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PFASを追う~重要文献、大量不採用

TBSラジオ

TBSラジオがお送りする首都圏で一番聴かれている朝の情報番組。毎週月曜日は東京新聞との紙面連動企画。

今日は二年前の連動企画でも取り上げた「PFASを追う」という、東京新聞独自のPFAS取材の特集記事に、再び注目しました。

PFAS摂取上限の決定会議 重要文献大量を不採用

まず、今回の「PFASを追う」はどんな内容の記事なのか、一昨年と同じく「PFASを追う」担当記者、東京新聞社会部の松島京太さんに伺いました。

東京新聞社会部 松島京太記者

「PFASと呼ばれる発がん性の疑われる有機フッ素化合物というものがありまして、内閣府食品安全委員会と言う組織が、昨年6月に、これのどれだけ摂取してもいいのかという、摂取許容量の評価を示したんですが、その評価を示した際に、参照文献として出した物のうち、専門家が最重要として位置付けていた文献を、大量に不採用にして結論を出していた、ということが分かった、という記事になります。

最終的に257件中の190件が不採用になって、で、専門家は当然、そのままボンっと出したわけではなくて、これは最重要だぞ、と専門家が考えた文献にはAというランクを付けますし、複数の専門家がAを付けたものはAAと付きます。で、この190件の中のうち、122件がAもしくはAAだったといわれています。」

内閣府食品安全委員会が、摂取許容量を決めるために、「化学物質評価機構」という第三者に、PFASの健康影響に関して重要な文献を選んで、と頼みました。選ばれた文献の総数は「257件」なのですが、食品安全委員会は、そのうちの「190件」を、不採用にした、ということなのです。

これらの研究文献をもとに議論して、PFASの摂取許容量を割り出すので、 どの文献を選ぶのか、というのはとても大事なことです。

そして、特にその不採用の「190件」の中には、専門家が重要とした「Aランク」や「AAランク」の文献が、「122件」もあったのですが、その中には、例えば、東京多摩地域と同じような水道水汚染が起きている、イタリアのヴェネト州で調べたコレステロール値との関連を示した研究や、アメリカの「腎臓がんと関係がある」とした研究、などがありました。

健康への影響の評価に関することなので、本当はもっと危ないのでは?と指摘され、リスクが過小評価された可能性もある、と専門家などから問題視されているのです。

国際的にも緩い水道水の基準値 論拠は・・・

さらに、今回の大量不採用にはもう一つ問題とされる理由がある、と松島さんはおっしゃいます。

東京新聞社会部 松島京太記者

「PFASの水道水中の指標というものが、いわゆる今まで目標値だったものを基準値にするんですが、これがどれくらいかというと、1リットルあたり50ナノグラム。この50ナノグラムというのはどういう風に算出しているのかと言いますと、今回PFASワーキンググループが示した摂取してもいいよ、という量が、PFOSとPFOAそれぞれ20ナノグラムなんですね。で、この20ナノグラムを水道水に換算したら50ナノグラムになる、という計算なんですよ。

で、一方で、水道水というのは国際的にもかなり厳しくなっていて、アメリカではPFOSとPFOA、それぞれ4ナノグラムになってるんですよ。

なので、国際的に緩い水道水の基準値というものを、いわゆる後押ししてしまうような数値を今回出していて、その過程で、大量の論文が不採用だったという。なんで水道水の値が緩いのかっていうのを辿っていくと、このPFASワーキンググループの大量の論文の不採用にたどり着く、という話にはなってきます。」

大量の論文を不採用にして出した、摂取許容量を論拠にして算出される数字。これが、今、国が設定しようと動いている水道水の水質基準の基準値になってしまうんです。

アメリカとのあまりの数値の違いに本当にびっくりしますよね。

松島さんは、食品安全委員会に重要とされたのに不採用になった文献を11個リストアップし、その理由を説明してほしい、と取材しましたが、その内2つは、他の文献との重複したから、と説明がありましたが、残り9つは不採用にするための議論をしたわけではないので記録が無く説明は難しい、ということで、取材には対応してくれたが、満足のいく回答は得られませんでした。

なぜ、その参考文献を採用しなかったのか、市民は知ることができないので、過程が不透明であるがゆえに、出された結果が本当に正しいのか、不安になりますよね、と。

まず結論ありき、後付けの理由

何年もこのPFASの問題を追いかけて取材を続ける中で、どんなことを感じているのか、最後に松島さんに聞きました。

東京新聞社会部 松島京太記者

「議論の積み重ねで本当にPFASの政策を決めているのかな、というところがすごく疑問に思う所が多いですね、今回の話だけではないです。

例えば、PFASの血液検査を、例えば東京の多摩地域や沖縄では、もう汚染というのは明らかに発覚しているにも関わらず、国というのは地域的な血液検査をやろうとしないんですね。まあ、その理由として色んな理由を付けるんですけれども、まずやらないという結論があり、その理由を脚色していくと言いますか、後から付けていく。

今回の話も推測の域は出ないんですけれども、緩い水道水の基準値というものがゴールにあって、それに理由をどんどん付けていくみたいな、まず先にゴールがあって、そこに向けて何かしら理由を付けていくという、順序が逆なんじゃないのかな、本末転倒なんじゃないかな、というのが、すごく感じますね。

PFASの取材をし始めてから、国の方でも専門家の会議が立ち上がったり、自治体でも動きはあるんですけれども、結局そのゴールのところは変わらない、動いてる感じが、ただするだけだなというのがあって、忸怩たる思いがします。」

今回、大量の文献を不採用にして、食品安全委員会が出したPFASの評価値についても、4000件のパブリックコメントが集まり、担当者によれば99%批判の声だったそうなのですが、それでもその声は、ほぼ反映させていない。

私たち国民の健康に直接影響がある話なのに、結論ありきで理由が後付けされているという感じが、長い取材でずっとしているという話は、かなりショックでした。

汚染源の解明などは、二年前に取り上げた時とほとんど変わらず、進んでいない、PFASの問題。今後も国の対応にしっかり目を向けておかないといけませんね。


(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:近堂かおり)

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