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高円寺のカフェ『UPLIFT coffee&breakfast』で絶品モーニングを。金物店跡に家族で開いた街への愛あふれる店

さんたつ

高円寺 UPLIFT

高円寺の庚申(こうしん)通り商店街に2025年7月にオープンした『UPLIFT coffee&breakfast(アップリフト コーヒーアンドブレックファースト)』は、その名の通り1日中モーニングが食べられるカフェ。店主の田中有希(たなかゆき)さんとバリスタで息子の響大(ひびき)さんが、親子2人で営む。お店のある場所は、響大さんにとって父方の曽祖父が開いた金物店があった場所だ。

UPLIFT coffee&breakfast(アップリフト コーヒー アンド ブレックファースト)

家族の思い出が詰まった場所で20年ぶりの開業

入り口は見逃してしまいそうなので注意。

高円寺駅北側の庚申通り商店街にオープンした『UPLIFT coffee&breakfast』。お店の入り口はビルの2階にあり、入り口につながる階段の前に小さな看板が控え目に立てられている。建物にある通路の壁に、かつてこの場所にあった「田中金物」の写真が飾られている。『UPLIFT coffee&breakfast』は「田中金物」の家族が約20年ぶりに、この場所で開いたお店なのだ。

入り口近くに「田中金物」の写真。大工さんから刃物研ぎを頼りにされていたお店だった。

バリスタの響大さんの曽祖父が開き、祖母が引き継いでいた「田中金物」が閉店したのは約20年前。4歳だった響大さんは当時のことをよく覚えていて、「毎日のようにおじいちゃんと商店街や高円寺北公園を散歩して、よく近所のおばさんからお菓子をもらいました」と思い出を話してくれた。

料理上手な母、有希さんの影響で、響大さんは中学2年生のころから飲食業を志した。調理師免許を取得してから原宿でカフェに勤務した後、コーヒーを学びたいと「スターバックス」へ。ブラックエプロンと呼ばれる合格率10%以下の資格を1年ほどで取得して独立を目指した。

2階。カウンター席とベンチ席、テーブルがある。

同じころ「田中金物」だった建物は長く入居していた美容院が退去することになり、そこに響大さんはお店を出せることに。思い入れのある高円寺で、いつかお店を持ちたいという響大さんの夢が実現した。

グループや子供と一緒に利用する人も多い3階。

カフェがあるのは家族が居室として使っていた2階と、内部の階段で通じている3階。2階は明るいブルーを基調とし、改装時に有希さんたっての希望でガラスブロックを入れた。3階はまるで屋根裏のよう。ソファ席でうとうとする人がいるほど、リラックスできる空間になっている。

オリジナルグラノーラがポイントのワンプレートモーニング

注文はオーダーシートに書き入れる方式だ。

モーニングをメニューの主体にしたのにはいくつか理由がある。高円寺だけでなく中央線沿線にはモーニングを食べられる個人店がほとんどなかったこと、外国や沖縄など響大さんと有希さんが訪れた旅先でのモーニングメニューが印象的だったことなどだ。「アメリカには、ランチタイムを設けずに1日中モーニングを出しているお店も多いんですよ」と有希さん。

UPLIFTプレートは、メイプルシロップのチーズトーストかバタートーストを選んで、目玉焼き、ベーコン、キャロットラペ、特製グラノーラをトッピングしたサラダが添えられてワンプレートで提供される。

チーズトーストのUPLIFTプレートは1100円。カレー風味のグラノーラが新鮮な味わい!

有希さんが焼く目玉焼きは、1度フォークでつつくだけで黄身がとろっと流れ出てきそうな半熟具合。チーズトーストとベーコンに、メープルシロップをまとわせた甘塩っぱい味がクセになる。それ以上に印象的なのは、サラダにトッピングした自家製グラノーラがカレー風味なこと。あまりに予想外で、「カレー風味なんです」と聞かされるまで脳内は「?」だらけだった。

印象的なカレー風味のグラノーラは、毎日焼いて作っている。テイクアウトしていく人も多いとか。

コーヒー豆やグラス、抹茶の入れ方も地元高円寺で

バリスタを務めるのは響大さん。シングルオリジンのコーヒーは、ケメックスの器具を使って抽出する。

響大さんが担当するコーヒーは、昭和8年(1933)から高円寺で営業している老舗焙煎所『さわやこおふぃ』から仕入れた豆を使っている。3種類の豆を使うUPLIFTブレンドはモーニングメニューに合わせ、すっきりとした味わい。マグカップにたっぷり入っているので飲みごたえがある。

『さわやこおふぃ』とは付き合いが長く、響大さんはお店を開くなら『さわやこおふぃ』からコーヒー豆を仕入れるとずっと以前から決めていたのだとか。

アメリカンビンテージなグラスがずらり。時々増えているそう。

店内を見回すと気がつくのは、アメリカンなグラスがカウンター後ろにずらっと並んでいること。これは有希さんのコレクションで、やはり高円寺でアメリカンビンテージ・グラスを扱うショップ『ディーラーシップ』で買い集めたもの。オレンジジュースや、ハワイのジュースPOG(パッションフルーツ、オレンジ、グアバをブレンドしたトロピカルジュース)を再現したドリンクなどは、このグラスで提供している。また人気の抹茶ドリンクは、高円寺でお茶を教える先生に抹茶の点(た)て方を習った。

マシン抽出のUPLIFTブレンドは480円。ケメックスでいれるシングルオリジンコーヒーは600円。

オープンから数カ月ながら、毎日のように店にやってくる常連客もいる。中には小さなころ祖父に連れられていた響大さんを覚えているご近所さんも。近所に宿泊している外国人観光客が朝ごはんを食べていくことも多い。明るく元気な店主親子との会話と地元高円寺への愛情が、さまざまな人を『UPLIFT』に引き寄せているようだ。

UPLIFT coffee&breakfast(アップリフト コーヒー アンド ブレックファースト)
住所:東京都杉並区高円寺北3-25-24 2F/営業時間:8:00~16:00/定休日:月(不定休あり) /アクセス:JR中央線高円寺駅から徒歩5分

取材・文・撮影=野崎さおり

野崎さおり
ライター
2016 年よりライターとしての活動を開始し、複数のweb媒体で食べ物やお出かけネタを中心に執筆。おいしいものはもちろん、作る人とその背景に興味あり。都内をバスか徒歩で移動するのが好き。

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