『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』マイスチューデント編瀬戸麻沙美さん×小原好美さん対談|姫路紗良のお芝居は、視聴者の方に「何なんだこの子は!?」って思わせられたら勝ち!?
累計発行部数300万部を突破し、昨年(2024年)完結を迎えた鴨志田一先生による小説“青春ブタ野郎シリーズ”。
2018年にTVアニメ化を果たし、2023年に劇場アニメとして公開された『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』をもってアニメも《高校生編》が完結しました。
そして、その続きとなる《大学生編》『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』が、7月5日(土)からTOKYO MXほかで放送中。
アニメイトタイムズではその放送に連動して、出演声優陣へのインタビューを実施。原作における『マイスチューデントの夢を見ない』編の最終回が放送される今回は、桜島麻衣役・瀬戸麻沙美さん&姫路紗良役・小原好美さんが登場です!
小原さん演じる紗良は中々難しいキャラクター。演じる時も共感しづらい部分があったそうですが、その苦労について語ってもらいました。ぜひ『マイスチューデントの夢を見ない』編最終回の視聴前後にチェックしてみてください。
【写真】『青ブタ』マイスチューデント編:瀬戸麻沙美×小原好美インタビュー
小原さんは紗良を親のような目線で見ていたところがある!?
──いよいよマイスチューデント編の結末が描かれます。このエピソード全体の印象や振り返っての感想からお願いできますか?
姫路紗良役・小原好美さん(以下、小原):私の演じる紗良の立ち位置は《大学生編》から新たに登場するキャラクターなので、最初はお邪魔しますみたいな気持ちでした。そこからもうマイスチューデント編の最終回ということで、あっと言う間に時が過ぎた感覚があります。
『青ブタ』はどのキャラクターも個性的で好きなのですが、紗良は「え?ちょっと!?」ってある種の戸惑いを覚えてしまうような子だったので、まずはそんな彼女と向き合うためにどうしたらいいかなって考えました。実際に他のキャストさんたちと掛け合いをしたり、いただいた映像をチェックしたりする中で、改めてこの作品に出演できたのだなと感慨深くもなりました。
実は第1期が放送されていた2018年頃から『青ブタ』のことは知っていたのですが、当時はまだ新人だったので「きっと私は出演できない世界線の作品だろうなぁ」とか「なんか素敵な作品をやっているけど、私が携わることはないだろう」みたいなことを思っていたんです。
当時まだ在籍していたマネージャーさんがこういう作品に出演できたら良いねとは言ってくださっていたのですが、時が経ってオーディションのお話が来た時もどこかで落ちる覚悟があったというか、オーディションを受けられるだけでもありがとうございますという感じで。そんな流れからこの作品のキャラクターを演じる時間軸に自分も生きられることが決まったので、その事実が嬉しかったですね。
ただ、紗良の立ち位置とか他のヒロインのことを考えると楽しい話だねとはならなかったので、色々と複雑な気持ちはあって。そんな気持ちがありつつ、あまり表情変化がないのに中心にいる咲太というキャラクターにワクワクする感覚で紗良を演じていました。
桜島麻衣役・瀬戸麻沙美さん(以下、瀬戸):《大学生編》は『迷えるシンガー』『ナイチンゲール』『マイスチューデント』ときた、訳ですが、みんな個性的なキャラクターばかりで色々な思春期症候群が見られたと思います。
特に紗良の思春期症候群は目に見えて周りの人に被害を及ぼしてしまっている感じが見て取れました。
紗良自身はちょっとプライドが高かったり、ハンター気質があったり、自分が周囲よりもちょっと大人だと思っているあの年頃の子らしい危うさがあるので、このエピソードはヒヤヒヤしながらも見守る感覚でしたね。
──紗良にヒヤヒヤさせられる面もある「マイスチューデント編」ですが、麻衣と咲太が指輪を買いにいくといったふたりの絆が見えるエピソードも見られました。
瀬戸:私は咲太からプレゼントしてもらったというよりも、麻衣がプレゼントさせにいったみたいな感じがしています。アクセサリーショップでVIPルームに通してもらって、そこまでの誘導はするけれど、最後はちゃんと咲太に買ってもらったという形にする。やっぱり麻衣は何枚も上手だなって思いました。彼の立場を考えつつ自分もそれが嬉しいって思えるなんて凄すぎるって衝撃を受けました。
──小原さんは先ほど紗良について戸惑うようなキャラクターだったと語られました。その第1印象の部分について、他にも何か感じられたところはありましたか?
