大切なのは未来をイメージすること…別府史之さん
石井正則(七代目自転車名人)と疋田智(自転車博士)がいろんな角度から自転車の魅力を発信するTBSラジオ「ミラクル・サイクル・ライフ」(毎週日曜日18時30分~19時) 今週の「ポイント オブ サイクルトーク」はこちら!
元プロロードレーサーでサイクリングプロモーターの別府史之さんをお迎えしました。
別府さんは1983年4月10日生まれ、神奈川県茅ヶ崎市のご出身です。高校ご卒業後、フランスに渡り、2005年に日本人として初めてUCIプロツール選手となります。2009年には、日本人として13 年ぶりとなるツール・ド・フランスに出場。最終第21ステージで「敢闘賞」を獲得し、日本人初の完走も同時に果たされます。その後、日本人初の5 大クラシック完走、世界三大ツールすべてを完走、 北京とロンドンのオリンピック日本代表など、輝かしい実績を積み上げます。2021年のシーズン終了をもって引退。現在は豊富な経験とグローバルな視点を活かし、サイクリング文化の普及、啓蒙活動、次世代サイクリストの育成に取り組まれています。
今回は渡欧直後のお話を中心にお聞きしました。
高校卒業後、フランスへ渡られた別府さん。当時は「日本人がヨーロッパの自転車レースで活躍するなんて無理」と多くの人が口を揃えていた時代です。インターネットもなく、情報源といえば雑誌やビデオくらい。そんな状況の中、別府さんは「手探りで見えない梯子を自分の手足で登っていた」と振り返ります。「現地の選手でもプロになれるのはほんの一握り」というお兄さんからの忠告もあったそうで、生半可な気持ちでは夢を実現できないと覚悟されていたそうです。それでもフランス行きを決意した理由は「ヨーロッパで闘いたい」という情熱。その想いは中学生の頃から芽生え、渡欧に向けて言語はもちろん、ヨーロッパの歴史や文化を学び、現地に溶け込む準備を着々と進めていたといいます。実際のヨーロッパでの生活が始まると、現地の作法を観察しながら、周囲の選手がどのようにしてプロになっていったのか、その道筋を逆算。自分自身に取り入れていく努力を重ねました。
また、お父さんからの後押しも大きな力となりました。「100パーセント成功するかはわからない。でも、今しかできないことに挑戦してほしい」と背中を押してくれたそうです。別府さんご自身も、「たとえプロになれなくても、ヨーロッパで得た経験は必セカンドライフに生かせる」と、前向きな気持ちを持つことができたそうです。
そして、数々の試練を乗り越えることができたのは、「未来をイメージする力」だと別府さんはいいます。「イメージが浮かべば、あとはそれを現実に近づけるだけ。イメージが大切なんです」と語る姿が印象的でした。また、「サイクルロードレースは、スタートからゴールまでの間にどう走れば勝てるか、力をマネジメントする競技。常にそうしたメンタルで生きてきました」との言葉も、アスリートとしての哲学を物語っています。 トップアスリートによる貴重なお話、ありがとうございました。
(TBSラジオ『ミラクル・サイクル・ライフ』より抜粋)