【立ち食いそば放浪記358】そびえる山賊焼、トロける焼豚! 丸政そばをハシゴして感じた「山梨の深淵」
個性豊かな立ち食いそばの世界。たまにあるのが肉がデカイ店だ。例えば、飯田橋の『豊しま』の元祖厚肉そばとか、千葉我孫子『弥生軒』の唐揚げそばとか、なぜこうなったのかと思うほど肉が主導権を握っている。2つとも昭和40年代からの生き残りであるのも良いところ。
作られた個性ではなく野生のデカ肉。また1つ、そんな昭和デカ肉立ち食いそば屋に出会った。山梨県にある『丸政そば』が凄かったのである。
・新宿から1時間51分
ウマイそばを求めて色んな町を放浪する連載「立ち食いそば放浪記」。実は山梨県にデカイ山賊焼(さんぞくやき)が乗った立ち食いそばがあるという噂は以前から聞いていたんだけど、山梨に足を運ぶ用事がずっとなかったからスルーしていた。
しかし、先週の日曜日、天気が良かったものだから行ってみることにしたわけ。考えてみたら山梨は東京から近い。新宿から特急あずさに乗れば、丸政そば開業の地であるJR小淵沢駅まで乗り換えなし1時間51分で行ける。
・107年の歴史
駅弁屋だった丸政が小淵沢駅中央線ホームでそば店を開業したのは昭和31年(1956年)のこと。その後、色々あって現在丸政そば小淵沢店は改札外の駅舎2階のみになったが、相変わらず営業しているため約70年の歴史と言える。駅そばも今やJR運営とかが多くなって味の質が似てるから貴重な存在だ。
JR小淵沢駅に降り立ったところ駅から株式会社丸政の本社が見える。小海線ホームの売店も健在で、その佇まいにグッと旅の雰囲気を感じた。そば以前も合わせると丸政は2025年で発足107年。まさに歴史である。
・馬肉
一方で、小淵沢の駅舎はピカピカだ。なんでも2017年にリニューアルオープンしたらしい。そんなわけで改札を出て待合室前の『丸政そば小淵沢店』に行ってみたところ、丸政そばもピカピカだった。
券売機を見てみると、最上段左端の1番最初に見るボタンは「山賊そば(税込680円)」。まずはコレ! そのオーラには貫禄すら漂っている。
しかし、よく見てみると……
「豚バラ軟骨そば(税込680円)」とか「海賊そば(税込680円)」って何!? 肉そば(税込680円)は馬肉だし! 他のメニューも個性放ちすぎだろ!!
・そびえる肉
券売機の時点でオリジナリティーは一目瞭然であった。突然の不意打ちに一瞬大きくグラついたが、山賊そばを食べずにこれらに行くのは邪道かと思い直し山賊そばを注文。
トッピングされた山賊焼は丼の半分を覆っていて、見るだけで噂に違わぬデカ肉っぷりである。だが、箸で持つとさらに実感があった。ズッシリとして持ち上げるのも苦労するくらい分厚い。面積だけデカく見せているのではないリアルなデカ肉だ。そびえているぞ、八ヶ岳のごとく。
信州の名物である山賊焼。これは鶏もも肉を、すり下ろしたニンニクなどを効かせた醤油ダレに漬け込んでから揚げる豪快な料理だ。したがって、そばと言えど甘みのある醤油つゆの味の波間に飛び込んで来るニンニクのパンチは強い。そばが柔らかめのためか山賊焼の存在感がスゲエ。
これだけ肉の存在感があるため、食べ終わった時の満足度も高い。登山口への拠点となっている小淵沢駅にはうってつけの駅そばと言えるだろう。山に登ったとしても回復するレベル。ただ、そんな山賊そばを味わってしまったからこそより気になったことがあった。
・この一杯で帰っていいのか
それは「他のメニューはどんな内容なんだろう?」ということ。前述の通り、鞘から光が漏れ出るかのごとくオリジナリティーを発しているこの店。帰りの特急に乗ったはいいものの、この一杯で帰っていいのか?
私は『丸政そば』の本質を理解したと言えるだろうか? いや、言えない気がする。席でそんな気持ちがふつふつと湧いてきたので……
甲府で特急を降りて『丸政そば甲府北口店』に駆け込んだ。
まさかの丸政そばのハシゴ。しかも途中下車。だが、結論から言うと来てよかった。私が注文したのはカレーそば(税込680円)のコラチャー(税込280円)トッピング。
・コラチャーの洗礼
単品メニューによるとコラチャーは軟骨焼豚なので、小淵沢店の軟骨豚バラだと思われる。コラチャーという名前はコラーゲンたっぷりのチャーシューの略のようだ。このコラチャーがマジでぷるぷるの食感が口の中で溶けるようだったのである。
山賊そばだけでなくこんなのも隠し持っていようとは。さらに言うと、甲府北口店の揚げ置きコーナーには普通のコロッケの2倍くらいある「ジャンボコロッケ(税込220円)」などもあった。クッ、これも食べてみてえ……! 行けば行くほどまた来たくなる。私が遠くから見ていた山賊そばはほんの入口に過ぎなかったのだ。
その証拠に甲府北口店は地元民で賑わっている。路面店の甲府北口店は10代のグループ客とかもいて、よりガチの地元みがあった。これもハシゴしたからこそ分かったことと言えるだろう。
これが丸政そば! これが……山梨!! 丸政そばをハシゴしたからこそ感じた山梨の深淵。その底の見えなさにこう思わずにはいられなかった。「また来たい」と。クセになる。山梨ってそういうとこあるかもしれない。
参考リンク:丸政そば
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.