小原:あざとい子だとはオーディション原稿からも見えてきましたし、ちょっと誰かをからかうようなところも見られたので、最初は可愛らしく演じればいいと思ったんです。でもこの作品に出てくる女の子たちはただ可愛いだけじゃなくて、ちゃんとひとりひとりに物語がある。
じゃあこの子は一体……!? と思って読み進めていったら、紗良にもそういうエピソードがあったので、向き合おうとは思いつつ彼女には中々共感するのが難しい一面があったので、不思議な感覚でした。
いつもならそのキャラクターの共感できるところから入って演じることがあるのですが、紗良は誰かとコミュニケーションを取るのが好きっていうところが唯一の共通点だと思うくらいでした。
思わせぶりな態度を取って自分に興味を持たせたておいて、いざ相手が自分に近づこうとするとそんなつもりはありません……みたいなことをする。そういうところも私的にはモヤモヤしてしまいましたし。
でも、だからこそ視聴者の方に「何なんだこの子は!?」って思わせられたら勝ちだなと思ったので、自分でもちょっと引っ掛かるような流れに持っていこうとは思っていました。
それで現場に行ったら、石川さんと瀬戸さんがいてこれは勝てないなって思って邪魔しないようにしていました。自分の出番はマイク前に行くのですが、その時に敵わないなっていう不思議な感覚があって、邪魔したくないなみたいな気持ちになったんです。
──やっぱり咲太と麻衣の間に紗良は入っていけないような感覚があったということでしょうか?
小原:そういう感覚はありましたし、咲太がブレる人だったらそこに面白味を感じるとは思うけれど、そうはならない。ブレずに「僕は基本麻衣さん一筋」みたいな感じがあったので、紗良のお当番回がある後半にかけてよりこの人を振り向かせてやりたいみたいな熱がある方に切り替えられた、持っていけたのかなっていう印象があります。
──瀬戸さんは紗良についてどんな印象を持っていましたか?
瀬戸:現場で紗良がグイグイ来た時に気圧されたというか、「ちょっと?」「なんでこのタイミング?」みたいなモヤモヤをしっかり受け取れたので、今の小原さんの話を聴いてキャラクターをしっかり捉えていて凄いなと思いました。共感しづらいとおっしゃっていたけれど、だからこそきっちり分析された嫌な感じがあったんです。
小原:(※紗良に)ムカつきました?
瀬戸:うん!
小原:やった!
一同:(笑)。
瀬戸:なんかモヤモヤさせられたというか、来ないで欲しいなって思いましたよ。私自身はこんな子がいたら苦手かもしれないって感じましたし。紗良はそういう成功体験があるから自信を持っているのだけれど、私たちからすると危うく見えるというか。そのうち紗良自身が危ない目に遭ってしまいそうな不安も感じました。
──塾で一緒になっている山田健人をはじめ、作中の男性陣の何名かが紗良に好意を持ってそうな空気がありましたよね。
瀬戸:おそらく健人はまだピュアなんでしょうね。
小原:健人の事を紗良は躱してましたよね。
瀬戸:やっぱり大人の男性というか、自分よりもう少し高いところに手を伸ばしたいところがあるのかなって。届くと思った瞬間にすっと手のひらを返すんだけれども。
小原:塾の同級生みたいに自分が手を出せそうなところには余裕を見せていて、咲太も最初は自分ならいけるだろうみたいな感じで見ていたのかなって。でも彼には麻衣さんという相手がいて紗良じゃ敵わない。
私はそこで、自分で紗良を演じているのに彼女に対して自業自得というか、身から出た錆じゃないかと思ってちょっと溜飲が下がったところがあって。ここで痛い思いをしたのだから、この経験から学んでよみたいな親のような目線で見ていたところがあるんです。
演じている時は自分と重ねているんだけれど、客観的にこの作品を楽しんでいる視聴者目線になっていたので、色々な目線で私はこの作品を見ているんだなって実感した瞬間でもありました。
休憩なしで本番収録に移ることもある『青ブタ』の収録現場
