『Endless SHOCK』堂本光一、中山優馬の会見&ゲネプロレポートーーフライングに階段落ち、そしてシェイクスピア…舞台の粋がすべて詰まった、最後の大阪公演が幕開け
「SHOW MUST GO ON」という言葉の意味を問い続けながら、エンターテイナーのコウイチとそのカンパニーが運命を駆け抜ける姿を描くオリジナルミュージカル『Endless SHOCK』。初演は2000年11月、『SHOCK』と題し、堂本光一が当時21歳で帝国劇場史上最年少座長として同劇場初出演・初主演を務めた。2005年には『Endless SHOCK』と改題、堂本は脚本・演出面にも関わり、今では作・構成・演出・主演の4役を担当。2020年には20年にわたってけん引してきた功績で第45回菊田一夫演劇大賞を受賞した。
初演以来、『SHOCK』シリーズは毎年上演を積み重ね、2024年7月25日(木)現在では総上演回数2042回と、森光子主演の『放浪記』(2017回)や松本白鸚主演の『ラ・マンチャの男』(1324回)を抜いてトップに立ち、まさに演劇界の金字塔を打ち立てた。しかし、2024年1月に行われた『Endless SHOCK』の制作発表会見にて、2024年の公演をもって堂本主演の『SHOCK』シリーズは終幕すると明かされた。
『SHOCK』ラストイヤーは東京・帝国劇場で4月に幕を開け、5月に千穐楽を迎えた。そして7月26日(金)、大阪・梅田芸術劇場にて最後の大阪公演が開幕する。梅芸での初演は2013年9月、上演1000回記念公演と銘打った初の大阪公演だった。5年ぶりとなる今年は、2019年に堂本光一のライバル役を務めた中山優馬が再び同役を勤める。カンパニーの仲間には林翔太、室龍太、高田翔、原嘉孝、松尾龍、尾崎龍星、綺咲愛里、島田歌穂らが名を連ね、帝国劇場公演や福岡・博多座公演とはまた異なる世界観で展開する。
大阪公演初日の前日、7月25日(木)には公開通し稽古が行われ、その全貌が明かされた。オーバーチューンを経て、物語はオフ・ブロードウェイにある、とある劇場のショーから始まる。幕が開くと、舞台にコウイチ(堂本光一)のシルエットが! それだけでテンションが上がる。ステージ上の階段にはカンパニーが勢ぞろい。ユウマ(中山優馬)はキリっとした表情を浮かべ、ショウタ(林翔太)は対照的ににこやかだ。クラシックバレエを得意とするタツル(松尾龍)が華麗に舞台を舞い、その美しさにも目を奪われる。ワインレッドの髪色としなやかな動きで大人の魅力を振りまくリュウタ(室龍太)、体の奥底から青い炎を静かに燃やしているようなタカダ(高田翔)、全身からパワーを放つエネルギッシュなハラ(原嘉孝)、その初々しさがカンパニーに新風を吹かせているリュウセイ(尾崎龍星)、そして凛とした美しさと可憐な愛おしさを併せ持つリカ(綺咲愛里)がさらにショーを華やかに。そして彼らが慕う劇場のオーナー(島田歌穂)が、キリっと場を引き締めている。彼らは日々切磋琢磨し、ブロードウェイに進出することを日夜、夢見ていた。
そんなある日、彼らに千載一遇のチャンスが訪れる。ついにブロードウェイに立つことが叶ったのだ。オフ・ブロードウェイとは比べものにならない煌びやかなステージ。だが、浴びる光が強ければ強いほど、落とす影も色濃くなってゆく。カンパニーにはかつてない軋轢が生まれ、やがて取り返しのつかない事件が起こってしまう。
第一幕の冒頭からフライングにイリュージョンなど目を奪われるパフォーマンスが続出。アンサンブルや外国人キャストもショーの雰囲気をさらに盛り立てている。ダンスはクラシカルなものからストリート系まで幅広く、目くるめくステージがとにかく楽しい! 第一幕の最後には鬼気迫る殺陣や『SHOCK』名物の「階段落ち」もあり迫力満点。息つく暇もなく休憩を迎えた。
