不動産情報ライブラリのAPI活用事例【後編】 API詳細と内閣官房主催「イチBizアワード2025」連携を紹介
国土交通省の不動産情報ライブラリ
国土交通省では、円滑な不動産取引を促進する観点から、オープンデータ等を活用し、不動産取引の際に参考となる情報(価格、周辺施設、防災、都市計画など)を重ね合わせて表示できるWebGIS「不動産情報ライブラリ」の運用を令和6(2024)年4月より行っている。
不動産取引の際に参考となる情報の多くは、国や地方自治体などの複数の機関から、さまざまな形式で公開されているが、不動産情報ライブラリは、これらの情報を一元的に集約しており、誰でも簡単に無料で閲覧できる。
また、地図上でのデータ閲覧だけではなく、掲載情報の一部をAPIで取得できる。
不動産情報ライブラリ:https://www.reinfolib.mlit.go.jp/
今回は、後編としてAPIで呼び出したデータをGISソフトのQGISで表示する方法や、実際の活用事例についてご紹介する。
QGISは、オープンソースの地理情報システム(GIS)ソフトウェアとして、誰でも無料で利用できるツールでAPIで呼び出した結果を視覚的に確認できるほか、簡単な分析も行うことができるため、ぜひ最後まで読んでほしい。
今回も技術的な話が多くなるが、ご容赦いただきたい。
なお、前編はAPIの種類や特長等を紹介しているので、ご興味ある方は前編をチェックしてほしい。
APIの利用方法。APIキー取得など申請方法
前編でも紹介したが、不動産情報ライブラリのAPI利用にはAPIキーが必要となるため、まずはAPIキーの利用申請を行う。下記のURLから申請をしてほしい。
https://www.reinfolib.mlit.go.jp/api/request/
法人および法人以外の団体と個人で申請項目が異なるので注意が必要である。項目の詳細は下記を確認。
https://www.reinfolib.mlit.go.jp/help/apiManual/#titleApi2
なお、こちらの申請情報は、不動産情報ライブラリのユーザヒアリングなどに利用されている。ユーザヒアリングの結果は、不動産情報ライブラリの改良(新規コンテンツの追加やサイトの使いやすさの改善等)を検討するうえで参考にしている。いつかヒアリングの連絡が届くかもしれないので、ぜひ正しい情報の入力をお願いしたい。
不動産情報ライブラリのAPIの利用方法、詳細は下記URLを参照。
https://www.reinfolib.mlit.go.jp/help/apiManual/
APIの活用方法。パラメータ・QGIS設定方法
不動産情報ライブラリのAPIで取得したデータは活用方法が広がっているが、今回はその中の一例として、地図上で結果を確認する方法を紹介する。
今回は、誰でも無料で利用できるQGISを用いて、地価公示のAPIの結果を表示する。QGISの利用方法やインストール、詳細は下記のURLを確認して準備してほしい。
https://qgis.org/
①不動産情報ライブラリのAPI操作説明ページから、表示したいデータを選択する。今回は地価公示のポイントAPIを選択することとし、必要なURLのパラメータ等を設定する。
地価公示のAPIの詳細は、下記URLを確認。
https://www.reinfolib.mlit.go.jp/help/apiManual/#titleApi8
QGISで表示するため、
・データ形式はpbf
・ズームレベルとタイル座標は変数 z={Z}&x={x}&y={y}
・対象年(year)を2025年
・地価情報区分コード(priceClassification)は国土交通省地価公示のみを指定
・用途区分コード(useCategoryCode)は住宅地、宅地見込地、商業地
として以下のとおり設定する。
https://www.reinfolib.mlit.go.jp/ex-api/external/XPT002?response_format=pbf&z={z}&x={x}&y={y}&year=2025&priceClassification=0&useCategoryCode=00,03,05
②QGISを起動し、ブラウザ「Vector Tiles」から右クリックで「新規一般接続」を選択(㋐)して、ベクトルタイル接続画面(㋑)で名前(任意)とURLに呼び出しパラメータを指定するほか、最小/最大ズームレベルからチェックを外す(㋒)※ベクトルタイル接続設定では、必ず最小ズームレベルを設定しないようする。
③ベクトルタイル接続画面内の「設定」の「認証」で十字マークをクリックし(㋐)認証画面で、名前(任意)とAPIキーを設定(㋑)して「保存」を押す(㋒)。
