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増える「連休明け不登校」 親の5人に1人が「不登校離職」の驚きの実態 「3つのポイント」で対応を解説

コクリコ

5、6月は不登校が急増。GW(ゴールデンウィーク)や夏休みが終わると決まって増える「連休明け不登校」。不登校ジャーナリスト・石井しこう氏が当事者・専門家に取材し「効果があった」とされた対応を「3つのポイント」で解説

不登校児童34万人・親の離職は5人に1人「効果的な対応」とは?

【5、6月は不登校が急増するーー。不登校ジャーナリストの石井しこう氏が、数多くの当事者・専門家に取材し「効果があった」とされた具体的な対応を「3つのポイント」で解説します】

増える「連休明け不登校」

GW(ゴールデン・ウィーク)や夏休みなどが終わると、決まって増えるのが不登校──いわゆる「連休明け不登校」です。

楽しかった時間から日常へと切り替わるタイミングで、心身のバランスを崩す子どもは少なくありません。

しかし不登校はけっして子どもだけがぶつかる壁ではありません。子どもを支えようとする保護者もまた、大きな問題に直面し、疲弊してしまうケースが後を絶たないからです。

不登校の子ども34万人 親の離職は5人に1人

「まさかうちの子が……」と不登校に悩む保護者の中には、お子さんに付き添うためにやむなく離職をした方も少なくありません。

いわゆる「不登校離職」です。

その割合はなんと5人に1人(オンラインフリースクール「SOZOWスクール小中等部」調べ)。

現在、不登校のお子さんは34万人もいますから、相当数の親御さんが不登校離職という現実に直面しているのでしょう。

親御さんにとっては、これまであたり前だった仕事や積み上げてきたキャリアを手放し、先の見えない不安のなかで、ただただお子さんのそばにいる日々。

社会との繫がりが薄れていく焦燥感や、経済的な負担は計り知れません。

▲学校にいけなくなると、親は子どものケアと仕事の板挟みになり、離職を選ばざるを得ないケースも。(写真:アフロ)

さらに、追い打ちをかけるように、これまで何気なく楽しんでいた保護者どうしの会話も「うちの子は学校に行けていないのに……」という劣等感から、参加すること自体が苦痛になってしまうこともあるでしょう。

実の親や義理の両親から「大丈夫なの?」と聞かれるだけで、自分の子育てを否定されているように感じてしまうこともあるでしょう。

そのうえ、「お前が甘やかすからでは」などと、心に突き刺す言葉を投げかけるパートナーも残念ながらいます。

誰にも相談できず、一人で抱え込んでしまう親御さんの苦しみは、想像を絶するものがあります。

では、お子さんが連休明けから不登校、あるいは行きしぶりになったら、保護者はどうしたらいいのでしょうか。

これまで400人以上の不登校の当事者、親御さん、専門家の方々にお話を聞いてきたなかで「効果があった」という具体的な対応を、3つ挙げます。

「効果があった」具体的な対応

【1】安心できる居場所を家庭内につくる

お子さんが学校へ行けなくなったら、まずやるべきことは、家のなかを安心できる場所として確保することです。

「どうして行かないんだ」「甘えているんじゃないか」といった言葉は、お子さんを追い詰めます。

また、親御さんとしては原因を取り除いてあげようと「学校へ行きたくない理由はなんなの?」「どうしたら行けるようになる?」と質問することも、同様にお子さんを追い詰めてしまいます。

お子さんは苦しいことがあって学校から離れざるを得なかったのです。その理由も、ほとんどのお子さんは言葉でうまく説明できません。

大人だって、何かから離れるとき、たとえば離婚や退職の理由を言葉にするのは難しいものです。お子さんも同じです。

まずは「ゆっくり休んでも大丈夫」というメッセージを、親御さんが言葉と態度で伝え続けることが大切です。

【2】第三者のサポートを検討する

くり返しになりますが、ほとんどのお子さんは不登校の理由をうまく説明できません。また、生活をともにする親御さんだからこそ、徐々に変化した異変に気がつきにくいこともあります。

