Yahoo! JAPAN

綿矢りさ「小説の1行目には主人公の心情が1番濃く出ている」

TBSラジオ

1月19日放送回のゲストは、作家の綿矢りささんでした。

砂鉄:「綿矢さんに自分が担当しているラジオにゲストに来ていただくってのは、非常に感慨深いものがございまして…」

スタジオにお招きしてすぐにこう話し始めた砂鉄さん。
前週の放送では綿矢さんのことを「ある意味、武田砂鉄を生んだ人と思っている。」とも話していました。その理由とは…?

砂鉄:「僕、河出書房新社という出版社に10年程前まで10年間ぐらいいたんですけど、2004年の新卒採用で2005年に入ったんですが、河出書房ってそれまで景気があまりよろしくなくて、新卒採用というものをやっていなかったんですよ。それが綿矢さんの『蹴りたい背中』というのが大ベストセラーになって新卒採用が始まって、それによって何とか会社に入れたということで。僕いろんな出版社を受けていたんですけども…15社20社ぐらい受けて、最後に残されたのが河出書房だったんですけど、そう考えると本当に綿矢さんのお陰ですよ(笑)」

綿矢:「(笑)私も河出書房さんのお陰でデビュー出来たんで。」

砂鉄:「新入社員の時に何かのパーティーで綿矢さんをお見かけした時に起立しまして。遠くから。あの方のお陰で採用が生まれたんだというふうに(笑)」

“武田砂鉄を生んだ人”が綿矢りささんなのは間違っていないかもしれません!

感熱紙で応募した綿矢さんとボディーガードの砂鉄さん

河出書房新社が主催している『文藝賞』の第38回に『インストール』で受賞した綿矢さん。受賞当時は17歳という若さでした。

砂鉄:「文藝賞という小説の賞に応募されて作家さんになられたわけですけど、いろいろと賞があるじゃないですか。なんで文藝賞だったんですか?」
当時のことを聞いてみると、お二人の貴重なお話を聞けました。

綿矢:「当時”J文学”でしたっけ。若い小説家を探しているみたいな特集が多くて。私は文芸誌っていうのはそれまであんまり読んだことがなかったんですけど、いろんな文芸誌を見て、当時まだ10代だったから、この文芸誌なら私を必要としてくれるかもしれないと思って、それで応募しました。」

砂鉄:「僕も『文藝』という雑誌に編集部でいたことがあるんですが、先輩に聞いた時に、綿矢さんの応募してくる原稿が不思議なレイアウトだったっていう話を聞いたんですよね。」

綿矢:「パソコンっていう物も無かったんですよね、あの頃の家庭って。それでMacの古いのを使って感熱紙に出力して。応募期限過ぎて届いたって最終的に聞いたんですけど、そんな感じで送りつけた物で、本当に体裁が整っていなくて。よく読んでくれたなって今では思います。」

砂鉄:「自分の家で出来る範囲の状態を整えて送ったっていうことなんですね。」

綿矢:「持っている物全てを使って書きました。」

砂鉄:「それを編集部の人が見て、そっからスタートしたっていうことですもんね。」

綿矢:「そうですね。それでサイン会とかやらせてもらって。武田さんも付いてくださったことありましたよね。」

砂鉄:「なんならボディーガードみたいなことしてましたからね。」

綿矢:「他の人より背が高いから頼りがいがあるな、みたいな感じのイメージが。」

砂鉄:「実際何かあったら何が出来るか分からないですけど、見た目は大きな人がいるなっていう。」

綿矢:「スーツ着られてビシッとされるとかなり迫力のある。そんな強面じゃないけど存在感がある感じで。」

砂鉄:「あの時、いろいろ打ち合わせしましたよ。もし何かワ―って来る人がいたらどうしようかみたいな。“そしたらお前が出ていくんだぞ!はい!”みたいなことは言っていましたけど…もう15年、20年近く前ですけど、本当に恐縮でございます。」

綿矢りさ作品の特徴に迫る!

綿矢さんは昨年12月に新刊『パッキパキ北京』を発売しました。

―あらすじ―
コロナ禍の北京で単身赴任中の夫から、一緒に暮らそうと乞われた菖蒲(アヤメ)。愛犬ペイペイを携えしぶしぶ中国に渡るが、「人生エンジョイ勢」を極める菖蒲、タダじゃ絶対に転ばない。過酷な隔離期間も難なくクリアし、現地の高級料理から超絶ローカルフードまで食べまくり、極寒のなか新春お祭り騒ぎ「春節」を堪能する。街のカオスすぎる交通事情の把握や、北京っ子たちの生態調査も欠かさない。これぞ、貪欲駐妻ライフ!北京を誰よりもフラットに「視察」する菖蒲がたどり着く境地とは……?

