「成功よりも挑戦を追い求めた方が幸福につながる」。ニッポン放送 吉田尚記アナが語る、人生を手段化しない生き方
本業の幹を育てるかたわらで、自分らしい枝を育み、活躍している人の仕事観に迫る連載「肩書+(プラス)」。ニッポン放送の吉田尚記アナウンサーのインタビュー後編となる今回は、多忙を極める吉田さんの仕事術、挑戦と成功の関係、人生を手段化しない生き方など、吉田さんの根源的な人生観に迫りました。
前編:オタク趣味でオンリーワンのアナウンサーへ。ニッポン放送・吉田尚記の働き方
「疲れたから寝る」のではなく、「楽しいから寝る」
──多忙を極める中で心身のバランスを取るために実践していることはありますか?
吉田:まず、好きなことだけをやっていればストレスは溜まりません。数年前にVR(※1)に初めて触れて、スゴいなって思いました。1日に何時間もVRにハマって考えたのは、この世で最もリアルなVRは夢だってことです。それまでは寝る時間がもったいない気持ちもあったけれど、寝ることは楽しいことなんです。 疲れを取るために寝るのではなく、楽しいから寝る。 おかげで今は毎日しっかり8時間寝てますから。
――それは新しい視点ですね。ただ、悪夢を見た場合はどうですか?
吉田:僕は年に数回逮捕される夢を見ますが、悪夢はホラーゲームと同じですよ。しかもノーリスクで楽しめる。 身体を休めるために寝るというのは、起きてる人の発想なんです。 自然界で生物が寝てる状態って、実はかなりヤバい状態なんです。外敵に襲われたら何にもできませんから。では、なぜ生物は寝るのか? 逆転の発想ですが、「生物は寝てるときが自然な状態で、後から起きるというモードを獲得した」という話を聞いて、なるほどと思いました。
――楽しいから寝る。
吉田:そうです。だって寝ることが楽しいんだから、削る理由はないって思ってます。10年以上深夜ラジオを週4で担当していましたが、それがコロナ禍で終了して、寝る時間が取れるようになったタイミングでVRにハマって、そこで寝ることの面白さに気づいたんです。
幸福学の研究により判明した「成功≠幸せ」という事実
――日々の読書やイベント参加など、オタク活動の時間管理はどのようにされていますか?
吉田:大事なのは 「ついで」と「軽率」 です。先日、幕張メッセでとあるゲームのイベントの司会をしたとき、ちょうど隣でワンフェス(※2)が開催されてたんですよ。僕のイベントは15時スタートで、10時くらいにはリハーサルも終わってて5時間くらい空きの時間ができたから、そのまま行ってみたんです。仕事の空き時間を活かして十分に楽しめました。読書については、 本を買ったら初めの数ページだけでも読んでおくこと です。数ページだけでも役に立つことはよくありますから、 完璧にやろうとしない。 小説と違って、学術書や専門書は拾い読みができるのが良い点です。
――「会社の肩書だけでは物足りない、けれども一歩踏み出すのが怖い」と感じている若手ビジネスパーソンが多いと思います。吉田さんからメッセージをいただけますか。
吉田:挑戦したいけれど「怖い」というのであれば、それはやった方が良いです。ありがちですけれど、できない理由はいくらでも見つかりますからね。「小説を書いてみたいなら、なぜ書かないの?」って思います。僕は今、大学院でウェルビーイングを研究していますが、幸福学研究の第一人者のひとりである大石繁宏氏が最近出した『Rich Life まだ知らない景色が人生を豊かにする』(日経BP)という本がものすごく面白いんですよ。みんな「成功しないと幸せにはなれない」と思いがちですが、幸福学の研究によると「成功」と「幸せ」は関係ないことがわかってきたそうです。
成功か失敗かに関わらず、人が挑戦しているときはフロー体験(※3)に入るのですが、この没頭しているときにこそ人間は幸せを感じやすいんです。 成功も失敗も幸せには関係がないけれど、挑戦は幸福を導く。 もちろん、挑戦して成功を目指すのは良いことだけれど、成功が幸福を導くとは限らない。挑戦した時点で丸儲けです。この差は大きいですよね。
人生は手段ではなく、それ自体が目的
――挑戦することに不安はつきものですが、不安の克服法はありますか?