お子さんの不登校や行きしぶりは、お子さんからのSOSです。そのSOSを親御さんだけで受け止めようとせず、スクールカウンセラーや地域の相談機関、医療機関など、専門家を交えて、どんなSOSなのかを検討することはとても大切です。

専門機関への相談時間が取りづらい場合は、介護休暇の取得なども検討してみてください。

お勤めの会社の就業規則によりますが、介護休暇は、ご自身の両親だけでなくお子さんの介護にも使用できます。

法令では、対象家族1人につき通算93日まで取得可能で、分割での取得も認められています。

最初は3週間ほど取得し「専門機関からの情報収集期間」に充てるのがいいでしょう。

【3】「学校へ行かせよう」と焦らない

親御さんとしては「早く学校に戻ってほしい」という気持ちはよくわかります。しかし、無理に学校に行かせようとすることは逆効果になるでしょう。

今は心のエネルギーを充電する時期なのです。自分のペースで成長し、大学や大手企業に勤めた方も、職人さんやアスリートになった方も見てきました。

焦らず、お子さんの力を信じて、温かく見守ることが大切です。

親が知るべき「子どもの本音」

以上が、親御さんや周囲の大人が大切にすべき3つの対応です。

一方で、お子さんはどんなふうに思っているのでしょうか。

子どもが悩んでいる「3つのこと」

お子さんが学校へ行かず家にいると「怠けている」「遊んでいる」と感じてしまうかもしれませんが、お子さんは、おもに3つのことで悩んでいるでしょう。

ひとつめは「自分だけ違う」という孤立感。つぎに「親への罪悪感」。最後は「将来への不安」です。

まわりの友だちが学校生活を送っているなかで自分だけが家にいる。

「自分だけが置いていかれている」と孤立感や焦りを感じ、同時に両親への申し訳なさや将来への不安と戦っています。

だからこそ、ムリをせず、いったんは心のエネルギーをためる時期が必要です。

▲「学校に行っていない自分が、卒業できるか心配」や、「いじめもないのになぜか学校へ行けない」「いわゆる『ふつう』になれない自分が悔しい」など、当事者の悩みはさまざま。(画像『学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること』石井しこう/著)

今、何が必要なのか

でも、どうか安心してください。不登校という状況に直面すると、親御さんはつい「この子は大丈夫だろうか?」と、色眼鏡で見てしまいがちです。

しかし、けっして忘れないでほしいのは、わが子はいつまでもわが子であり、不登校になる前もなった後も、その本質は何も変わっていないのです。

不登校という一面だけでお子さんを判断するのではなく、その子の持つ可能性や個性にも温かい目を向けてあげてください。

不登校という色眼鏡を外し、お子さんのありのままを受け止め、今、何が必要なのかを親として理解し努めること。その方針がしっかりと肚(はら)に落ちれば大丈夫です。

不登校や行きしぶりは、子どもが成長するための「ステップにすぎなかった」と思える日が、きっとくるでしょう。

最後になりましたが、もし子どもにどんな声がけをしたほうがいいのか悩んだら、拙著『学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること』(大和書房)を参照ください。

当事者に向けて書いた本ですが、周囲の大人にも参考になるかと思っています。

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●石井 しこう:1982年東京生まれ。不登校ジャーナリスト。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校に。同年、フリースクールへ入会。
19歳からはNPO法人で、不登校の子どもや若者、親など400名以上に取材を行うほか、女優・樹木希林氏や社会学者・小熊英二氏など幅広いジャンルの識者にも不登校をテーマに取材を重ねてきた。
現在はNPOを退社し不登校ジャーナリストとして講演や取材、「不登校生動画甲子園」の開催などイベント運営などでも活動中。【Yahoo!ニュース 個人】月間MVAを2度受賞。著書に『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(ポプラ社)、『フリースクールを考えたら最初に読む本』(主婦の友社)、『学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること』(大和書房)。

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