──収録現場で印象に残ったエピソードやディレクションもお教えください。
小原:初めて紗良が登場する回でアフレコ現場に行ったのですが、なんだかキャラクターと同じく存在感を放つ役者さんたちが揃っていたので、私も『青ブタ』の世界に入れたんだなぁって思いました。
ただ、それと同時に台本や香盤表からどなたがいらっしゃるか把握していたのに、ちょっと緊張してガタガタ震えるような感覚もあって。もちろんみなさんからプレッシャーを感じることはなくて本当に優しかった。だから、かなり賑やかな現場だなっていう印象は変わらなかったです。むしろ良い現場に自分も携われて良かったなって思ったくらいで。
現場には別室があるのですが、人数が一杯になった時はそちらに移動したり、収録の様子を画面越しに見守れるブースで雑談するでもなくそのまま見守ってくれていたり。関わるひとりひとりがこの作品を大切にしているんだろうなって感じましたね。
後は、この作品は収録にかかる時間がとにかく短かったことも印象に残っています。それだけ役に寄り添っている方ばかりだからこそスムーズに収録が進むのだろうなと思いましたし、様々な方面のプロが集まっているんだなって改めて感じた瞬間でもありました。
瀬戸:麻衣の出番が以前より少なめなこともあるのですが、本当に《大学生編》はほとんどディレクションがなかったので大丈夫なのかなと心配になったくらいです。
色々な取材でスタッフさんとお話する機会があったのですが、仲良くさせてもらっていることもあってかその時に「麻衣はもう出来上がっているから大丈夫」みたいに言っていただいたことがありました。私自身はおこがましすぎるのでそこまで自信を持てずにいるのですが、私の演じる麻衣が麻衣だとまで言ってくださって……。
とはいえ麻衣というキャラクターとの付き合いも長くなってきたので、彼女ならこう動くだろうなみたいなところを掴んできていることもあり、そこは安心してもらえているんだという嬉しさもありました。
むしろ《大学生編》では新たなヒロインが何人も登場するので、そちらのキャラクター作りや各話の物語の作りに集中できる時間が取れたことが良かったと思います。過去作から出演していたキャストのひとりとしては、ちょっと安心した部分でもあったんです。
大体はテスト収録した後にスタッフさんと話し合う時間が設けられていて、そこからのフィードバックを得てから本番に行くことが多いんです。だけど『青ブタ』は本当に収録のテンポが早いので、話数によってはテスト収録後に休憩なしで本番の収録がはじまることもありました。初めて参加したキャストの方は驚いていたんじゃないかなって。
実は私も、もう始まるんだと思ってビックリしていました。台詞量がお当番回の方は凄く多いですし、そんな早いテンポ感の中に色々な状況のシーンがあると、収録の進み具合によっては大変だろうなと思ったんです。
私自身もそこを整理する時に結構時間がかかってしまうタイプだから、ということもあるのですが……でもみなさんしっかり対応されていたから、流石は選ばれし方たちだなと。
──小原さんは今回からの参加ですが、そのあたりは大変だったのでしょうか?
小原:他の役者のみなさんの中でも新キャラ以外の方々は、麻衣さんも含めてキャラクターができあがっていました。だけど私はまだ探り探りでやっている部分があったので、そこに追いつくために焦る気持ちがありました。
だけど、収録の軸になってくださっている音響監督の岩浪美和さんには別作品でお世話になっていて、笑顔で「はい、行くよ!」「もういくからね!」と言われることはわかっていました。そうなるともう「はい、わかりました!」って頑張るしかない。
でも変なプレッシャーはなくて、「『青ブタ』はこういうテンポ感で行くからね」「大丈夫? おいで?」みたいな空気感でした。だから焦って転んでしまうようなこともなく、自然とそのノリに「こういう部活なんですね!」みたいな気持ちで乗っかっていくような心境でした。
──紗良に関してディレクションはあったのでしょうか?
