“中央”という言葉の使われ方
9月6日(金)、ニュースキャスター・長野智子がパーソナリティを務めるラジオ番組「長野智子アップデート」(文化放送・15時30分~17時)が放送。午後4時台「ニュースアップデート」のコーナーで、作家・絲山秋子氏に「中央と地方」というテーマで話を伺った。
長野智子「この“中央と地方”というのは、どうして選ばれたんですか?テーマとして」
絲山秋子「この“中央”という言葉にすごく引っかかってビックリしていて。中央って、たとえば官庁とか行政用語では中央と地方って使われますけど、住んでいる人からなぜ中央っていう言葉が出てきたんだろうなって。自分も東京出身で、大学を出てからはずっと地方に住んでいますけど、学生時代まで23年間東京に住んでいた頃は、自分が日本の中心にいて、すごくバランスよくいろんな地方があって、みんな東京を見ているみたいな、そういうふうに思い込んでしまうことがあるんだよなっていうことを久しぶりに思い出した。“東京と地方”でもなく“都市と地方”でもなく“中央”っていう言葉が文化放送さんから出てきたことに『おっ、さすが東京の局』と思いました」
鈴木敏夫(文化放送解説委員)「絲山さんがね、いま群馬にお住まいということで、東京から見た群馬とか、群馬から見た東京はどういうふうに見えるかなぁとか、そのあたりが(今回のテーマの)元々の発想というか、きっかけだったんですよね」
長野「あたしはずっと東京(在住)なんですけど、絲山さんが群馬に住んで初めて感じた、それまで23年間感じてきた東京都民としての絲山さんの感情とどう違ったんですか?もうちょっと詳しく伺いたいです」
絲山「ほんとにお恥ずかしいんですけど、私は就職して最初の配属地が福岡だったんですよ。で、大学時代までそんなに九州の人は知らなくて、たまたま大学で会った九州の人がちょっとあんまり自分と合わない人が3人くらい連続でいて。そういう意味で『九州の人って、あたし合わないな』と勝手に思っていたんですね。でも実際に行ってみたら全然そんなことはなくて。当たり前ですよね。これでちょっと思うのが、たとえば鈴木さんっていう名字の方に3人続けて会って、もし自分に合わなかったとしても『世の中(全員)の鈴木は自分に合わないな』って普通は思わないですよね?」
鈴木「あっ、なるほど」
長野「個人個人ですもんね?」
絲山「そう。でもそれが何か一つの地域だと、たとえば日本人、まぁ1人か2人しか知らない日本人と会って『日本は嫌いだ』って思っている方もいっぱいいるでしょうし、逆に、こちらが『この国は苦手だ』って思うことがありますよね。で、すごくやっぱり自分自身が『みんなが東京に合わせてくれて当たり前』みたいに子供の時なんかは思っていて、そういうことをすごく恥ずかしいなと思って。だからといって、人に『これをやめてください』とか『あれやめてください』って言うために今日出てきたわけじゃないんです」
長野「“地方”という言葉は抵抗あるんですか?」
絲山「いや、全然ないですよ。地方でも田舎でも全然ないです。でも地方に対する相手が“中央”って言われるとなんか統括されているみたいじゃないですか」
長野「いや、ほんとそうですよ」
絲山「あたしたちはそちらに支配されているわけではないのに、なんか肩を並べている感じがしないんですよね、中央っていう言葉を使われると。たぶん今回のテーマはたまたまそのタイトルを付けなきゃいけなくて、そうなっただけだとは思うんですけども(笑)」