綿矢さんご自身も2022年の終わり頃から半年ほど北京に住まわれて、その経験が今作のきっかけとなりました。主人公の菖蒲は、綿矢さんの性格とは正反対のどんどん外に飛び出していく人物だそう。その思いとは…

綿矢:「海外とかだったら、自分の領地じゃないからっていうことで萎縮してしまう人の方が多いと思うんですけど、海外でもまるで自分が今まで生きてきた地と同じように我が物顔で振る舞うっていうような人を書くのは、自分が北京に行った時に結構引っ込み思案になっちゃって、自分は外国人だからっていう感じで物怖じしていたところがあって、そのストレスもあって、主人公はもっとはじけて、北京を楽しんで欲しいなと思って書きました。」

また、綿矢さんの作品の特徴についても聞いてみました。

砂鉄:「綿矢さんの小説の書き出し方ってなんでこんなに印象的・特徴的なんだろうって思うことが多くて。1行目に辿り着くまでの感じっていうのは、いつも似たところがあるのか、それとも毎回違うのか、どんなもんなんですか?」

綿矢:「大体、主人公が勝手に喋り始めることが多くて。1行目というのはそれが一番濃く出てるかな…自分の頭の中で、自分が作り出した人間の話なんですけど、その人の話を耳元で聞いているようなところがあって。それで一番伝えたいみたいなことを1行目に言ってきたりするから、それを書いてる感じです。」

砂鉄:「今回、菖蒲のかつての街頭インタビューの模様が拡散されてしまったというシーンがあって。綿矢さんの作品を読んでいると、所謂デジタルタトゥーとか、映像が流出してしまうシーンって結構あるなと思って。それこそ3作目の『夢を与える』の時にも映像流出みたいのがあったし、『オーラの発表会』の中でもミスコンのエントリーシートが流出したみたいなものがありましたけど、それは書いていて特徴があるなとかって自分で感じることはありますか?」

綿矢:「ありますね。結構キーポイントで。自分でもなんでそれが出てくるのか分からなくて。多分、深層意識とかに…私はちょうどインターネットが流行り始める頃とかにデビューして、作家っていうものになる時にネットが流行って、いろんな情報が明るみに出るようなのが、やっぱまだ怖いのかなって思いますね。XとかInstagramって見る分には楽しいんですけど、自分がやるのが怖いっていうか。作品に何回も書いちゃうっていうのは、やっぱちょっとトラウマみたいなの…デビューの時とか、あるんだろうなって思います。」

綿矢さんの息子さんは信じられる人?!

時間も終わりに差し掛かってきた頃、砂鉄さんはこう切り出しました。

砂鉄:「綿矢さんの息子さんがペッパーくんが嫌いっていうのを知って、お会いしたことはないですけど、信じられる人だなと思いましたね。僕、ペッパーくんって本当に苦手で。なんであんなのが動いてんだと思うんですけど。綿矢さん自身はペッパーくんは大丈夫なんですか?」

綿矢:「(笑)私は何とも思わなくて、技術が進んだなと思ったんですけど。(中略)どこら辺が嫌なんですか?」

砂鉄:「あんなん直視できないですね。確実にこちらに対して攻撃性を持っている目をしているから。決闘直前みたいな顔しているじゃないですか。」

綿矢:「してます。ドラゴンボールに出てくるフリーザ様に似てますよね。」

砂鉄:「確かにそうかもしれないですね。でもフリーザは自分が悪であるってのが表に出てますけど、あいつ、やや悪をコーティングしてるっていうか、1枚剥がさないと悪だということを明らかにしない感じが…でもそれがもう漏れちゃってるというかね。」

綿矢:「息子は何でペッパーくんが嫌になったかっていったら、電池切れの時を見てしまったんですよね。表でキビキビ働いてる姿じゃなくて、裏で2~3体肩を落として真っ暗になって、布を肩から掛けられているペッパーくんを見た時に“もうムリ!”ってなった(笑)」

砂鉄:「あぁそれは大変なことだ。地獄ですね。そんなショッキングな出来事があって、よく頑張って生活してらっしゃるなというふうに思います。」

きっとこんな感じだったのでしょう…(スタッフ撮影)
息子さん。嫌なのは君だけじゃないぞ!

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. 東京の安宿街にある激狭のホテル(1泊3900円)が快適だった! 自室で漫画読み放題が楽しめるなんて最高ッ!!

    ロケットニュース24
  2. がん・血管病・認知症防ごう 京大名誉教授講演 26日に名張で

    伊賀タウン情報YOU
  3. ベネディクト・カンバーバッチ主演・製作『エリック』本予告が解禁!

    海外ドラマNAVI
  4. 「コタツ記事の報酬」を現役ライターが暴露 / 具体的月収と「1本いくら」という働き方、“インセンティブ” という名のボーナス

    ロケットニュース24
  5. 声の高さ、話す速さ、滑舌でもう悩まない。ビジネスに効果のある「声の出し方」が身につく方法

    新しい働き方メディア I am
  6. 15年ぶりに新作が出たゲームを発売初日にプレイしてみた / ダイビングゲーム『FOREVER BLUE LUMINOUS』

    ロケットニュース24
  7. そうめん、中華麺、そば、うどんが大集合、駒沢公園で「The 乾麺グランプリ」開催

    タイムアウト東京
  8. 東京、ゴールデンウィークにするべき20のこと

    タイムアウト東京
  9. 【滋賀みやげに】手のひらの上の琵琶湖♪ころんとかわいいフィナンシェ誕生

    PrettyOnline
  10. 初めてミスドのドーナツじゃないメニューを食べた結果 → 異世界を垣間見た

    ロケットニュース24