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琉球ゴールデンキングスに見えた明確な「課題」と、その向き合い方 開幕カードでは桶谷大HCの“妙手”も…

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新シーズンを迎え、三遠ネオフェニックスとの開幕2連戦に臨む琉球ゴールデンキングスのメンバー=10月6日、沖縄アリーナ(長嶺真輝撮影)

プロバスケットボールBリーグ1部(B1)の2024ー25シーズンが開幕し、西地区の琉球ゴールデンキングスは10月5、6の両日、ホームの沖縄アリーナに中地区の三遠ネオフェニックスを迎え、開幕2連戦を行った。 初戦は延長にもつれ込む大接戦の末に92ー96で惜敗したが、2戦目は82ー74で勝利。今村佳太やアレン・ダーラムら主力が退団し、新たなチームづくりを進めているキングスにとって、優勝候補の一角に挙げられる三遠を相手に1勝1敗でシーズンのスタートを切ったことは明るい材料と言える。 それは、2戦目の後に桶谷大HCが発したコメントからもうかがえる。 「今シーズンの三遠はファイナルに行くようなチームだと思います。連敗やブローアウト(大差で決着が付くこと)される可能性もあったと思いますが、2戦とも接戦をして、今日はしっかりと勝ち切れた。選手にとっても、コーチ陣にとっても大きな勝利です。チームがまた一丸になれるという意味で、とても価値が大きいと思います」 一方、新チームとしてこれから成熟していく段階にあるため、当然のことながら課題も見えた。最も目に付いたのが「ターンオーバー」の多さである。 英語で表記すると「turnover」。日本語で「ひっくり返る」「転覆」などの意味があり、バスケではシュートミス以外で相手に攻撃権が移るプレーを指す。例えば、ドリブル中にスティールをされたり、パスカットをされたり、自チームの選手が触れたボールがコート外に出てしまったりすることだ。  シーズン開幕前から、桶谷HCが「今シーズンはターンオーバーが勝敗を分けるポイントになる」と語っていた。その視点から、開幕2連戦を振り返る。

延長の勝負どころで連続ターンオーバー 第1戦

初戦は序盤から岸本隆一やビッグマンのケヴェ・アルマ、ジャック・クーリーらを起点に得点を重ね、一進一退の攻防が続いた。スピードが武器の伊藤達哉が加入したことで全体的に前への推進力も増し、第2クオーター(Q)終盤に抜け出す。第3Q開始3分ほどで最大15点のリードを奪った。ターンオーバーに関しては、前半は4つで少なく抑えていた。 しかし、その後に速攻からファンブルしたり、1対1を仕掛けてスティールされたりしてターンオーバーが増え始める。じわじわと追い上げられ、84ー84の同点で延長へ。その後も接戦が続いたが、残り1分ほどの勝負所で岸本のファンブル、ドリブル中に背後からボールをはたかれるアルマのミスとターンオーバーが続き、競り負けた。 最終的なターンオーバーの数は、三遠より3つ多い14回。昨シーズンのキングスの平均がリーグで11位(回数が少ない順)の11.8回で、5分間の延長戦も行ったことを加味すれば、特段多いというわけではない。ただ、勝負所でのターンオーバーが敗因の一つになったことは間違いないだろう。 桶谷HCも試合後、ターンオーバーについて触れた。 「ゲームプランとしては悪くなくて、途中まではいい形で試合を持ってくることができましたが、トランジションでつながれたり、3Pを決められたりしてしまいました。あとはやっぱり、前半少なかったターンオーバーがそこから出てしまい、一番やられたくないところでやられてしまったことです。そういうふわっとしたシーンがなければ、勝ちゲームだったと思います」

桶谷HC「シュートで終わろう」リバウンドの強み生かす

コート上で吠えるジャック・クーリー

第2戦も初戦と似たような展開に。アルマの3Pや植松義也の連続スコアなどで勢いに乗り、第2Q開始約5分の時点で15点差を付けた。しかし、ここから簡単なパスミスやオフェンスファウル、24秒バイオレーションなどで流れを失う。前半だけでターンオーバーが12回に達し、接戦に持ち込まれた。 最終的なターンオーバー数は三遠より3回多い18回に上った。極めて多い数字だが、後半だけでみると6回。前半の半分に抑えて我慢できたことが、競り勝った要因の一つに挙げられる。 試合後、桶谷HCに修正を加えた部分があったのかを問うと、以下の答えが返ってきた。 「三遠はトランジションのチームなので、ターンオーバーをしたら走られてしまいます。第2Qはそういう時間帯があり、シュートを打ち切れなかった。そこでタイムアウトを取って言ったことは、『とりあえずシュートで終わろう』ということだけです。もちろんいいシュートでオフェンスを終えられたら一番いいですが、まずはシュートでさえ終われれば、このチームはリバウンドが強い。それで、後半はみんなアグレッシブにプレーできました」 この試合のリバウンド数は43本対34本。一人で15本を奪取したクーリーに至ってはオフェンスリバウンドで7本、そのうち勝負を決める第4Qだけで3本を掴んでおり、味方の積極性を引き出した。  言わずもがなではあるが、ターンオーバーに関しては相手のディフェンスによる影響も大きく受けるため、コントロールすることは容易ではない。三遠のプレッシャー強度は2戦を通じて極めて高かった。そこで、リバウンドという自分たちの強みに目を向けさせた桶谷HCの指示は、結果的に妙手となった。

脇とアルマは「成長段階」のターンオーバー

現状のターンオーバーの多さは、チームにとって伸びしろの大きさの裏返しでもある。2戦目でターンオーバーが4回だったルーキーシーズンの脇真大、3回だった若手のアルマの存在が、その理由だ。  桶谷HCは「ケヴェは25歳でまだ若いので、ケアレスなターンオーバーがあり、脇もそういう部分があります。ドリブルでのターンオーバーが多く、ファウルが鳴る前提でプレーするのではなく、鳴らない前提でボールキープするということをしないといけない」と話した。その一方で、「成長段階のターンオーバーなので、許容しないといけない」とも言った。  どんな状況だと相手が手を出してくるのか、どういう体の使い方だとボールキープがしやすいのか。簡単なミスを減らすためには、経験が物を言う。  だからこそ、若手のターンオーバーはある程度許容し、成長を促しながら、チームの強みを強調して勝利を目指す。全60試合に及ぶ長いレギュラーシーズンを戦う上で、現状の方向性としては最善と言えるのではないだろうか。  ターンオーバーという課題こそあれど、チームオフェンスに関しては、昨シーズンよりボールが止まる場面は減った印象だ。1戦目の途中で負傷離脱した伊藤を除き、他の10人は2試合とも全員がスコアを記録。1戦目でチームトップの24得点を挙げた岸本も手応えを口にした。  「(連係は)めちゃくちゃ深まっていると思います。プレシーズンからすごくボールが流動的に回って、アリウープとかも増えました。トランジションのポイントも増えてきていて、みんなが少しずつ、それぞれの特徴や強みを理解し始めています。それを生かす場面も増えていきているので、良い雰囲気でやれていると思います」  ついに幕を開けた新シーズン。脇とアルマに限らず、プレータイムが増えている荒川颯と植松の成長、中堅の立ち位置となった松脇圭志のプレーの幅の広がり、昨シーズンは不完全燃焼な成績に終わったヴィック・ローが本領を発揮できるかなど、見どころは多い。若手の成長やチームケミストリーの向上と共に、試合を重ねながら進化を遂げていきたい。

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