通いたくなる!大磯のおすすめ酒場『CANCAN』と『日々の料理』。日常の先の心ほどける瞬間を
大磯の夜は早い。チェーン店の酒場は見当たらず、外飲みが浸透しないって!? そんな中、おいしい料理とお酒に親しみくつろげる場所は、超とっておきの存在だ。が、とっておかずに日常の延長線上に! 通いたくなる2軒を案内したい。
「心が動く」ワインを立ち飲みで『CANCAN(カンカン)』
線路沿いに進み、路地を左へ。ふらふら歩いても駅からほんの2分でいつものポジションに立てる。10人ほどでいっぱいになるが、風通しのいい店内、厨房向きのカウンターなら店主・五十嵐和弘さんの仕事ぶりを眺められ、通り向きの角はすこぶる落ち着く。立ち飲みにしたのは「料理をゆっくりより、お酒をサクッと楽しんでいただきたいから」と五十嵐さん。が、旬を伝える小皿料理や、気になるヴァンナチュールを前に、サクッと上がるのは無理だ。
まずは、焼餃子にご注目。「酒呑みはつまみで満腹になりたくない」と、薄くて小ぶりの皮を作り、乳酸醗酵させたキャベツを包む。想像以上に手の込んだ料理を、小皿に盛るさりげなさが日常に寄り添う。食材は、大磯で自然な農法を続ける『uramichi FARM』の野菜や地魚を柱に、店主の故郷・山形産も目立つ。
満月の日は「満月ワインバー」、最終日曜は「ワイン会」をゆるりと開き、心が動くワインを開栓する。
気ままな1人飲みにすべてアジャスト
パリッと焼き上げた焼餃子600円は、花山椒を効かせた酢を添えて。軽いのでひと皿目にも。地イサキと山形産サクランボのセビーチェ700円。山形『酒井ワイナリー』の、品種も年代も関係なく混ぜた「まぜこぜワイン」赤 コップ600円は、一升瓶から注ぐ定番だ。ズッキーニとパクチーの海老ダシ スパサラ650円とブルゴーニュの泡1400円。
『CANCAN』店舗詳細
CANCAN(カンカン)
住所:神奈川県中郡大磯町大磯867-3/営業時間:16:00~23:00(土・祝は~22:00、日は14:00~19:00)/定休日:火/アクセス:JR東海道本線大磯駅から徒歩1分
やわらかな空間で心身をリセット『日々の料理』
築80年の平屋に生まれた料理店。素朴な野草が咲き誇るアプローチから玄関へ。室内は古いものと新しいものが溶け合い、すみずみにまで手仕事の温もりがあふれている。
店主の坂間洋平さんは、関西出身。京都の先斗町でバーを、大磯では「今古今」と「日日食堂」を営んでいた。「月日を重ねるにつれて、コンセプトがなくなり、シンプルになりましたね」と静かに語る。今抱くのは食材や器、人、大切なつながりへのあふれる思い。例えば、ご年配の方が「手料理は少し厳しいから、今日はここで」という風に、地元の方のもう一つのダイニングになりたいという思いも秘める。
どのコースも季節野菜のおひたしから始まる。野菜担当は大磯で生まれ育った上田碧さん。この日はノラボウ菜、コゴミ、タラの芽、新ジャガが出汁の風味をまとう。五味と食感を楽しむ間に味覚がリセットされていく。次の料理に合わせて日本酒は何を? 2人と話すうちに(まだ飲んでいないのに)、心身がふんわりとする。
今日の恵みを盛り込む月替わりのコース
季節のちらしのコース6000円から。季節野菜のおひたし、ポタージュの茶碗蒸し、肉料理はハンバーグ。季節のちらし(キンメダイ、ハナダイ、カクアジ。野菜はケールとアシタバ)に汁椀。すべてが麗しい。香りが広がる日本酒はワイングラスで提供。本コースは、他に前菜、魚料理、デザートが入る。季節の土鍋ご飯のコース4500円(昼のみ)・6000円もある。
『日々の料理』店舗詳細
日々の料理
住所:神奈川県大磯町東町2-3-12/営業時間:昼は12:00または12:30~・夜は18:00または18:30~(完全予約制。当日の4時間前まで受け付け)/定休日:火・第1と第3月・第3土・木夜/アクセス:JR東海道本線大磯駅から徒歩15分
取材・文=松井一恵 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2025年7月号より