吉田:実はフローの状態に入るためには、不安が必要なんです。フロー状態というのは、簡単に言うと、 緊張系の交感神経とリラックス系の副交感神経のスイッチが同時に入ってる状態 なんです。まず交感神経のスイッチが入ると人間は警戒態勢となって、不安な状態になります。次に副交感神経のスイッチが入るとリラックスできて、要は開き直りの状態になるわけです。つまり、フローに入るためには 「不安→開き直り→フロー状態」 という順を踏むので、不安は必要な要素なんです。
もちろん最初のうちは、僕もラジオの生放送に出るのは怖かったですよ。アナウンサーは、ラジオに出慣れてないゲストをサポートする役割もありますから、責任も生じるわけです。当然不安になりますけれど、生放送の時間は必ずやって来ますから強制的に開き直るしかないんです。
――結果よりも挑戦する過程が大事というお話を聞いて、コミュニケーションでも同じことが言えるように感じました。特にビジネスの場では、コミュニケーションを「手段」として捉える人が多いように思います。
吉田:僕はまさにコミュニケーションの本も出していますが、書店に行くと「一流の雑談は金も人脈も引き寄せる」なんてことが書いてある本があります。僕から言わせれば、 コミュニケーションの目的はコミュニケーションそのもの なんです。ネットでも知られている、漁師と投資家の寓話がありますよね。とある漁師を見た投資家が「良い漁法でたくさん魚を釣れば、もっと儲かるぞ」というアドバイスをするんです。さらに投資家は「たくさん魚を獲ったら市場で売って、会社を設立して悠々自適な人生が過ごせるぞ」と続け、「そのときに君は何をしたいんだ?」と聞いたら漁師は「釣りがしたい」と答える。これはまさにその通りで、みんな自分の人生を手段化しすぎです。 人生は手段ではないですからね。生きることも、寝ることもそれ自体が目的なんです。
恩師の名言「我々はどの自由に囚われるかを選ぶ自由がある」
――では最後に、吉田さんの活動を総括するような「自分だけの肩書」を作るとしたら、どんな言葉になりますか?
吉田:以前、学者でもある芸人のサンキュータツオさんに 「吉田さんはアナウンサーを前振りにして生きている」 と言われたことがあります。アナウンサーなのに本を書いたり、アナウンサーなのにVTuberをやったり、アナウンサーなのにマンガ大賞を立ち上げたり……、そう考えると 「アナウンサーなのに○○」 ですね。
大学のゼミの先生が「我々は自由だけれども、完全に何やってもいいわけではなく、どの不自由に囚われるかを選ぶ自由がある」ということを話していて、本当にその通りだなと。例えば、僕がニッポン放送の社長になったとしても、まあそんなことは絶対ありえないですけど、社長としてできることはいろいろ限られるんですよ。 世の中に完全な自由なんてないのだから、自分の納得できる不自由に囚われることを選ぶしかない。 僕はそう思います。
前編:オタク趣味でオンリーワンのアナウンサーへ。ニッポン放送・吉田尚記の働き方
プロフィール
吉田尚記(よしだひさのり)
1975年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、1999年ニッポン放送入社。2011年に「第49回ギャラクシー賞」で「DJパーソナリティ賞」を受賞。マンガ、アニメ、アイドル、デジタル関係に精通し、年間100本以上のイベント司会や、2008年から始まった「マンガ大賞」の発起人・実行委員を務めるなど、ラジオやアナウンサーの枠にとどまらない活動を行っている。共著を含め13冊の書籍を刊行し、ジャンルはコミュニケーション・メディア論・アドラー心理学・フロー理論・ウェルビーイングなど多岐にわたる。
2025年12月14日(日)に、銀座・BASE GRANBELLにて生誕イベント「GOBOU FES. 2025 - 吉田尚記 50th Anniversary -」を開催する。詳細はこちら(外部サイトに遷移します)。
X(旧Twitter) @yoshidahisanori
取材・文:松山タカシ
撮影:fort 岩田慶
編集:求人ボックスジャーナル編集部 内藤瑠那
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