JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)の開業は、沖縄の観光と交通にどう影響するのか
名護市民会館にて開催された「TSUNAGU CITY 2025 in NAGO」にて、観光と交通をテーマにしたトークセッションが行われました。 「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」を運営する株式会社ジャパンエンターテイメント 取締役副社長 佐藤大介氏が語る、「ジャングリア開業で変わる観光と交通」とは? 名護市民としての筆者の個人的な観点もまじえ、トークセッションの内容をお伝えします!
「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」は単なるテーマパークではない
「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」は、沖縄県北部の名護市に開業予定のテーマパークです。まずはコンセプトムービーとともに、佐藤副社長から施設の紹介をしていただきました。
「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」はキャラクターもののテーマパークではなく、来場者が沖縄の大自然のなかで、やんばるの自然を楽しむテーマパークです。 シンボルツリーをとおり抜けるとエントランスがあり、先には展望デッキがありパークを一望できます。アトラクションはジップライン〈SKY PHOENIX〉やバンジー〈BUNGEE GLIDER〉〈GRAVITY DROP〉、リアルに再現された恐竜から逃走する〈DINOSAUR SAFARI〉などがあり、旅ならではのドキドキと興奮を味わえます。
さらに、旅行者は単にビーチでゆったりするだけではなく、興奮・元気・癒し・贅沢感も求めていると調査で分かり、SPAも用意しました。1600メートルほどから湧き出た温泉を使用しています。インフィニティSPAからは大自然を味わいながら、贅沢な時間を楽しんでいただければと思います。 そして海抜200メートルの高さまで上がり、羽地内海・名護湾を見渡せる気球など、興奮と贅沢感を味わえるコンテンツを多数用意しています。 元気になる贅沢な1日を、興奮と贅沢な旅を味わっていただきたい。旅に求められる「興奮・贅沢感・解放感」を称して、「Power Vacance!!(パワーバカンス)」をコンセプトとしたテーマパークです。
そこに愛はあるのかい?ジャングリアは課題をどう解決するか
大きなテーマパークが開業するとともに、案じられるのが交通事情についてです。私たち名護市民としては生活圏で起こる問題であり、日常の生活に不便さが出たら嫌だなと思うのが正直なところ。 とはいえ、開業日は決まっているし、期待度が高いパークであることは間違いありません。注目したいのは、ジャングリアが交通の問題をどう解決しようと動いているのか、そこに地元民への愛はあるのかという点です。
交通渋滞だけじゃない!観光と地域の課題
「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」開業に向けて懸念されてきたことは、沖縄のやんばるだけでなく、沖縄全体あるいは日本全国、そして世界で起きていることです。 観光地として魅力があるがそれを活用できていなかったり、ホテルは建つが地元に恩恵が落ちていなかったり、課題はたくさんあります。交通手段が減っている一方で、観光客が増えるような状況をどう解決していけばよいのかも、地方部のリゾートでよくあがる課題です。 そういった一つひとつに向き合いながら、少しでも沖縄のブランドを高めて、沖縄にいい人材が来て、沖縄にお金が落ちるような構造をつくっていきたいと思っています。 まずひとつは、観光経済としての課題があります。ほとんどの人は中南部のホテルに帰ってしまいます。 一方で、消費者や旅行者が改善した方がよいと思う課題の1位が交通渋滞、2位が交通移動の不便さです。 「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」としては、当然渋滞を少しでも緩和したいと思っていますが、ネガティブを緩和するだけにとどめず、解決策をいい形にして日本のモデルにしていきたいと考えています。 交通だけではなく、人材育成においても同じです。いい人材が日本中から集まってくれば、沖縄県内で人材の取り合いにはなりません。 このように、「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」は沖縄の1テーマパークではなく、沖縄ですごいものをつくって、それをモデルに日本の未来をつくっていきたいと思っています。