Header Key:Ocp-Apim-Subscription-Key
Header値:自分のAPIキーを入力
APIの活用方法。QGIS表示について
④「接続の詳細」のウィンドウに戻るので、そこでもOKを押す(㋐)。すると「Vector Tiles」に「地価公示ポイント」が追加される(㋑)。
⑤「地価公示ポイント」をダブルクリックしてレイヤに追加する(㋐)と、国土交通省地価公示のポイントが地図上に表示されるので、各ポイントを「地物情報表示」ボタンで表示すると、詳細(㋑)が確認可能となる。パラメータ設定により、今回は2025年(令和7年度)の国土交通省地価公示のみが表示されている。
⑥この状態では、背景地図がないので、地理院地図を背景地図として読み込む。設定方法は下記のURLを参照する。
https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/other/QGIS_manual.pdf#page=1
⑦APIで呼び出したベクトルデータについては、色情報がないため各データの色はQGIS側でランダムに決められてしまう。
色を自分で指定したい場合は、Style.jsonを作成する必要がある。Style.jsonの設定例は下記の通り。
QGISを利用することで、不動産情報ライブラリのAPIで取得した情報と、自社や自身で収集した情報を重ねあわせて表示できるようになり、活用方法が広がる。前編~後編を通して、不動産情報ライブラリのAPIの利用法を紹介した。
ぜひ、さまざまに試してもらい新しい使い方を発見してほしい。
API活用事例「全国版スマートマップ」
API配信機能は、多様なサービスで利用開始されており、民間事業者のサービスを通じて不動産取引の円滑化に貢献している。今回は、前回、前々回で紹介した活用事例のほか、APIを自治体向けのサービスで提供している事例を紹介する。
「全国版スマートマップ」(株式会社Geolonia)
株式会社Geoloniaの「スマートマップ」は、自治体が保有する防災・福祉・都市計画・教育などの地理情報を、インターネットを通じて住民へわかりやすく届けるクラウド型のGISサービスである。基礎的な情報として不動産情報ライブラリの情報活用を計画中で「全国版スマートマップ」として下記URLのとおり、Githubで試作版を公開している。
Github 試作版
自治体をはじめとする行政機関だけでなく民間企業もこの仕組みを利用可能であり、将来的には、行政と民間の両方のデータが集約され、都市に関するあらゆる情報が流通する「デジタルツイン」の実現を目指している。
ビジネスコンテスト「イチBizアワード2025」アイデア募集
内閣官房主催「イチBizアワード2025」に、内閣官房と国土交通省の連携企画として「不動産情報活用部門」が新設され、不動産情報ライブラリで提供する不動産に関するオープンデータを活用したイノベーションのアイデアを募集している。
不動産情報ライブラリのデータを活用しているアイデアであれば誰でも応募が可能で、不動産情報ライブラリのデータを使ったらこんなことができるかも、というアイデアレベルのものから、すでにサービス化したものまで幅広く募集している。
自薦・他薦は問わず、自分のアイデアだけでなく、他のアイデアの推薦も可能なので、周りに良いアイデアがあったらぜひご応募いただきたい。また、一人1アイデアといった制限はなく、複数応募可能になっている。
優秀なアイデアは、1月30日に開催されるG空間EXPOで表彰するほか、各種媒体でも紹介予定のため、ぜひご応募を。
〇「イチBizアワード2025」の詳細はこちら
https://g-idea.go.jp/2025/
募集期間:7月15日(火)~10月31日(金)
〇G空間EXPOはこちら
https://www.g-expo.jp/
「不動産情報ライブラリ」への意見募集
今回は前編に引き続き、不動産情報ライブラリのAPIの具体的な活用方法を紹介した。今後も継続して便利な利用方法を紹介していく予定なので注目してほしい。
不動産情報ライブラリでは、随時アンケートにてご意見を募集している。
掲載してほしいデータやAPI提供してほしいデータがある方はぜひ利用者アンケートに回答をお願いしたい。
アンケートはこちら
https://www.reinfolib.mlit.go.jp/questionnaire/
また、不動産情報ライブラリの活用事例がある場合も、ぜひ上記アンケートのURLからご連絡いただければ幸いである。
■国土交通省「不動産情報ライブラリ」
https://www.reinfolib.mlit.go.jp/