待ちに待った春がようやく山に来た【穴澤賢の犬のはなし】
先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。
6月になり、ようやく暖かくなってきた。「今頃?」と思うかもしれないが、標高1400メートルでは5月までちょくちょくストーブをつけるほど寒いのだ。ちなみに今年5月9日には雪がちらついた。さすがに積りはしなかったが、平地と比べると常に10℃ほど低い。
肌寒さを感じる5月から暖かい6月へ
5月後半から新緑がちらほら顔を出し始め、それがみるみる増えて日陰が増えていく。そして6月に入ると、晴れた日は暖かく感じるようになる。といっても日中でもまだ羽織るものは必要で、夜は厚手のパーカーなどを着るほど肌寒い。
2023年11月、八ケ岳に完全移住して長い冬を過ごしたが、待ちわびた季節がやって来る。冬は冬で嫌いではないが、なんといっても八ケ岳の夏は最高だ。気温が低くエアコンが必要ないのはもちろんだが(そもそも付いてない)、湿度も低い。だから真夏でも蒸し暑さは感じない。
ちなみに標高が高いせいか、蚊がいない。夜中に耳元でプ〜ンとされることもなければ、刺されてイラつくこともない。これは地味にうれしい。
何より、犬飼いなら皆が背負う「早起き重圧」から逃れられる。昨年まで毎朝5時に飛び起きて、ダルそうな大福を急かして散歩に行っていたが、もうしなくていい。夕方の散歩も気温が下がるのを待たなくていい。この解放感は犬飼いなら想像できるのではないだろうか。山に移住することを決めた最大の要因はそれである。
山の環境は犬もうれしい?
山で暮らすようになってもうひとつうれしいのは、散歩での大福の足取りが軽くなったことだ。鎌倉・腰越では毎朝近くの海辺を散歩していたが、彼らにとって砂浜は用を足す場所でしかなく、ウンチをしたらすぐ「帰る」となり20分程度だったのが、山に来てからはあちこちクンクンとニオイをかぎながら1時間近く歩く。
毎朝歩くコースは彼らに任せて丸山の森別荘地の中を歩いているが、後ろ姿がなんだか楽しそうで腰越の頃とは全然違う。毎日砂浜を散歩するのも結構ぜいたくだと思うが、彼らは山の方が好きなのだろう。動きが少し若返った気がするし、毎朝1時間歩くのは私もいい運動になる。
ただ、腰越時代と変わらないことがある。それは、朝なかなか起きないことだ。犬はだいたい早起きで「散歩行こうよ」と催促してくるものだと思っていたが(富士丸がそうだった)、大福は全然起きない。いつも私が一番早く起きて、次に妻、それでも起きてこないから「散歩行くぞー!」と呼ぶとまず福助が降りてきて、大吉は再三呼んでようやく最後に降りてくる。この順番はずっと一緒だ。
それでもこれからは毎朝5時に叩き起こして迷惑そうな顔をされることも、夕方は「ねぇ散歩まだ圧」を背中に感じながら気温が下がるのを待つこともなくなると思うと、ずいぶん気が楽だ。
もちろん、冬は寒い山の家
こう書くと、山暮らしのすべてが良く感じるかもしれないが、そうでもない。平地と比べると気温が常に10℃低いということは、冬はそれだけ寒い。マイナス15℃になる日もある。夏場はエアコンを使わないから電気代を気にしなくていいが、冬は灯油代が月5万円になることもあった(定住するまで知らなかった)。
ただ、以前書いたように、冬の八ケ岳もそれなりにいい。なんといっても、犬は暑さには弱いが、寒さはわりと平気なので問題はない。彼らのことを考えると、やはり移住してよかったと思う。山に興味なんてなかったし、犬と暮らしていなければ絶対やらなかったと思うけど。