度中には1000量子ビットを持つ量子コンピュータの設置と公開を目指す。完成すれば、稼働する量子コンピュータとしては世界最大級になるという。
次世代の超高度計算を行うための量子コンピュータは、量子力学の原理を利用し、素因数分解や量子化学計算などの問題を解くことが期待される。将来的には医療などの様々な分野で応用されることを見込むが、その実現には多くの技術的な課題を克服する必要があり、現段階では実用的な量子コンピュータは存在していないという。
富士通では20年ごろから量子コンピュータの開発に着手。理化学研究所と共同開発している大規模超伝導量子コンピュータの技術に加え、幅広い研究開発を進めている。24年5月には国内の企業で初めて商用量子コンピュータを受注するなど、業界をリードする存在だ。
体感できる施設に
量子コンピュータの研究開発を加速させる拠点となるのが、建設中の量子棟。延べ床面積が約1000平方mの2階建ての建物で、26年度には世界最大級となる1000量子ビットの超伝導量子コンピュータを設置する研究施設となる。実用化に向けた課題の一つが、量子ビットが受けるさまざまな外部環境などの「ノイズ」と呼ばれるもの。それらを限りなく除去するため、特別な冷凍機によって原子や分子の運動が止まる絶対零度の状態にする必要がある。富士通研究所量子研究所シニアディレクターの近藤正雄さんは「実用化には多くの課題が残るが、従来のコンピュータでは膨大な時間がかかる計算を高速で解けるようになり、世界を変える可能性を秘めている」と話す。
量子棟の建設に関わる総務本部FTP再開発室シニアディレクターの山岸綾さんは「完成した施設は研究関係者や企業だけでなく、学校など地域の方々にもご覧いただける機会を設けて、量子を身近に体感できるような場所にしていきたい」と思いを込めた。