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札幌市内に『野生の王国』があった!クマ対策がもたらした思わぬ「宝物」とは/滝野すずらん丘陵公園

Sitakke

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たくさんの動物が暮らす『野生の王国』が、札幌市内にあるんです。

確認されているだけで、800種類以上の昆虫に、20種類以上の野生動物がいます。

画像提供:滝野すずらん丘陵公園

まんまる♡ 
おしりの主は、エゾタヌキ♡

画像提供:滝野すずらん丘陵公園

エゾリスはキノコを発見! 
ぽきっ!と折って、持って帰りました。

ここは札幌の滝野すずらん丘陵公園です。大型遊具や花畑があり、市民や観光客でにぎわいます。

現在は9月末まで、クマについて学べる「謎解きイベント」を開催中ですが、かつて、クマに悩まされた経験もあります。

実は、このエゾリスやエゾタヌキなど、『野生の王国』としての魅力を再発見する機会を作ったのが、クマ対策でした。

自然豊かな北海道を、どう安全に楽しむか。そのヒントを、公園の取り組みから考えます。

連載「クマさん、ここまでよ」

【この記事の内容】
・かつてはクマの侵入も
・4年間侵入ゼロ!その対策とは
・思わぬ宝物…いろいろな動物が次々と!
・野生動物が暮らす豊かな自然は、恐怖か、魅力にできるか?

## 札幌市内の『野生の王国』

滝野すずらん丘陵公園の隠れた人気スポット、「滝野の森ゾーン」。

木の上の実を発見した今井さん

散策路に入ってすぐ、滝野管理センターの今井健太さんが見つけた実は、「オニグルミ」。

「リスは半分に割って中をかじる。ネズミは横に穴を空けて食べる。食べた痕によって、どの動物が食べたかわかる」と教えてくれました。

リスが食べた痕
ネズミが食べた痕

自然のおもしろさを安全に楽しんでもらうため、力を尽くしているのが「クマ対策」です。

なぜクマは侵入?「知る」ことから始める

生徒たちにクマ対策を説明する今井さん

6月、札幌藻岩高校の生徒が、クマ対策を学びに来ました。

今井さんは、ある親子グマの写真を見せました。

画像提供:滝野すずらん丘陵公園

母親が必死になって外に出ようと、フェンスの下を掘っています。その様子を、子どもがじっと見ています。

画像提供:滝野すずらん丘陵公園

次の瞬間、何か音がしたのか、2頭そろって振り返りました。

2020年に公園に侵入し、ようやく外へと脱出した日の写真です。

公園には、過去に何度かクマが侵入しています。
最初は「恐怖でしかなかった」という今井さんですが、「知る」ことで、冷静に対処できるようになったといいます。

「見ているだけじゃダメだと。調査に参加させてくださいと直訴して、専門家について行かせてもらった。一概にクマだから危ない怖いではなくて、シチュエーションごとに判断が変わってくると知った」

画像提供:滝野すずらん丘陵公園(2013年の専門家の調査に同行)

どうしても公園に入りたい、「クマ側の事情」も知りました。

繁殖期のオスは、メスが連れた子どもを攻撃することがあります。
2019年、専門家は、母親が子どもを守るために公園を「駆け込み寺のように利用した」と指摘しました。

画像提供:滝野すずらん丘陵公園(2019年に侵入した親子グマ)

反省を生かした対策で、クマの侵入ゼロへ

出没のたびに原因を調べ、対策を強化してきました。

公園のまわりを囲うフェンスに沿うように、電気柵を設置。
総距離は24キロにも及びます。

鉄板ですべりやすくして木登り防止

さらに、木を登って乗り越えられないよう、鉄板を巻いたり…

鉄のピンで穴掘り防止

下から地面を掘られないように、鉄のピンを刺したり。

積み重ねの成果で、この4年間は、クマの侵入はありません。

対策を見学した生徒は、「自分が思っているより徹底的に、いろいろなことに取り組んでいると知りました」「安心できるなと思いました」と話していました。

万が一の侵入に備え、センサーカメラも設置。その数、419台。
このカメラ、思わぬ「宝物」をもたらしました。

クマ対策のカメラが魅力発見の機会にも

画像提供:滝野すずらん丘陵公園

クマ対策のために設置したカメラに、たくさんの野生動物の、なかなか見られない姿が写っていたのです。

画像提供:滝野すずらん丘陵公園

クマ柵の前で、エゾシカとエゾタヌキが、ばったり遭遇!

画像提供:滝野すずらん丘陵公園

フェンスをギュギュ~っとくぐり抜けるキテンは、よく見ると、おなかにくっきり跡が。
…もしかして、しばらくはさまってた?

そんな発見を、SNSで公開したり、公園で展示したりしています。

今井さんは、「こんなにお宝が手に入ると思ってなかった。いろいろな動物たちがいると伝えることで、この公園が自然が豊かだなという発信にもつながっているかなと思う」と話します。

「滝野の森ゾーン」の入り口となる「森の情報館」の展示スペース

発信は、「魅力」と「クマ対策」がセットです。

今井さんは、「(公園の外に)クマがいるからダメとは思わない。それだけ自然が豊かな象徴なので。ただぼくたちにとっての線がある。それをこえてきたものに対する対策はしなきゃいけない」と話します。

展示スペースでは、いろいろな野生動物の写真と、クマ対策をセットで発信している

「対策の発信をしたり、クマを知ってもらうことで、より安心してもらうことも、対策と並行してやったほうがいいのかなと思います。クマのトラブルを抱えているところだからこそ発信できること、説得力があることがたぶんある。だから逆にやらなきゃいけないのかなと思います」

この日も、公園の敷地を出てすぐのところで、野生のエゾシカの親子を見かけました。

公園を出てすぐの場所で出会ったシカ

シカやクマ、アライグマなど、野生動物がすぐ近くにいる。それは今や、北海道各地、札幌市内各地の地域でも共通のことです。

それは「恐怖」なのか。
よく知り、対策をして適切な距離を保つことで、「魅力」にできるのか。

クマ対策は、たくさんの命を育む豊かな自然を安全に楽しむための、一つのステップです。

自然の「魅力」

自然に向き合うと、知らなかった面白さに、次々出会えます。
たとえば、北海道には「逃げるカタツムリ」と「戦うカタツムリ」がいるって、知っていましたか?

美しい青が特徴の生き物に、植物の賢い生き残り術などなど、「滝野の森ゾーン」で出会った自然のおもしろさは、次回の記事で続々紹介します。
⇒【札幌にこんな場所があったんだ!800種類以上の生きものが暮らす「森」…大人も知らない"おもしろさ”続々 滝野すずらん丘陵公園】

・滝野すずらん丘陵公園のクマ対策詳細はホームページでもご覧いただけます

・クマの知識とヒラメキで解き進む、謎解きイベントも開催中です
⇒イベントの参加方法詳細:謎解きイベント開催!「迷える親子グマと森の秘宝」

連載「クマさん、ここまでよ」
暮らしを守る知恵のほか、かわいいクマグッズなど番外編も。連携するまとめサイト「クマここ」では、「クマに出会ったら?」「出会わないためには?」など、専門家監修の基本の知恵や、道内のクマのニュースなどをお伝えしています。

文:Sitakke編集部IKU

※掲載の内容は取材時(2024年7月)の情報に基づきます。

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