小原:どうやってあざとくするか、「あぁ……この子、またやりよるわ……」みたいに見せたらいいのか模索していた時期は「ちょっと暗いかもしれない」とか「もうちょっと明るくてもいい」っていうディレクションをもらっていました。
この作品はギャグアニメとかではないので、みなさんとても自然で地声に近いところでお芝居をされている印象があって、自分もその流れに身を任せてお芝居をしようかと思ったんです。
男の子をからかう感じとかもアニメっぽくというより、もうちょっと台詞の中で誇張していいよって言っていただいたりしましたし、それで監督さんたちが求めているのはもうちょっと違う紗良なんだと気付いたので、なんだか導いていただいた印象があります。
──確かにPVなどでも自然なお芝居ではあるものの、可愛らしさが際立っていました。
小原:ひとつひとつの台詞が「上目遣いで言ってるな、この子」みたいな。そういう感じが出ていたら良いなとは思っていました。
──きっと男性視聴者は虜になるかと思います。
小原:(※紗良みたいな子には)気を付けてくださいね?
──肝に銘じます。また、紗良は思春期症候群の影響で周囲をかき回しているようなところもあるように思います。こういったシーンは演じてみていかがでしたか?
小原:ひとことで言うなら「まったくもう!」ですね。この《大学生編》においては紗良が一番テンション感が高いというか、明るさのポイントがある子だと思っていました。だから、みんなとは逆のところに行かなきゃいけないんだって凄く意識していました。
ただ「男の子はみんなこの子好きだよね」みたいなキャラクター性は私の引き出しの中にはあまりないものだったので、例えば同じ女の子から「えっ、あの子ってさぁ?」「いつも男子と喋ってない?」「でも彼氏がいるらしいよ」みたいに噂されたりする、こういう子いるよなぁっていうところから引っ張ってきています。
そういう、いつか振り返った時に思い出すような子として演じようと考えたんです。多分私の引き出しだけでやったら、岩波さんから絶対に違うって言われただろうなって思います。
──確か同性からは嫌われるんじゃないのかなとは感じました。そんな紗良は咲太にちょっかいをかけてくる訳ですが、瀬戸さん的に紗良が咲太に接近しようとするシーンはどんな視点でご覧になりましたか?
瀬戸:私の目線だと麻衣がいないところも見えているので、咲太が大学で過ごしているところとかを見て、こんな交友関係を作って……みたいに思うところはありました。だけど咲太はいつも麻衣のことを考えている描写があるし、ちゃんと好意を口に出して伝えてくれる人なので、親しくしている女性は多くても咲太なら大丈夫だっていう感じがあります。
まあ、麻衣からするとやっぱり彼女は自分なので、おそらく面白くないところは少なからずあると思います。だからこそ各キャラクターとの近づき方がそれぞれ違うのかなっていう印象もありますけれど。
広川卯月は独特な子だけど恋愛的に気を引いてやろうとか、奪ってやろうみたいな感じがないので心配していない。赤城郁実は麻衣の知らない時点の咲太、好きな人の過去を知っている部分が気になるけれど、それ以上に思春期症候群で発生する何かが心配。
やっぱり麻衣も年頃の女の子なので、彼氏に近づいてくる女性がいる……ということにちょっと面白くないとは思いつつ、思春期症候群で咲太がまた危ない目に遭うんじゃないかっていう心配のほうが勝っているのかなって思っていますね。
瀬戸さん&小原さんはもし紗良と友達になったとしたら、どうする!?
──今回おふたりのキャラクターの接点は咲太みたいなところがありますが、《大学生編》の咲太をおふたりはどのようにみていますか?
