活気あふれる「釜石よいさ」 幅広い年代集う 跳ねて踊って「よいやっさ~」
さ~さ、よいやっさ~!威勢のいい掛け声とともに市民が群舞を繰り広げる祭り「釜石よいさ」(実行委主催)が15日、釜石市鵜住居町の釜石鵜住居復興スタジアムで開かれた。33回目の今回は18団体、約700人が集結。幅広い年代の市民らが息を合わせて踊り、笑顔の輪を広げた。
おはやし隊の笛や太鼓に合わせ活気あふれる掛け声が響き、「よいさ小町」があでやかに舞った。色鮮やかな浴衣、そろいのはんてんをまとった踊り手が輪踊りのようにパレード。楽しげな様子に誘われた観客が飛び入りで輪に加わる姿も見られ、会場は熱気に包まれた。
コロナ禍前からの復活として、久しぶりに参加したのは「釜石小学校PTA」。全学年から有志を募り、保護者や教員を含め総勢約40人で練り歩いた。事前練習をして臨み、藤元美和さん(6年)は「難しかった。でも、みんなと踊って、いい思い出になる」とはにかんだ。PTA会長の元持彰範さん(48)は「学年を超え仲がいいが、さらに仲良しになってくれれば」と期待。五安城正敏校長は「参加することで、地域を盛り上げられたら。楽しさを残せば、続くはず」と子どもたちを見守った。
涼やかな浴衣姿で踊りを披露したモッモッアウンさん(22)とエイタンダートゥンさん(22)は、ミャンマーからやって来た技能実習生。市内の水産加工会社で働く仲間(ベトナム、インドネシア)とつくった「井戸商店・近藤商店 技能実習生チーム」(約20人)で輪に加わり、日本の祭りを満喫した。
2人は浴衣姿に満足げで、終始にこにこ顔。3回(各25分間)ある踊りの時間も「楽しいー。疲れない」と満喫した。「キラキラ」と手を振る部分がお気に入りというアウンさんは「みんなで踊るのが面白い。釜石でいろんなものに触れている」と充実感をにじませた。
長く夏の風物詩として親しまれてきた祭りは、東日本大震災やコロナ禍でたびたび中止を余儀なくされたが、昨年、4年ぶりに復活した。会場を市中心部から同スタジアムに移し、猛暑を避けるため時期も変更。リニューアルした形では2回目の開催となった。
祭り好きな80代女性は「音が聞こえてくると、じっとしていられない。気持ちがウキウキする」と、会場そばから駆け付けた。震災後、地域も祭りも縮小し寂しさを感じていたようで、「鵜住居でやってもらえてうれしいし、楽しみにしていた。続けてほしい」と歓迎した。
以前、会場だった市中心部・大町周辺での再開を望む声もある。よいさと連動したにぎわい創出策として昨年実施した「アフターよいさ」を、今年は趣向を変え“前夜祭”に。14日夜、市民らがTETTO(テット)前広場で踊りの輪をつくって祭り気分を楽しんだり、立ち飲みスペースでほろ酔い気分を味わったりした。
近くにある復興住宅で暮らす佐々木敬子さん(82)も祭り好きで、うれしそうに輪踊りを見つめていた。地元出身のフリーアナウンサー・民謡歌手佐野よりこさん(よいさ本番では司会も担当)の歌声を楽しみ、「年齢もあって踊るのは難しくなったけど、雰囲気を味わうだけでも楽しい。こういう催しで地域がにぎわってほしい」と願った。
実行委によると、よいさ本番と前夜祭を合わせた来場者は約4000人。実行委員長の一人、大和田崇士さん(47)は子どもの頃に参加し、「大勢で踊る楽しさ」を記憶する。そうした思い出は実行委メンバーの多くに共通。「踊って、食べて、遊んで!全力で楽しんでほしい」。祭りの継承へ思いをより強くしている。