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「市街地でクマに発砲」は本当にできる?緊急銃猟スタートも決断のスピードは…

Sitakke

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ヒグマの出没が相次ぐ中、9月1日から、これまで禁止されていた「市街地での発砲」ができるようになりました。
新たな制度「緊急銃猟」を深掘りします。

連載「じぶんごとニュース」

命に関わる事故も

8月の江差町では夜の畑にヒグマが現れ、スイカをむさぼりました。
畑の所有者からは落胆の声が…。

「残っていたスイカ19個、何もない。全部終了。早く本当に捕獲してほしい…」

北海道内で連日確認されているヒグマの出没。
7月には、北海道南部の福島町で新聞配達員の男性がヒグマに襲われ、命を落とす事故も起きてしまいました。

ヒグマの行動範囲がヒトの生活圏にも及ぶ中、9月1日から始まったのが、市町村の判断で、ハンターが発砲できる「緊急銃猟」です。

「緊急銃猟」とは?

訓練

8月、札幌市で「緊急銃猟」の訓練が行われました。

緊急銃猟とは、クマやイノシシなどが人の生活圏に出没したときに、「危害を防止する措置が緊急に必要」なことなどの条件を満たせば、市町村の判断で発砲できる制度です。

これまでは、市街地での猟銃の使用は禁止されていて、緊急時に限り、警察官の命令などで認められていました。
しかし相次ぐヒグマの出没に迅速に対応する必要から、法律が改正されました。

ただ、肝心の“スピード”をめぐって、早速、課題が。

条件が整ってから…では「クマが逃げてしまう」

訓練

札幌市環境共生担当課の坂田一人さんは「避難誘導や交通整理にかなりの時間を要することが分かった。速やかに済むように人手をかき集めていきたい」と話します。

江差町の訓練でも、ハンターに発砲を委託するまでに安全確保や書類の準備など、多くの手続きが必要になりました。

安全確保のすべての条件がそろってから、という担当者の話に、ハンターからは「クマが逃げてしまう…」と落胆の声が聞かれます。

「ハンターの責任」になるのでは…

新たな発砲の制度に、懸念を抱いている人もいます。
砂川市のハンター、池上治男さんです。

池上さんは、2018年、砂川市の要請で市街地に出没したクマを猟銃で駆除。
しかしその後、「住宅に銃弾が届く恐れがあった」として、北海道公安委員会に「猟銃所持の許可」を取り消されました。

現在も北海道を相手に裁判で争っています。

池上さんは、市町村判断による新たな制度でも、ハンターの責任が問われる事態が起きないかと、心配しているのです。

「ハンターは不安どころじゃない、緊急銃猟は無理…。私のような目に遭ったら…ということをみんな思っている。最終的に要請がかかるハンターの身の安全、保障がどうなるのかというところを、決着してもらわないとだめだと思う」


安心して発砲できるようにしてほしい

現場の不安の声を受けて、北海道猟友会はすべての支部に向けて、「市町村から要請を受けたとしても、状況を確認して発砲に疑念がある場合はハンターの判断で中断または中止できる」と通知しました。

北海道猟友会の堀江篤会長は「撃ったあとどうなるかの心配をなくしてほしい。安心して発砲・捕獲できる体制をしっかりと作ってほしい」と話します。

人里での迅速な駆除には、関係者の連携とハンターが安心して発砲できる環境づくりが求められています。

「緊急銃猟」制度スタートでどう変わる?

緊急銃猟によって、クマの駆除がどう変わるのか、整理しました。

これまでは、市街地での猟銃発砲は禁止されていました。
ただし、人への危険が生じた緊急時には、警察官の命令によって使用できるルールでした。

9月1日からは、市街地や農地、商業施設など「人の生活圏」で使用が可能になり、市町村の判断でも撃てるようになりました。

これまで禁止されていたヒトの生活圏での発砲ができ、撃つかを市町村が判断するので、駆除の迅速化が期待されます。
これまでの警察官の命令・判断も適用されるということです。

どんなときに撃つことができる?

どんなときに撃てるのかについて、4つの条件全てを満たす必要があります。

1)ヒトの生活圏にクマが侵入
2)ヒトへの危害を防止する措置が緊急に必要
3)銃猟以外の方法で駆除が難しい
4)銃猟によって人の生命・身体に危害が及ぶおそれがない

HBCテレビ「今日ドキッ!」のスタジオでは、ゲストの平野龍一さんが「できるようになったことと、実際に発砲する許可を与えることは、次元の違う話だと思う」とコメント。

「自治体の担当者も、判断のスピードや適正な判断をしているかどうかについては、決断ができるかどうかが肝になってくる」と話しました。

専門家の見解は

◎駆除について
「クマの背後に山があるなど安全に発砲できる状況では、速やかな発砲ができ、大きな前進」

◎ただし、限界も…
「札幌市の住宅街のような本当の街中では、周りへの被害を考えると発砲は困難」

◎制度を有効に活用するためには…
「事前に、市町村と警察、猟友会などが役割分担や課題を十分話し合っておくことが大事」

クマについて「知ることで防げる被害」もあります。HBC北海道放送の特設サイト「クマここ」では、北海道内から集められた教訓や知恵を紹介しています。

捕獲だけで問題が解決できるわけではない

ゲストコメンテーターの満島てる子さんは「『緊急銃猟』によって、実際に出動する人たちの安全や安心感が担保できているのかということが気になる」と話します。

「街中にハンターが出動してクマを撃つことになったときに、発砲の責任はだれが負ってくれるのかというのが大事だと思うし、クマと向き合うハンターの皆さんだけだとおかしい」

「システムに問題があるので、猟友会の人たちも発砲の中断が可能と通達しているわけで、制度を作る以外に、たくさんやらなければいけないことがあると思う」

酪農学園大学の佐藤喜和教授は「捕獲だけですべての問題を解決できるわけではありません。クマをひきつけないごみや畑の管理など、クマに強い地域づくりが安全な暮らしにつながる」と話しています。

連載「じぶんごとニュース」

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年9月1日)の情報に基づきます。

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