瀬戸:大学生になると交友関係が広がるし、飲み会や新歓とかに顔を出すなんてこれまでの咲太だとそういう催しには行かないんじゃないかって思いますよね。少し周りの様子を窺っているのか、新しいことに挑戦しているのかはわからないけれど、ちょっと輪が広がったのは福山拓海の存在が大きいのかなって。
やっぱり咲太は友達が少ないじゃないですか。国見佑真と双葉理央としか付き合わないで良いと思っていたはずだけど、そんな中でちょっと心を許してもいいのかなと思える同性の友達みたいな人に出会えている。ちょっと柔らかく感じるようになったのは、そういうところから感じられるのかなと。
小原:アニメで見てみると喜怒哀楽がそこまで激しくなく、表情もあまり変わらない印象がありました。だから何を考えているのかわからないと思ったのですが、そこが紗良を演じる私からするとミステリアスに見えたんです。やっぱり高校生の紗良からすると、年上の大学生は魅力がマシマシに見えそうだなって。ただ、話が進むと咲太はやっぱり麻衣さん一筋だとわかったので、好感度は上がりました。
個人的にはそういう何を考えているのかわからなそうなキャラクターは気になるので、より紗良の立ち位置を意識できたというか。紗良がこの人をどうにかしたいという気持ちを持ってしまう、紗良にとって咲太が気になる存在になっていくのはちょっと理解できるなと思いました。それが好きとか恋愛感情かと言ったらまた違いますけど。
──そんな咲太と紗良として掛け合うときはどんなことを意識されていましたか?
小原:多分瀬戸さんもそうだし私もそこは同じなのですが、咲太役の石川界人さんとは作品をご一緒する機会が結構ありまして。だから勝手ながら信頼感をかなり持っているし、初めましてではないので凄く掛け合いがしやすいんです。
どんな温度感で来られるのか隣にいてなんとなく感じられるので、その安心感からあんまりごちゃごちゃした感情はなくて、純粋に石川さん演じる咲太に声をかけるくらいの感覚しかありませんでした。
──ありがとうございます。第10話はこれから放送となりますが、どのような部分が見どころになるのでしょうか?
小原:第10話について紗良の立ち位置で言うなら、思春期症候群を起因とする特殊能力みたいなものを持っていたので、これまでは余裕ぶっているところがありました。それで私にかかればどうとでもなるみたいに思っていたところから、今まで見せてこなかった本当の姿というか紗良の人間らしい部分が見えてきます。その鍵となった麻衣の存在が大きいので、紗良と麻衣のふたりに注目していただけたら嬉しいです。
瀬戸:紗良が今まで出来たことが思うようにいかなくなり、どうしてっていうモヤモヤした感情が生まれます。他人に必要とされている自分……みたいなものが彼女を支えていたようにも思うので、それが失われた時の紗良がどんな表情を見せてくれるのか。そういうところがこのマイスチューデント編の見どころだと思います。ぜひとも紗良を見届けてあげてほしいです。
──ここまでのマイスチューデント編の物語でおふたりが印象に残っているキャラクターもお教えください。
瀬戸:私は加西虎之助と理央の関係性が印象に残っていて好きです。理央は迷惑がっていますけれど、彼女の国見への想いや国見との出来事を知っていると理央も周りの人に魅力的だと思われる素敵な人なんだよって言ってあげたくなります。
理央からすると虎之助は年下の男の子で、しかも自分が教える塾の生徒だから絶対にありえない相手だし迷惑でしかない。だけど、今までずっと彼女のいる親友に切ない片思いをしていた理央を知っているだけに、理央も魅力的で好かれるんだよ、あなたの良さに気付く人がいるんだよって見ているこっちがキュンキュンしちゃうというか。
咲太が余計なことをしているのもいいんですよね。虎之助に入れ知恵をしていて、その犯人が咲太だってわかる理央みたいな親友同士の関係性が見られます。理央はいつも物語の中で大事な言葉を残してくれるし、そういうところに救われることも多いじゃないですか。そんな理央がまた違う表情を見せてくれるのが嬉しかったです!
