歌い紡いで10回目 女声合唱「アンサンブル・ル・シエル」コンサート 家族の支えにも感謝
釜石市の女声合唱団、アンサンブル・ル・シエル(中村玲代表、12人)の10回目のコンサートが1日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。2013年1月に結成した同団は、働く女性たちが中心メンバー。結婚、出産、子育てとライフスタイルの変化にも柔軟に対応しながら、大好きな合唱を続けている。今回はこれまで歌ってきた思い出の曲を中心にプログラムを組んだ。メンバーらは仲間と歌声を重ねる喜び、支えてくれる家族への感謝の気持ちをかみしめながら、美しいハーモニーを響かせた。
コンサートはゲスト出演のバイオリン演奏を含む4部構成。指導にあたる木下佳子さんの指揮で歌声を届けた。1部はメンバーの思い入れのある5曲を披露。14年3月の初めてのコンサートで歌った「ぜんぶ」、東日本大震災後、歌で日本をつなげようと企画された「歌おうNIPPON」プロジェクトのために書き下ろされた「ほらね、」など心に残る曲を歌った。
2部は「NHK連続テレビ小説主題歌 この10年」と題し、“朝ドラ”でなじみの楽曲を聞かせた。「にじいろ」=花子とアン(2014年)から、現在放送中の「虎に翼」の主題歌「さよーならまたいつか!」まで、有名アーティストが歌う5曲を選曲。独唱を交えたステージで楽しませた。最後は、活動開始後に生まれたメンバーの子どもたちがダンスで共演。それぞれの10年が曲とともによみがえった。
休憩をはさんだ3部は、遠野市でバイオリン教室を主宰し、演奏家としても活躍する伊禮しおりさんのステージ。「タイスの瞑想曲」「情熱大陸」など4曲をプロならではの高度な技術と表現力で聞かせ、観客を魅了した。伊禮さんは震災後、被災した釜石・大槌地区の子どもたちにもバイオリンを教え、犠牲者の慰霊の場でも演奏が披露されている。4部は覚和歌子さん(詩)、横山潤子さん(曲)のコンビによる混声合唱曲集から3曲を披露。「その木々は緑」は伊禮さんがバイオリンでコラボした。
会場では約80人の観客が聞き入った。2回目の鑑賞という唐丹町の武藤秀郷さん(49)は「すごく溶け合った美しいハーモニーに癒やされた。心が軽くなったよう。子どもたちのダンスもあり、すてきな演奏会だった」と感激。10回目という一つの節目に「大変なこともいっぱいあったと思うが、ここまで続けてこられたのは本当に素晴らしい。ぜひ、これからも回を重ねていってほしい」と願った。
今回のコンサートには、新メンバー3人も出演した。アルトの平松和佳奈さん(21)は釜石高音楽部出身で昨夏入会。「高校の時よりも難しい曲が多くて不安もあったが、先輩方に導かれ、自分も頑張って歌えた。メンバーの皆さんの音楽や歌うことが大好きという気持ちがすごく伝わってきて、それがハーモニーにも表れている」と話す。「これからも地域に根付いた活動で、音楽を通して何か伝えられるような合唱をしていけたら」と平松さん。
現メンバーは半数が市外在住者。結婚や転勤などで釜石を離れても同団で歌いたいと、遠くは花巻市や八幡平市から駆け付ける。練習に参加しやすいように、月に月曜2回、日曜2回と曜日をずらした練習日を設けている。子育てや仕事の関係で、全員そろっての練習はなかなかできないというが、「今回は特にも10回目ということで、本番に向かう集中力が遺憾なく発揮された」と中村代表(41)。
同団メンバーにはこの10年で計9人の子どもが生まれた。活動開始後に結婚、男児の母になった中村代表は「好きな合唱を続けられるのは家族の支えがあってこそ。ありがたみを感じている」と感謝の思いを口にする。最近、同団のインスタグラムも開設した。「若い世代にもぜひ聞きにきてほしい。コンサート情報の発信と合わせ、子どもがいても活動できるということをアピールしていきたい」と話した。
同団は21日、姉妹都市提携30周年を記念して訪問するフランス、ディーニュ・レ・バン市代表団の歓迎レセプションでフランス国歌を歌う予定。