第二幕では、劇中劇であるシェイクスピアの名台詞が次から次へと劇場を埋め尽くし、同時にイリュージョンやダンス、アクロバットも見せる。そんなふうに全編を通してショーのすべてがここには詰まっている。第二幕の中盤では、コウイチがコミカルな言動で和ませる場面もあり、ホッと一息……と思いきやクライマックスに向けて彼らの勢いは猛スピードで加速していった。コウイチとユウマによる和太鼓では、緊迫感の中で二人が息の合った連打を見せる。やり終えるとユウマに笑顔を向けるコウイチ。二人はがっちりと固く握手をして称え合った。また、コウイチがフライングで空中パフォーマンスを見せる中、ユウマらはステージで太鼓を披露。全員の一糸乱れぬ撥さばきに、このカンパニーの結束力の強さを見た。
『Endless SHOCK』はバックステージの裏側を描いた物語でもある。誰もが皆、夢や希望に胸を膨らませる一方で、葛藤や嫉妬、焦りなどに足元をすくわれている。仲間の存在に救われ、逆に苦しめられ、舞台裏でどんなに七転八倒しようが幕は待たず、否が応でも強烈な光の中へと飛び出していく。
「SHOW MUST GO ON」という揺るぎない信念。彼らにとってそれは矜持でもあり、運命を狂わせる呪詛でもあった。そんな中で吐露されるセリフの一つひとつが、まるで役を脱いだ素顔の彼ら自身に問いかけているようにも見える。2024年でもって終幕すると伝えられた『Endless SHOCK』。それだけに、クライマックスの台詞の数々は、痛いほど胸に突き刺さり、堂本が24年にわたり背負ってきた『SHOCK』シリーズの重みを感じずにはいられなかった。
公開通し稽古の終了後には取材会が行われ、堂本、中山が登壇した。大阪公演は5年ぶりとなる。その月日に「お~、まじか……」と感慨深い表情を浮かべる堂本。当時も堂本のライバル役を務めた中山は「僕です!」と笑顔でアピールするも、堂本は「そっか。なんかその記憶ないんだよな(笑)」と拍子抜け。とはいえ、「この5年で優馬が成長していてびっくりした」と本音を語る。
通し稽古でも、力の入りようが尋常ではなかった殺陣のシーンをはじめ、堂本のライバル役として申し分ない存在感を見せつけた中山。「前回は優馬くんとの年齢差にどう寄り添っていこうかと考えながらやっていたのですが、今回はもう考えなくても、本当にライバルとして存在しているし、一つひとつのセリフにも説得力がありましたし、歌の安定感も本当に素晴らしいなと感じました。本番前も「よし! 行きましょう!」みたいな感じで声をかけてくれて、頼もしいです」と全幅の信頼を寄せた。
そんな座長の言葉に「嬉しいです」と喜びをかみしめる中山。「稽古の序盤で年齢差を感じない と言ってくださって、めちゃくちゃ嬉しかったです。舞台上の相手として認められたのかなと思って」と続けた。また、堂本の相手役としてふさわしくあるべく、中山は3カ月前から体を鍛えてきたとも明かした。
改めて梅芸での『Endless SHOCK』の見どころを尋ねると、「お客さんの方が俺より『SHOCK』の知ってるんとちゃうかな。だって俺、客席から見たことないんですよ」と軽くかわす堂本。だが、「梅芸でやらせていただくのも久しぶりというのもありますし、かつ2024年でラストと考えておりますので、劇場独特の空気を感じてほしいと思います。劇場それぞれに色や空気があって。何でしょうね、この感覚。これってお客さんも感じているのかな。ぜひ、梅芸での『SHOCK』を目に焼き付けて、体で感じて、そしてこの空気を吸ってほしいなと思います」と語った。なお、梅芸は天井が高い分、フライングの旋回も大きいという。
2000年11月の初演から24年間、堂本は座長という重責を担ってきた。そんな中で「『SHOCK』を理解している俳優やスタッフの皆さんを信頼することが一番、自分へのエネルギーになる」という。そして、「2024年、『SHOCK』は大阪・梅田芸術劇場でやらせていただくのは最後になりました。先ほどの通し稽古で、自信を持ってお客様にお見せできる状態であると感じることができたので、今は明日の初日の幕開けがすごく楽しみです」と堂本、充実感あふれる笑顔を見せた。カンパニーの信頼感は一目瞭然、彼が積み重ねてきた『Endless SHOCK』大阪公演は8月18日(日)まで上演中。
取材・文=Iwamoto.K 撮影=河上良