小原:自分が関わっているところだと塾のクラスメートとのシーンですね。そんなに多くはないのですが、塾で先生をしている咲太を見ることもできるし、健人とか吉和樹里とかは同級生っていうのもあって学生のリアル感も見られます。このあたりが、男の子からと女の子からとで紗良はこうも見え方が違うんだなって如実に理解できるシーンなんですよ。
だけど健人とか樹里のふたりも、こっちは気付いていないけれどお互いに好意があるの?みたいな。その展開が個人的にはちょっと応援したくなったところでした。
他には「自分が失恋したの?」みたいなことを紗良が言うくだりがあるんです。相手が自分に好意を持っていると思っていたのに、そうじゃないとわかった瞬間嫌いになった……みたいな。その時に、本当にこの子はとんでもないなって思ったんです。
瀬戸:虎之助が紗良の幼馴染なんだよね。それで前はカップルじゃんみたいなことを言われて居心地良く思っていたけれど、蓋をあけたら虎之助は自分じゃない人を好きになっていた。そこで「じゃあいいや」みたいにさらっと終わりにするんだよね。
小原:とんでもない思わせぶりなことをされた……みたいに紗良は言うんだけど、「いや、あなたも中々だよ?」って言うね。味わいたいかどうかは別として、こういうのは紗良にしか出せないのかなって思ったら面白いなって思いました。
──紗良のキャラクター性はかなり個性的というか、強烈なのかもしれませんね。
小原:友達にはなりたくないですよね。
瀬戸:どうなんだろう。友達の彼氏に手を出すって感じではないのかな?
小原:他人のものが良いなってなりそうじゃない?
瀬戸:だとしたら怖いな……(笑)。
小原:仲良くなったら彼氏がいるかどうか話すこともありそうですが、もし紗良に相手の写真を見せたりしたらどんどん近づいている……なんてことになりそうじゃないですか。だからもしそんなことになったら、私が間に入って「あなた手を出すでしょやめて!」「あそこは4年ぐらい付き合ってるんだからな!」って言って止めると思います!
瀬戸:そこまでやるのか!
一同:(笑)。
小原:きっと私は最初「この子、怖い!」って思うんじゃないかなと。自分の演じるキャラクターなので愛さなきゃいけないと思うし、実際大好きなのですが……大好きだからこそ「目を覚ませ!」みたいな(笑)。
瀬戸:私はもし紗良と仲良くなったら、絶対そんなことないと思って近づいて痛い目を見るんだろうなぁ。
小原:改心してくれると嬉しいのですが、紗良も思春期症候群が鍵になっているんですよね。より魅力的な女性になるのかどうなのか、私としても素敵な子になっていたらいいなと願っています。
──そろそろ終盤に差し掛かりますので、このあとやってくるサンタクロース編の見どころをネタバレにならない範囲でお教えください。
瀬戸:原作をまだ読んでいない方は、まだたくさんの疑問があるんじゃないかと思います。その疑問は最後の最後まで残り続けるのですが、ミニスカサンタは見た目としてかなりインパクトがありますよね。しかもまだ秘密があるような気配がありますし。私たちが考えるミニスカサンタの行動やその理由みたいなもの、その意味合いが物語に含まれていると思います。そういう謎の部分に注目してもらえればと思います。
目先のところで言えば「岩見沢寧々=霧島透子ってどういうことなの?」という部分ですよね。彼女がどんな女性なのか、どうして思春期症候群になってしまったのか。そこに寄り添ってもらえるとこの後の物語も楽しめると思います!
小原:ティザービジュアルで描かれている、上田麗奈さん演じるミニスカサンタの女の子の話に入ってくるので、ここからこの《大学生編》の中でもさらに大事なエピソードが続いていくんだろうなって。原作を知らない方でも、きっとその予感だけはあると思います。
そして、この作品は女の子たちが出てきても可愛いだけではありません。謎めいていて決まった時にしか現れてくれない。逆に現れて欲しい時にはいなくて、予期せぬ瞬間に現れる。探偵ものではないんだけれど、咲太たちがその正体を探っていく感じが『青ブタ』なんだけどちょっと違う視点で楽しめるポイントになっていると思います。
紗良のエピソードとは全然違う意味でソワソワすると思うし、個人的にはワクワクからだんだん怖くなっていきそうだなとも思っています。謎が多すぎるので、そこも含めて楽しんでいただけたら嬉しいです!
[文・胃の上心臓]