すでに行っている交通対策とジャングリアとしてできること
さまざまな課題のなかで、交通渋滞対策はとても重要です。みなさんが心配されていることなので、すでに地元の公民館で住民説明会を30回以上開催しています。 地元の交通量調査を行い、名護市や沖縄県・沖縄県警に相談しすでに改良された道路もあります。交通渋滞の対策としては、ただ渋滞をどうするかの議論だけでなく、戦略が大切です。 まずは、車での来場を減らすためにバス利用の促進や、1か所に集中させないようルート分散の働きかけ、駐車場を分散します。営業時間の変動制や入場制限の導入なども検討中です。 そして、車両通行の円滑化については、名護東道路や沖縄自動車道だけでなく、交差点や信号のようなハード面を円滑化するなど道路の改良も必要です。 さまざまな課題を解決する目的は、単に渋滞の解消だけではなく、地域の交通利便性の向上にもあります。同時に、旅行者が楽に北部にアクセスできるようになれば、多方面にプラスになると考えています。
ジャングリア開業で名護市周りの交通がどう変わっていくのか
現在懸念されている課題から、未来に起こり得る課題まで複合的に考えて、一つひとつ解決しようとしている印象を受けました。 では実際に名護市周りの交通がどのように変わっていくのか、そのときの課題がなにかについては、次のとおり説明がありました。
単体では解決できない問題も協働であれば解決できる
いきなり全部を解消できるのではなく、複合的な対応をしていかなければなりません。 大きな部分でいうと、少しでも自家用車を減らすために、空港や那覇市内からの乗り合いバスやホテルからのシャトルバスの運行を増やす相談もしています。 そしてぜひ実現したいものが、オンデマンドの導入です。たとえば古宇利島のようにシャトルバスが頻繁に稼働している場所ではないが、高付加価値ないい宿に宿泊されている方向けの送迎サービスです。 オンデマンドや小型モビリティ、日本型ライドシェアなどを組み合わせることで実現できないか、と考えています。ほかにも、フェリーと連携したり、駐車場と連携したり、さまざまなことを検討しています。 ここで重要なのは、「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」だけでなく、海洋博公園・美ら海水族館をはじめ、周辺の観光施設と手を取り合うことです。交通で結ぶだけでなく、プロモーションや人材確保、大学と連携したインターンシップなどを含めてつながっていく、その変化の起点になりたいと思っています。
フェリーでの帰路はサンセットタイムと重なり、時期によってはクジラも見られます。これを観光商品化すれば、交通対策にかわるものになると考えています。 また交通の対策は、観光交通としてだけでなく、地域防災・救急車の問題解決にもつながります。「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」開業が交通の変化の起点となり、観光のためだけでなく地域の方々と一緒に考えながら働きかけをしていきたいです。
新しいテーマパークの誕生に期待
今回いろいろなお話を聞いているうちに、すごい人たちが名護市のために、沖縄県のために本気で動き続けているんだと感じました。 儲かりそうなコンテンツを見つけた。沖縄のポテンシャルをなぜ活用しないのか。そんな声はよく聞きますが、大抵自分たちが作りたいものを作って終わりのパターンが多い印象があります。ここまで大規模なものははじめてともいえますが、あまりにもハードルが高すぎて手出しできなかった側面もあると思います。 いままでにも温泉が湧き出る話やバンジージャンプなど、個々の案はたくさん耳にしましたが、予算や人員、許認可の問題から誰も実現できずにいました。しかし今回は多くの“しごでき人”が、本気で実現に向けて動いています。これまでの実直な姿勢と本気度を信じて、新しいテーマパークの誕生に期待したいと、いち名護市民として思いました。 トークセッションのモデレーターの佐藤雅明氏(東海大学 観光学部観光学科 准教授)は、冒頭で観光について以下のように説明してくださいました。最後にご紹介させてください。 「まず観光という分野。いまの日本ですと、観光立国推進基本法というものが、観光立国日本のベースになっているのですが、観光という言葉は、光を観る。光とは何かというと政(まつりごと)ですが、その地域がどういう国なのかを観てもらうというのが、観光という言葉のはじまりになります。 自分の国を知ってもらう、自分の土地を知ってもらう、そして来てくれた人たちのところも観にいく。観光を通してお互いを知り、平和になる。争いがなくなる。そして一緒にやっていくことで相互理解が広がって、社会が豊かに楽しくなっていく。こういうことをめざすのが観光です。」